市場で評価される会社になる為に考慮しておかなきゃいけないこと
以下は個人的な思いを徒然に書いたもので投資判断を促すものではないです。
時価総額300億円未満の創業社長は2通りの考え方を持ってる人が多いなという印象。
1つはある程度の財を成したし、“うぇーい“と楽しんで実質経営は任せてしまっているワンマンCEO。
もう一方は、飽くなき追求心で、経営を改善させ、資本市場で評価されるように努力を続けるCEO。
今回は後者のようなCEO向けに、“市場で評価される会社になるには?“という観点から、これまであまり意識されてこなかった事実を切ってみたいと思う。
市場で評価されている、されていないを論じる際に、頻繁に用いられるのが“株価“であったり、“時価総額“であったりする。ただし、これら2つは業績だけではなく、マクロ、金利、為替、ファクター、セクターなど様々な要因が複雑に絡み合っており、業績が実際に与えたインパクトを正確に推計するの難しいし、思っているよりインパクトがないのも事実。
なので、今回は残念ながら“株価“と“時価総額“を用いて議論するのはやめる。
一方で、Valuationを代替として用いると、同じPER50倍でも成長力が高く評価されている銘柄Aと、利益体質が脆弱過ぎて利益の厚みがないことで結果PER50倍になっている割高銘柄Bが混在するので、なかなか評価が難しい。そもそも、同じ成長力の高さが評価されていても、その成長率の違いで評価が変わる。
そこで、今回はセルサイド及びバイサイドの友人にヒアリングして、市場で評価されている銘柄の最大公約数を拾い上げ、それらが、これから経営効率を上げて資本市場で評価されることを目指す経営者のベンチマーク企業群と考え、それらの企業群にどういう特性があるのかについて、サラッと触れる。紙面の都合上、やや上っ面な分析になってる部分があるので、必要であればいつでも連絡欲しい。
因みに、こちらは短期視点ではなく中長期的な視点に立って書いている。
1)市場で評価されている会社
さて、先ずは、市場で評価されている会社を確定してみたい。知り合いのセルサイドアナリスト10名(内需系)、バイサイド(HF及びLO)80名近くで、市場で十分に評価されている代表的な会社を上げてもらった。
様々な会社があがったのだが、多くの投資家が挙げたのが以下の6社。
①OBIC
②MonotaRO
③M3
④SHIFT
⑤テクノプロ
⑥GMOPG
他にも色々と挙がったのだが、圧倒的にダブったのが上記会社群。
因みに、上記6社にこだわらず、市場で評価される会社として選んだ共通項をヒアリングしていくと、i) 業績が安定している、ii) IRのコミュニケーションの高さというのが大きかった。
業績が安定しているというのは業績予想が付きやすいと共にサプライズが殆どないということだろう。IRのコミュニケーションは言わずもがな。情報発信の質と量だけではなく、逆風下でもしっかりと資本市場と対話し、経営の意図や数字の差分をしっかり伝達するということだろう。
2)業績の安定度
上記、業績の安定度をベンチマーク企業群で調べてみよう。
先ず最初に、期初の業績計画に対する達成度を過去10年で調べてみた。(10年以内に上場した銘柄は上場来)10年という期間では業績サイクルを鑑みれば逆風の時もあったであろうが、結果は、6社平均で、売上高に対しては71.4%、営業利益については82.3%と非常に高い達成率であった。
少なくとも業績未達って事態はなるべく避けるというのは、当然のこととして理解はできる。
次に、期初計画と着地のブレについて調べてみるとびっくりする事実があった。なんと、売上高のブレの平均値は4.2%、営業利益のブレについても平均値は6.9%しかなかった。これは非常に面白い事実で、実は上方修正などは短期的な材料になっても、それを頻発することがベンチマーク企業を目指す上で必ずしも必要でないということになる。何しろ、修正ルールに従って営業利益が変化するなら、それこそ10年間の営業利益の期初と着地のブレが6.9%に収まらない!
これらを考えると、業績の安定度というのは、実は予実管理の精度を上げるとことと理解できる。そして、期中の上方修正などは本質的に重要ではないことが分かる。
もちろん、これにはしっかりトラックレコードを作ってからの評価ということになるのではあるが、つまらない銘柄と言われようが地道に予実管理の精度を上げるというのが経営として習熟すべきことであるのが理解できるであろう。
3)売上高成長率
もちろん、成長性が伴わずに業績の安定度だけを目指しても退屈な銘柄になってしまうリスクしかない。ここで求められるのが毎年の売上高成長率20%を維持して、成長銘柄としての評価を落とさないということが必要だ。もちろん、上記の銘柄にはテクノプロやOBICのように既に歴史のある会社の成長率は低いものの、一般的に成長株という評価を保ち、Valuationを下げない為には、やはり売上高成長率20%というのは常にクリアして行きたい水準ではある。
4)数字のコミットメント
一方で、上記6つの会社で売上高、営業利益共に中期的な目標を開示しているのはテクノプロのみという事実がある(中計において売上高成長率9.2%、営業利益成長率10.5%を目指す)。GMOPGについては営業利益のみだし、SHIFTについては売上高のみ。M3、MonotaRO、OBICについては中計さえない。
このことからも、業績安定度が高く、ブレの低い会社の業績visibilityは高いことから、トラックレコードさえしっかりあれば、中期計画や長期計画で下手に数字を資本市場に約束して自分たちの経営の自由度を下げるようなことをする必要もなくなることが分かる。
5)IRのサポート
評価される会社の条件としてIRの存在を挙げる投資家は多かったものの、上記6つの会社のIRとなると、多分に定性的な評価ではあるがテクノプロとSHIFT以外は、それほど評価の高いIR体制を敷いている訳でない実態も浮かび上がる。
こちらも、上記の1)から4)で数字による信頼感が高いと、そもそもIRによるサポートもそれほど必要とされてないという理解で良いと思う。
このように、売上高成長率20%、業績の安定度が高いというのは、極端な表現をすると業績のシャープレシオが高いということだ。その為には、経営内部の予実管理が重要で、ここの精度を経営として如何に上げていけるかというのが資本市場で評価される銘柄とそうならない銘柄との分岐点の1つとも考えられる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?