市場の流動性

最近、事業会社のIRと話していると“流動性がないから株価が上がらないと“証券会社に言われると耳にする機会が多い。

気になってチェックすると時価総額350億円、過去30日の1日当たりの平均売買高150百万円。

別に、何ら問題ないような気がするので、”証券会社の担当者はいくらくらいだと良いと言ってるんですか?”と聞くと、少なくとも300-500百万円程度と。理由を尋ねると、特になく肌感だと。

ここに証券会社というか、金融界の適当さが透けて見える。情報の非対称性を利用した、何となく出来る感の醸成。

一言で表現すると稚拙すぎ。

先ず、最初に流動性を語る際に、大きく1)時価総額、2)1日当たりの出来高の観点から語ると理解しやすい。

一般的なLOで大型株であれば時価総額500億円以上とか、時価総額1000億円以上の縛りがあったりする。これが中小型株のLOだと、ソフトリミットはあるが、かなり軌道的に投資できる筈だ。少なくとも、自分がGSAMにいた頃はそうだった。
けど、この縛りのおかしなところは、市場全体が好調だと対象銘柄(ユニバース)が大きくなるし、市場全体の低迷が長引くと対象銘柄が少なくなる。市場の動向によって、投資対象の銘柄数が結構変わるという何とも節操のない設定方法ではある。

因みに、ヘッジファンドではPMによって異なるが、僕はどこでも大体時価総額300億円以上は投資できたし、時価総額300億円未満でも一定の範囲内までは出来高次第で買うことが可能であった。

次に、その出来高だが、これもファンドやPMによって異なるが、大半のLOや殆どのHFは1日の出来高の何日分まで買って良いと言うリールが設定されている。
仮に、1日の出来高の3日分を持っていると、実際にそれを売却しようとすると、合理的に急いで売却するとして1日の出来高のMax1/3の関与率で売買すると、3日分のポジションを解消するのに9日を要するということになる。

さて、他にもまだまだ伝えないといけないことは多いのだが、今日の本題に行く為の基礎情報としては、これくらいで十分か。

ここで、株価を上げる為に出来高を多くする必要があるかどうかを考える。

これに当たっては、先ずは今の出来高でどういう人に買ってもらえるのかを計算するとイメージが付きやすい。

例えば、出来高の1/3関与率で、1銘柄当たりのポジションを出来高の5日まで持つことを許容されているHFのPMがいるとする。

冒頭の前提で言うと、この会社の出来高は150百万円。ここから、関与率1/3、5日分のポジションまで買いを行うと、このPMのサイズは250百万円となる。あとは、この250百万円が、このPMのポートフォリオで、どの程度のウエイトになるかというのが重要だ。

例えば、グロスで(ロングとショート合計)500億円を運用しているPMがいたとすると、この250百万円のウエイトはロング全体の1%となる。

通常のリスクリターンプロファイルであれば1%と言うのは普通に採用されるので、別にこれ以上、流動性を上げなくとも、このPMは十分にこの銘柄を買い売るのだ。

詳しいことは、第2弾に書くが、結局、大切なのは流動性を上げることではなく、投資家のサイズ、分散度(銘柄数)、投資期間などから、自分たちがターゲットとして適切な投資家にしっかりアプローチすることが大切なのだ。

なので、IRの人は投資家と面談したら、必ず上記の条件を確認すべきで、逆に、そこが分かると投資家が単に競合比較や川上川下分析来ているだけとか、セールスにお願いされて無理やりアポ取ってくれたのかなども直ぐに見分けることが可能になる。

お互いにとって無意味なことは避けた方が良いし。

反響あれば第2弾書きます。

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