東京と福島、岩手、3つの地域を愛し、独自の日本精神を融合させた新しい経済で地域を育む、堀越圭介さん
東京と福島と岩手に拠点を持ち、多拠点居住を目指している、堀越さん。優しい笑顔と穏やかな口調からは想像できないほどの、情熱と粘り強さを内に秘めています。幼少期から続けていたボーイスカウト活動で身についた自然との共生力と、仕事やビジネススクールで培った現実力や合理性の両方を併せ持ち、絶妙なバランス感覚を街づくりに活かされている、堀越さんのお話を伺いました。
【堀越圭介さんプルフィール】
出身地 東京都
活動拠点 東京都豊島区、福島県(南相馬)、岩手県(釜石)
経歴
専修大学卒業。文房具の専門商社にて、マーケティング、営業、物流業務に従事。会社を休職して慶応義塾大学大学院経営管理学科研究科にて経営学を学びつつ、東日本大震災の被災地である南相馬の子供支援NPOボランティアとして参加。大学院修了後、会社に復帰し2年間勤務するが、都会と田舎の暮らし両方を得るための多拠点居住を目指し、退職。
現在の活動
豊島区池袋本町の築60年の古民家を再生活用する『マチノオト』プロジェクトへ参加。南相馬市原町区本町商店会のメンバーとともに、まちづくり会社設立に向け活動中。釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクトに参画、その後、釜石大観音仲見世通りの活性化のためのリノベーションまちづくり会社sofo(ソホ)設立。
釜石大観音仲見世通りで人が交わることができる拠点、カフェ開業のためのクラウドファンディングを企画・準備中。
趣味 旅行。訪問国数、30か国以上。
座右の銘 面白きこともなき世を面白く
◆動きながら考える
記者 どのような夢やビジョンをお持ちですか?
堀越圭介さん(以下、堀越) ある程度自分の力で生きていきたいと思っています。自分で、衣服、作業着を作ったり(衣)、野菜や魚を手に入れたり(食)、住む場所も自分で作ったり(住)ということを、“できるだけ”自分でまかないたい!だけど自分一人では難しいから、まず同じように思う仲間が必要で、そのような人たちが集まる場づくりが必要だと感じました。
記者 自給自足のコミュニティのようなイメージですか?
堀越 あくまでも“できるだけ”です。今の資本主義経済を否定している訳でもないです。意味合いとしては、「できるだけ自然の仕組みを使って環境負荷の低い、農村文化のような暮らしをしたい!」ですかね。これがある程度、形になっているのが60歳くらいだといいなという感じです。
2年間、このような活動を行っていて分かってきたのは、やりながら考えているので、将来どんな形になっているか分からないということです。これを続けていれば形はどうであれ、なんとなくそのようなことができているんではないかという感覚です。
記者 東京から福島に移住することは考えなかったのですか?
堀越 福島に移住することも考えたんですけど、僕は巣鴨出身なので、東京が大好きなんですよね。巣鴨や池袋という街にすごく愛着があります。それから、本当は東京者って、人懐っこかったり情に厚かったりするんですね。
一般的に東京って、東京砂漠じゃないですけど、冷たい場所というイメージじゃないですか。そういう東京者の人情みたいな部分って、東京出身の僕みたいな人じゃないと伝えられないんじゃないかなって思うんですよね。東京者だからこそ福島でできていた活動や、気づきなどもあって、長く務めた会社を辞める決断をするまでに、2年間悩みました。でも難しく考えすぎていて、どちらかではなく、選択肢として両方持っていればいいという結論に至りました。
記者 東京と福島の二つの拠点で活動するということは、どちらからしても外になりえるということで、すごく強みだと感じました。
堀越 どういう風な形で実現するかっていうのは、動きながら考えているところはありますね。東京だけだと多分無理だし、それは田舎だけでも無理なんですよね。まだ明確には見えてはいませんが、両方組み合わせて作っています。
◆自分が楽しいと思うことをやる。結果やお金は後からついてくる。
記者 その夢やビジョンに向かって、どんな活動指針を持って取り組んでいますか?
堀越 自分がやりたいことや楽しいと感じること、できること、やらなくてはいけないこと、と自ら思ったことをやっていて、その結果として信頼が生まれ、少しずつ仕事になってきたイメージです。すごく不思議な感覚なんですが、これを縁っていうんですかね?この人となら大丈夫みたいな信頼できる人とやるということも意識していたかもしれません。
記者 きっかけとしてのご縁が信頼につながって、結果として仕事になるって、素敵な流れですね。
堀越 「お金がすべてじゃない、その人たちのためになることをやろう。お金は後からついてくるし、たぶんできるだろうな」と思っていました。その場所とか、そこに住んでいる人たちが好きだからとか、皆のためになりたいからとか、それだったら自分のこの力が使える、という話なのでしょうね。
そういう風にやっていって、ようやく最近、信頼がつながって、仕事がもらえるようになってきました。
◆自然のペースに寄り添うこと
堀越 あともう一つは、都会のペースでやらないっていう事ですね。
東京で仕事をするように、「じゃあ、次は1週間後にやります!」という感じで進めてしまうと、変にプレッシャーを与えてしまうようなんですね。東京で仕事をする場合は、もっとこういうスケジュール感でとか、To Doリストがあってというような仕事の仕方をするのですが、田舎ではそこの効率性は多分必要なくて、逆にそのスピード感でガーってやってしまうと、みんなを置いてきぼりにしてしまうんです。
記者 東京の人と田舎の人って、歩くスピードも違いますよね。
堀越 東京のスピードって、経済とかビジネスに合わせたスピードなんですよね。田舎のペースは自然の摂理と言うのでしょうか。ビジネスのスピードは一定なんですけど、田舎のスピードは一定じゃないですよね。そこに寄り添うというか、それにはすごく気を使っていますね。
◆日本人としてのアイデンティティである八百万の神の精神と、資本主義経済を融合することが新しいスタンダードになる
記者 夢やビジョンを持ったきっかけには、どんな出会いや発見がありましたか?
堀越 東日本大震災の時に、「今の生活というのは、こんなにも脆く崩れるんだな」と感じたのがきっかけになったと思います。
「普通に企業に勤めて、ある程度毎月給料もらって、そういった生活をしていてはダメなんだ!いつ何があるかわからないんだ!」と思い、前からやりたかったビジネススクールに通おうと決めました。
記者 東日本大震災がきっかけで、沢山の気づきがあったんですね。
堀越 震災をきっかけに会社を休職して大学院に行ったことで、体系的にビジネスを学べたし、様々な国へ旅行に行って、世界の国々のいろいろな考え方、文化にも出会うことができました。僕、海外旅行で30カ国ぐらい回っていて、最終的に、「日本はすごく幸せな国なんだ」ということわかりました。「なんで日本はそんなに幸せなんだろう?」と考えてみたら、日本にある精神性に行きつきました。
今、宗教が原因で世界に分断が起きていますよね。日本の考え方があれば、そういった問題がクリアになるじゃないかなと思うんです。日本は豊かな自然があったので、八百万の神、という考え方がありますよね。一方で、経済は人間が作り出した素晴らしい仕組みですが、今の資本主義経済は自然が無限にあることを前提に作られています。
僕は、日本人としてのアイデンティティである八百万の神の精神と、資本主義経済を融合することが新しいスタンダードになると考えています。
豊かな暮らしを成り立たせている先人の智慧を生かすことや、自分自身の力で生きるということを、自分の周りから小さく始めていきたいと思っています。その生き方を実現するために有効なのが、リノベーションまちづくりだと考えています。
◆会社に通う毎日で感じていた違和感
記者 夢やビジョンのきっかけとなる出会いや発見の背景には、どんなものがありますか?
堀越 ボーイスカウトでの経験や体験が原点になっています。
ボーイスカウトって、キャンプみたいな野外活動を通して青少年教育をするですね。自然の力をうまく利用して、キャンプや遊びなどを経験しながら、生きていくということを肌で感じましたし、人間は自然の一部なんだということを知りました。その感覚からすると、この生き方が普通じゃないというか、自然じゃないということをずっと無意識では感じていたんだと思うんです。
記者 具体的にはどんなふうに感じていたのですか?
堀越 東京で、普通に毎日、満員電車に乗って会社に通うという日常に対する、違和感ですね。資本主義の社会システムの中で仕事をして、消費社会の中で生きるということが、自然なものじゃない、そういうものが根底にあったんだと思います。それが表面化したのが、東日本大震災だったのかなと思います。
記者 確かに、今の資本主義社会というのは、お金を儲けるための商品が次々と開発されて、実は差し迫った必要性もないのに物が次から次へと消費されるといった、スピード社会です。自然の大きな流れを感じ取りながら、融合して生きる感覚が根底にあったからこそ、現代的な生き方への違和感を感じていて、そこから日本の精神性と資本主義社会の融合という発想が生まれたのですね!
堀越さん、今日はお忙しいところ、貴重なお話しを聞かせていただいてありがとうございました。
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堀越さんの活動、連絡については、こちら
↓↓↓
●リノベーションまちづくり会社sofo(ソホ)
https://camp-fire.jp/projects/view/124165
●マチノオト
https://www.facebook.com/machinooto/
●全国のリノべプロジェクトre-re-re-renovation
https://re-re-re-renovation.jp/projects/
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【編集後記】
インタビューを担当しました、山田と小林です。
東京でも田舎でも、その土地や人たちのリズムを尊重しつつ、楽しみながら活動されている堀越さん。軽やかで爽やかな笑顔の背景に、新しい生き方や働きかたを作っていく覚悟のようなものを感じました。
一人一人が主体的になって住んでいる街を作っていく、リノベーションまちづくりという手法についてもイメージが一新し、可能性と希望を感じています。
堀越さんの益々のご活躍を応援しています!
ありがとうございました。
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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
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