私の中銀カプセルタワー滞在記〜NAKAGIN BUSINESS CAPSULE(83)
【入居26日目】
親族の結婚式のため、朝からバタバタ。この夏一番の暑い日という予報どおり、昼前にはすでに痛いほどの太陽だ。なんだか空気が白っぽく見える。式場の中は涼しいものの、中庭セレモニーやら記念写真やらが屋外で、しかも一つ一つの行事の待ち時間が長いという結婚式あるあるのため、留袖と振袖の人たちは比喩でなく滝の汗で気の毒すぎた。結婚式場はあのナゾの屋外セレモニーをやめてほしい。たいていこじゃれたニセ庭園なもんだから靴に芝生とか泥がつくし。
残るカプセルタワー滞在期間は実質あと3日しかないのにダンナと息子はまだ部屋に来たことがなかったので、この結婚式の後に寄っていこうかと(そしてあわよくば私だけそのままカプセルタワーに残ってしまおうかと)思っていたのだが、殺人的気温にすべての活動意欲を奪われ、みんなしてすごすごまっすぐ自宅に帰る。そもそも家族はそんなに積極的に見たいようではなかった。息子なんて新橋地下街の怪獣酒場をエサにして無理矢理呼ぶくらいだったから、「まぁいいかー」とあっさりしたものだ。
明日は自宅を早く出て、ふだんはなかなか行けない遠くのカレー屋さんでランチをして、カプセルタワーに帰ったら退去の準備をしよう。布類をぎゅうぎゅうにつめるべく、持ってる中で一番大きいボストンバッグを引っ張りだした。いよいよだなぁ。なんだか泣きそうだ
*************
夜になると、向かいのビルにカプセルタワーの円窓の灯りが写って「他にも人がいるんだ」と頼もしかった。ここにいると「世界にたった一人取り残された最後の人類」みたいな妄想がはかどります。SF作家ならよかったのに
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?