『落ちたブレーカー』
こんにちは、junitiroじゅんいちろう(@PapalotX)です。
建築士の経験を活かし、Xで物語を投稿しています。
今回は、特に反響の大きかった作品を紹介させていただきます。
この物語は、電気の契約アンペアについて、多くの人が「わかっているようで、実はわかっていない」ことをテーマにしています。入居後、実際にブレーカーが落ちるという体験を通じて、ようやく理解してもらえた事例です。読者からは「そんなことも知らないのか」というコメントが多数寄せられましたが、背景には電気料金の高騰があり、少しでも節約したいという思いが影響しています。結果として、家族構成や設置された電気機器に見合わない低容量の契約を選んでしまったことが原因で起こったトラブルを描いた作品です。
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「リンリンリン」
電話が鳴り、
受話器を取ると、
少し慌てた様子の
女性の声が聞こえた。
「あの、潤一郎さん。
田中です。突然なんですが...」
先週入居したばかりの
田中さんの奥様だった。
背景で子供の声がする。
「家の電気が急に消えてしまって...
ブレーカーが落ちたみたいなんです」
「分かりました。
ブレーカーの場所は覚えていますか?」
私は落ち着いた声で尋ねた。
「はい、でも触るのが怖くて...」
奥様の声に不安が混じる。
私は一瞬考えた。
新築なのに電気が落ちるのは不自然だ。
漏電の可能性もある。
「念のため確認が必要そうですね。
漏電の可能性もありますので、
今から伺います。そのまま
お待ちください」
電話を切り、
すぐに現場へ向かった。
到着すると、
奥様が5歳の息子さんの
手を握って玄関で待っていた。
「お待たせしました。
一緒に確認しましょう」
奥様はほっとした表情を見せた。
「ありがとうございます。
来てくださって安心しました」
==
私は、まずブレーカーを確認した。
漏電ブレーカーが
落ちているわけではなく、
通常のブレーカーが
落ちていることを確認した。
「田中さん、
漏電ではないようです。
少し安心してください」
ちょうどその時、
玄関のドアが開き、
ご主人が帰宅した。
「遅くなってすまない、
何があったんだ?」と、
少し慌てた様子で尋ねる。
奥様が状況を手短に説明すると、
ご主人は安堵の表情を見せた。
その後、奥様から
ブレーカーが落ちた時の
状況を詳しくヒアリングした。
「IHヒーターと
リビングのエアコン、
それに浴室乾燥機を
同時に使っていました」
これを聞いて、
私は原因が電気の同時使用に
あることを確信した。
「田中さん、
同時に多くの電化製品を使うと、
契約している60Aを
超えてしまうことがあります。
それが原因で
ブレーカーが落ちたようです」
この説明に、
ご主人は声を荒げた。
==
「そんな大切なこと、
どうして事前に教えて
くれなかったんですか!
パソコンがシャットダウンして、
データが消えた
かもしれないんです!」
私は落ち着いて説明を続けた。
「田中さん、
事前の打ち合わせで、
60Aの契約は
コストを抑えるために
決めたことを覚えていますか?」
ご主人は困惑し、
記憶にない様子だったが、
隣にいた奥様が口を開いた。
「確かに、
そういう話をしました、
コストを優先して
契約を決めたんです。」
ご主人は少し落ち着きを取り戻し、
私の説明に耳を傾けた。
「では具体的に
どうすればいいんですか?」
私は、使用方法の工夫を提案した。
「例えば、
浴室乾燥機を使うときは
IHヒーターを使わないとか、
エアコンと浴室乾燥機を
同時に使わないようにするだけでも
十分効果は有ります」
==
ご主人はしばらく考え込んだ後、
眉をひそめて言った。
「そんな面倒なことをしなければ
ならないのですか?」
私は穏やかな口調で応じた。
「そうですね、
確かに少し手間がかかります。
でもご安心ください。
実は、電気の契約アンペアは
100Aまで増やせるように
工事をしてあるんです」
ご主人の表情が
少し和らぐのを見て、
私は続けた。
「私も60Aでは厳しいかなと
思っていたので、
入居後でも対応できるように
しておいたんです」
その瞬間、
私の判断が正しかったと確信し、
内心ほっとした。
ご主人は少し
申し訳なさそうに言った。
「そうでしたか...
私がしっかりと
アドバイスを聞いていれば
良かったですね」
そこへ奥様が
居間から顔を出し、
少し嫌味っぽい口調で
夫に向かって言った。
「ほら、だから打ち合わせの時に
潤一郎さんの言う通りに
すれば良かったのよ。
あなたったら、
いつも後になって気づくんだから」
==
ご主人が
居心地悪そうな表情を
浮かべたのを見て、
私はフォローしようと
明るい声で言った。
「いえいえ、
私だったら頑張って
60Aで節約しちゃいますよ。
でも、快適に暮らせるのが
一番ですからね」
その言葉に、
夫婦そろって笑顔になった。
奥様も「そうですね、
快適さが一番大事ですものね」
と応じてくれた。
場の雰囲気が
和んだところで、
私は電気料金プラン
の提案を続けた。
「それと、
電気料金プランの変更も
検討してみては
いかがでしょうか?
より適したプランに
変更することで、
コストを抑えつつ
契約アンペア数を
上げることができる
場合もあるんです。」
田中さんは興味深そうに頷き、
メモを取り始めた。
私はその様子を見て、
励ますように言った。
「ぜひ検討してみてください。
電気代の節約にもなりますし、
何より快適な生活環境を
実現できると思います。
ご不明な点がありましたら、
いつでも相談してください。」
「では、またご連絡させていただきます」
と言って、にこやかに別れの挨拶をした。
玄関を出る時、
田中さん夫妻が揃って
「ありがとうございました」
と言ってくれた。
〜〜〜
最後まで読んでいただき
ありがとうございました。