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Lenticchie Zine 第4号 『GOOD MOURNING, JAPAN』を刊行しました
5月1日、Lenticchie Press(レンティッキエ・プレス)によるzineシリーズの第4号『GOOD MOURNING, JAPAN』を刊行しました。
ぼくがこのzineシリーズを始めたのは、2020年の1月からでした。
折しも自然災害やテロリズム、グローバリズムとSNSの発達が象徴する2010年代が終わり、新たな時代の幕開けに人びとが集い、祝うとき。
ぼくはその歓喜のなかになぜか儚いものを感じたので、この祝祭的気分が2030年まで続くようにという願いと、少なくとも2030年までは時代の記録を続けようという覚悟から、最初のzine『THE SURVIVOR'S GUIDE TO 2030』を作りました。
それがまさか、世界中の人びとが本当に「生き残る」ことを突きつけられる20年代になるなんて。
もちろんそれはただの偶然なのでしょうが、創刊号として「サバイバルガイド」なるものを提示してしまった自分としては、それがまったく何の役にも立たないような悲劇的な状況に、zine制作の意味を自身に問いかける日々でした。
そして2020年3月30日。
その日は定期的に通っている病院に診察を受けに行く日で、朝から出かけるための準備をしていました。
テレビを見ていた妻から聞かされたのは、昭和を代表する、そして何よりもぼくが敬愛するコメディアンの死でした。
この日を境に、世間の空気は一変します。
ぼくはこの日、やりきれない思いを抱えたまま、それでもカメラをたずさえて病院へと向かいました。
病院の入り口には「発熱外来」と書かれた紙が貼られ、熱があるひとは別途設営されたテントのほうに向かうよう促され、自動ドアをくぐったその先でサーモグラフィーによる来院者の体温測定がおこなわれています。
診察を受けるためには、熱などの自覚症状がないことを申告する書類を書いて、主治医に提出しなければなりません。
すべて納得の措置です。あんな悲しいことがあった後では。
でも、どうしてこんなふうになってしまったんだろう?
もしかしていまよりもずっと昔のどこかに分岐点があって、ぼくたちは決定的に道をまちがえたのかもしれません。
ぼくが通っている病院は、新宿区河田町にあります。
河田町といえば、かつてそこにはフジテレビ本社がありました。
いまその場所は高級賃貸マンションになっています。
駅から病院までの道には桜並木が続いていて、毎年この時期になるとちょっとした名所になるのですが、この大規模開発地のところどころにも桜の木が植っていました。
昔からあるものなのか、新たに植栽したものなのかは分かりませんが、2020年のこの春にも、桜はその花を咲かせていました。
もしかするとちょっと馬鹿なお殿様が、かつて愛でたことのある桜かも。
診察が終わって薬局で調剤を待っているとき、窓越しにぼんやりと外の道路をながめていると、いつもより多い数の救急車が走り去っていきます。
散発的ではあるのですが、明らかに普段より多く見かける救急車の台数。
あとで気づいたのですが、駅の北側にぼくが通っているのとは別の病院があって、そこは感染症の専門機関として都内の多くの患者さんを受け入れていたのです。
日々病院に入っていく身体と、病院から出ていく身体。
その両方に等しいだけの数の魂があり続けることを祈ってやみません。
いつもの薬を受け取って外に出ると、近くの街路樹に一羽のカラスが留まっていました。
カラスはいったいなぜ泣くのだろう?
* * *
書誌情報
書名:GOOD MOURNING, JAPAN
著者:早川純一
発行所:Lenticchie Press
発行年月日:2020年5月1日
サイズ:297mm×200mm
ページ数:6ページ
写真数:6点
印刷方法:インクジェット印刷
使用用紙:更紙
販売価格:600円(消費税・送料込)
購入方法
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