個人誌シナリオ 怪獣の女の子vs機動要塞
前説
4 つの共和制、2 つの王政、1 つの帝政をへた混迷の 100 年からさらに 50 年たち、
「国父」の中興をへて首都は繁栄を迎えていた。しかし、突如として現れた「怪獣」が一夜にしてすべてを破壊してしまった。
大統領をはじめとして多くの閣僚・議員が被災したため、なし崩しで「国父」の孫「悪ダイエル」が首班で暫定政権が発足した。
超法規的措置が乱発された。暫定政権の極めて強引な政策は反発を招き、ついには
首都と地方とで内戦に発展してしまった。内戦に勝利するため、首都は機動要塞に変
貌した。首都はあまねく国土をゴロゴロと転がりながら蹂躙し尽くした。 (機動要塞に
なった首都は、いろんな建造物が表面に吸着したデススターみたいなもの)
「怪獣」の出現から 10 年後に、内戦は終結した。国の荒廃は著しかった。中央政府
は残党狩りと称して、地方を転々としながら資源を収奪した。
そんな中、一つ目のサイボーグがキッチンカーを駆り、困窮した人々に栄養ある食事を配り歩いていた。 (一つ目サイボーグ:以降単に「店長」 )
けだちゃんと店長の出会い
ロバほどの奇妙な猛獣(以降:「「けだちゃん」)が大きな獲物を仕留めるが、転んで落としてしまう。
獲物は夜道を転がっていき、キッチンカーの前に横転した。
これ幸いと「店長」は獲物の死骸を持ち去る。
「けだちゃん」は人間に変身できる超常的なクリーチャーだった。熊のように獲物への執着が強い彼女は人間に変身して町に紛れ込み、横取りした「店長」を追う。
「人間め…許さんぞ」と意気軒昂に 4 つ足で走るが、いざ店長のキッチンカーまでたどり着くと、獲物を解体したできたシチューの匂いと楽しげな雰囲気にほだされて素直に並んでシチューを受け取ってしまう。
超高速で墜ちる「けだちゃん」 。人外の女の子が優しくされて堕ちる展開(ご飯食べ
てお風呂に入れてもらっておくるみに包まれて爆睡)がコミカルかつハイテンポに展開される。
爆睡する「けだちゃん」を前に肉切り包丁で始末しようとするが断念する「店長」 。
彼は真意のわからない表情をしていた。
「けだちゃん」はすぐに「店長」の店のマスコットになった。しかも、猛獣の姿でな
じんでいる。
彼女がよく肥えたため、往来の邪魔になった。 「店長」はダイエットもかねて店を手
伝うよう命じる。 「けだちゃん」は存外素直に命令に応じて皿洗いなどをし始める。
ドローン(もしくは SNS?)でけだちゃんの姿を見た「悪ダイエル」 (この時点では
シルエット)が動き出した。彼は先遣隊を下知しつつ、機動都市を駆り「けだちゃ
ん」たちのいる町へと進軍する。
「けだちゃん」が素直に命令に応じたのはいたずらの仕込みだった。 「店長」が折檻
して車でひいても彼女は平気の平左だったが、追い出すといわれると即座に反省し
た。 (ここが一番難しい描写かもコミカルかつハイテンポで流す)
風呂に入るとき「店長」が一つ目の仮面を外しているのに気づいた「けだちゃん」 。
彼は正体を知られたくないようだ。
車で引いた仕返しに、昼日中に「けだちゃん」は店長の仮面を外す 。
町の人たちは少し驚いただけだった。どうも彼らはなんとなく「店長」の正体に既
に気づいていたようだ。町人たちは見なかったふりをしてそそくさとみな立ち去る。
長老が「店長」に顔を背けながら町を去るように命じる。長老も長老で断腸の思い
のようだ。
憔悴しながらも町の人たちに迷惑をかけぬよう手早く身支度を始める「店長」 。責任
を感じた「けだちゃん」は毒(ウィスキー)を飲んでしまう。(店長はお酒を毒という
ていにして、彼女が飲まないようにしていたのですね)
急性中毒にもならずに、 「けだちゃん」はいつものように爆睡した。
店長の死と彼の記憶のから明かされるけだちゃんの正体
突然の銃声に起きるけだちゃん。寝ぼけた耳に悪漢たちの話声が聞こえてくる
「もう死んでいるから弾がもったいない笑」
「馬鹿、予算は少し多く使う方がいいんだ」
まだ夢見ごこちの内に彼女は彼らに撃たれてしまう。
瀕死の二人をのこして悪漢たちは去っていった。彼らは「悪ダイエル」の派遣した
先遣した「親衛隊」だった。
「店長」はけだちゃんなら特異の体質で生き残れるかもしれないと話す 。生き残る
には、「自分も含めた」店のものをすべて食べる必要があると話して、彼は死ぬ。
やけっぱちで自分を励ますように悪態をつきながらも泣きながら店長を食べるけだ
ちゃん
けだちゃんの中に店長の記憶が入り込んできた。
「店長」の正体は怪獣が出現する前の大統領だった。野党候補の票割れを目的とし
て「悪ダイエル」の差し金で出馬させられた泡沫候補だったが、まぐれ当選してしま
った。 「店長」自身は「悪ダイエル」の陰謀を知らず素朴に政治の刷新を志した。
悪ダイエルは渋々ながらも、研究所に彼を連れて行き、 「国父」から歴代首脳への最
重要引き継ぎ事項を話す 。
「国父」は古代遺跡から発掘された化石をもとに、神話の動物…「怪獣」を造り、
滅びた王室の代わりにして民衆のコントロールを企んでいた。彼なりに自分の死後に
来るカリスマ不在の時代を憂いた計画だったようだが、愚かな後継者たちにより単に
「怪獣」を傀儡の女王にするトンデモ計画になってしまった。
人工の「怪獣」は神話のように優れた知性と変身能力と雄大な体躯をもっていた
が、ある段階から成長を止めた。どうも忌まわしい宿命すらも神話そのまま再現して
しまったようだ。必ず最愛のヒトを殺し食べなければ成熟しないのだ。
研究者たちは一計を案じて、未成熟な「怪獣」に、彼女自身のクローンを造り養わ
せ与えた。そのクローンが、後の「けだちゃん」だった。
「怪獣」のかいがいしい世話ぶりから、 「けだちゃん」が最愛のヒトだろうと考えた
悪ダイエルは吉日を選んでけだちゃんの丸焼きを「怪獣」に食べさせる計画書へのサ
インを「店長」に求めた。
「店長」はあまりに非民主主義的かつ非人道な計画に、即時中止とか書き込んだ。
しかし、すぐに「悪ダイエル」に拘束され、病室に監禁されてしまった。
「店長」は研究所の協力者たちの手を借り病室を脱出した。そして、研究所にもぐ
りこみ人間形態の「怪獣」たちを解放した。
「怪獣」は「店長」にお姫様抱っこされて、爆睡中の「けだちゃん」は荷台を乗せら
れて出口を目指した。
混乱の中、なんと「怪獣」が、 「けだちゃん」と店長の協力者たちを隔壁の中に閉じ
込めて、強引に「店長」と二人きりになってしまった。
恋に落ちた「怪獣」は最愛のヒトに熱い接吻を…ではなくグサリと歯を立てた。
それに合わせたかのように、突如として起きたけだちゃんが「怪獣」が「店長」を全
身食べるのを妨害した。
人間にはわからぬ吠え声で話す二人、一瞬我に返った「怪獣」だったが、厄日のせ
いかそれとも人間への恨みのためか、魔神へと変身してしまう。
魔神の大暴れで首都は壊滅し、けだちゃんは消息を絶った。かじられた「店長」は
重傷からサイボーグになり、地道な復興活動に没頭した。
決戦!機動要塞
「悪ダイエル」は、親衛隊が前大統領を殺したと得意げにするのをいらだちながら聞いていた。前の大統領の死体を持ち帰らないし、そもそも肝心の「けだちゃん」の行方はわからずじまいだ。
「悪ダイエル」は怪獣の圧倒的な力に未練があったし、医薬品にも使えるのではないかと皮算用していた。
親衛隊が町中の人たちを引きずり出し、整列させた。
親衛隊はけだちゃんを引き渡さねば町ごと砲撃すると脅す 。町人たちは狼狽する者
の、知らないものは知らない。
タイムリミットが迫る中、町人の群れが割れて子供っぽいシーツだけ着た長身長髪
の女が一人現れる。
親衛隊が下品に口笛を吹く中、躊躇鳴く彼女を撃つ「悪ダイエル」
弾をよけながら女は怪獣に変身した。そう彼女は大人になった「けだちゃん」だっ
た。
「けだちゃん」は丸い機動要塞の表面を縦横無尽に駆け巡り、トーチカを破壊し、
歩兵を蹂躙する。
悪ダイエルは機動要塞をロボット(マクロスみたいなやつ)に変形させてけだちゃん
を振り落とす 。
(変形するとダイエル以外の中の人たちが死ぬ)
「悪ダイエル」は、墜ちて傷を負った「けだちゃん」に巨大な砲をむけて撃つ。
砲撃ですべては消え去り荒野は瞬時に砂漠になった。しかしながら、ロボットの首筋?に「けだちゃん」が現れる。どうも怪獣→人間→怪獣の順に変身して、砲撃をよけてロボを背面からよじ登ったようだ。
きつねが雪の中のネズミを飛んで捕まえる要領で、 「けだちゃん」はパイルダーみたいなコクピットにいる「悪ダイエル」を始末する。
機動都市を町の人たちと解体しながら店長の店を再建する大人「けだちゃん」の後
ろ姿で終わり。