しゃべるピアノ

「このコーナーでは、ゲストの歴史を紐解いていきたいと思います」

「よろしくお願いします」

ピアニストとグランドピアノが同時に言った。

「まず、出会いはどこなんですか?」

「養成所です」とピアニストが関西弁のイントネーションで答える。「相方はそこで見つけよう思てました」

「僕は高校のときのピアニストと入ったのですが、すぐに解散してしまって。ちょうどその時期に彼の演奏を見て衝撃を受けました。こいつなら僕の鍵盤を任せられるって」

「あなたはどうだったんですか?」

司会者はピアニストに聞いた。

「正直、第一印象はあんまりでした。俺は関西の人間なんですけど、こいつは東京出身なんです。確かに良い音でしたけど、関東の音色は肌に合いませんでしたね。結果的に組んだのは正解でしたけど」

グランドピアノの真っ白な鍵盤がほんのりと赤く染まった。

「今後の目標は?」

「もちろん賞レース優勝です」

そして彼らは世界最大級のピアノコンクールの名前を口にした。

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