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行け!稲中卓球部!前野天才論② その62 アッチ

 町田君という新入部員が卓球部に入って来た。そのため、補欠に落とされてしまった前野。竹田以外は町田君の秘密を知らないまま木下の家でみんなが宿泊する羽目に。

 その夜、ふと目覚めた前野は、町田君が風呂に入っている時に目を覚まし、井沢を誘って風呂に入る。そこは町田君の変装を解いた岩下がいるのだった。

 強引なギャグマンガの設定のため、町田が女であることに最後まで気が付かない前野と井沢。あろうことか、岩下の後ろ姿に欲情してしまった井沢は、女ではなく、男が好きなのだと考え始め、それを受け入れられない自分に激しく苦悶し始める。

 二人が言い争っている間に何とか風呂から脱出した岩下は、風呂場から聞こえてくる二人の声を聴きながら、「アホ」と評価するが、ここが前野のすごいところ。

 どこがすごいのかというと、前野は井沢にこういうのである。

 「お前、自分に嘘つくのか?」 

 ここがすごい一言だ。どうしてかというと、これはこういう意味である。

 「自分自身がどのような存在であれ、それが自分自身であることを認め、受け入れるべきではないのか」ということだ。

 あなたがもし仮に、この世界では周囲の人たちや常識から望まれないような特質を持った人間として生まれてきたとしたら、それから目をそむけたくなるのではないだろうか。また、親も、自分の子供はそんな子供ではないと言って、眼をそむけたくなることだってある。

 しかし、前野は自分自身がそのような人間であるのならば、それを自分は受け入れるしかない。と即座に決断したのである。こんなことを瞬時に判断し、しかも受け入れるという度胸はなかなか持てないのではないだろうか。

 自分達は、見たくないものから目を背けてしまう。自分の本当の姿なんて受け入れたくないと思う。だが前野は、それを受け入れたのである。そして、次の話では、自分を町田君ルックにしたうえ、町田君を「超愛してる」という手紙まで書くのである。前野すごい!

 でも現実的にはいてほしくはない気がする。

 

 

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