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Roomies @BLUE NOTE PLACE(20250204)

 『ECHO』がもたらす反響と、不変の飾らないアティテュード。

 初のフィジカル・リリースとなったアルバム『ECHO』を記念して行なわれたタワーレコード渋谷店でのインストア・ミニライヴ(記事→「Roomies @タワーレコード渋谷〈In-store Event〉(20250119)」)から約2週間ほど。日曜の昼時ながら終演後に行なわれたサイン会には、長いリスナーの列をなす盛況を収めたが、勢いそのままに、Roomiesの楽曲に触れようと多くのRoomiesラヴァーが夜の恵比寿に集った。

 Roomiesのホームの一つと言ってもいい、恵比寿ブルーノート・プレイスでの恒例のライヴは、昨年12月以来(記事→「Roomies @BLUE NOTE PLACE(20241216)」)となる。同所でRoomiesを観るのは、2022年12月(記事→「Roomies @BLUE NOTE PLACE」)に初めて観てから5度目となるが、おそらく今回が最も盛況となったのではないか。1階はほぼ座席が埋まり、2階からステージを覗く人もちらほら見受けられた。タワーレコードのレコメンド企画「タワレコメン」のプッシュアイテムとなり、J-WAVEのチャート「TOKIO HOT 100」(2月2日付け)では「Like This Before」がロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」、羊文学「」、米津玄師「PLAZMA」というヒットメイカーに次ぐ4位(ちなみに、推しのFurui Riho「TOMORROW」は6位)と、ようやく広くその存在が“見つかった”感じか。このまま一気に飛躍する未来も現実となりつつある。

 曲構成は、やはり『ECHO』直後ということもあって、前回のブルーノート・プレイス公演やインストア・ミニライヴなどと表立って変わることはないが、及川創介のプログラミングや斎藤渉が指を滑らせる鍵盤、高橋柚一郎が爪弾くギターリフが、ステージの度に異なるアプローチを施すこともあって、その瞬間でしか生まれない彩色をもたらしてくれる。そこへ寄り添うようにケヴィンがスウィートな声色で、時に鮮やかに、濃密に、はたまたナイーヴにと、カレイドスコープのようにさまざまな美しい彩りをもたらしていく。

 なかなか本編に入らず、セッション的な長めのイントロダクションを繰り出す斎藤の鍵盤からしてもう、胸躍らせる気持ちを焦らされるようで、気づくとその音やグルーヴに引き寄せられている。そして、アルバム・タイトル曲「ECHO」へと滑り込み、“Roomiesワールドへようこそ”といわんばかりに、その扉が開かれていく。

 『ECHO』収録曲は、当初のRoomiesのネオソウルマナーよりも若干ソウル・ポップのテイストに重心を寄せたような感じもするが、それがかえってケヴィンの外連味の無いスウィートなヴォーカルを引き立てることに奏功しているともいえそう。どことなく麗しいAOR/フュージョン感を帯びた「Stay As You Are」や、文字通り甘く囁くような「甘い夢」などもそうだが、アンコールで披露した初期のバラード「I'll be there」は、ジャクソン・ファイヴ時代のマイケル・ジャクソンと結びつけたくなるようなピュアネスとソウルなヴァイブスが織り込まれていて、心を洗ってくれるようにすら感じてしまう。

 4名編成では及川のシンセ・アレンジが肝になるのだが、そのあたりはCICADA時代から高位置で安定的なセンスを発揮していて、心地よきムードを巧みに生み出していく。それに加えて、ケヴィンのリード・ヴォーカルにささやかながら重なるコーラスが趣深くて良い。バンドセットではコーラス隊が加わることもあるが、コアメンバーの4名編成でヴォーカルに深みを増すためには、こういった僅かなアクセントが楽曲の奥行きをググっと広くする。そのあたりの細やかな着想が、揺るがないセンスの賜物といえるだろう。

 そして、観る度に感じるのは、アーティスト名よろしく、部屋にいる仲間たちをそのまま具現化した、どこまでも楽しみながらプレイしているところか。もちろん本番になれば、少なからず緊張や神経質になることはあるかもしれないが、観客が前にいるか、自身たちのルームにいるかの違いはあれど、常に自然体で気楽に歌唱・演奏することは不変……という意識が、メンバーのおいて共有されているのだと思う。

 そのエンジョイ精神がより現れたのが、2ndセットの「Family」から「甘い夢」への流れか。“everything is gonna be alright”のフレーズからケヴィンがフェイクで余韻をもたらそうとするやいなや、シームレスに「甘い夢」のシンセ・フレーズへと雪崩れ込む展開は、派手なキメなどを用いた訳ではないが、美しいグルーヴを受け継いでいて、身体が前に出た瞬間でもあった。蕩けるようなスウィートネスで包みながら、奥底深くディープ&ドープに落ちていくのではなく、滑らかなチョコレートのごとく、エレガントな舌あたりをもたらすよう、とでも喩えられるか。その後ろで斎藤が鳴らす、都会的な洗練を感じる鍵盤も清爽に響いた。

 そうかと思えば、続く「きみとふたり」では、都会から哀愁へ。高橋が爪弾くギターの音色がサウダージを呼び寄せ、何ともいえないセンチメンタルやメランコリ-を胸に宿らせるから、琴線に触れやすい人はなかなかに“厄介”かもしれない(笑)。
 2ndセットのラストは、本編ラストの定番となりつつある好曲「Like This Before」。斎藤からデモを渡された段階でケヴィンが好感を抱いた楽曲というのも伝わる、アイコンタクトを合わせながらの楽しげな演奏に、クラップをしながら微笑みを絶やさないオーディエンスが溢れる光景が広がっていた。高橋の雲一つない青空を描くようなギターも、この曲を爽快にドライヴさせる一助となっていた。

 次回のブルーノート・プレイス公演は、早くも3月24日に決定。そこではサポートを加えたバンドセットになるとのことだ。おそらくバンドセットでは、さまざまなアレンジ・セッションも飛び交う、生バンドならではの躍動が見られるだろうから、音源だけでは知り得ないRoomiesを体感出来る好機会となるのは間違いないだろう。

 なお、この日にミュージック・セレクターを務めたのは、ソロやGAGLEの一員としても知られるDJ Mitsu the Beatsと、青森県八戸市出身のフィメールDJのWhelmiy'nd(ウェルミー)が担当。1stから2ndへのインターミッションでは、H.E.R.「フォーカス」やレデシー(レディシ)「オーライト」、クレオ・ソル「ホエン・アイム・イン・ユア・アームス」、RC&ザ・グリッツ・フィーチャリング・エリカ・バドゥ「リーヴ・ミー・アローン」、ドゥウェレ「オープン・ユア・アイズ」、シャーデー「キス・オブ・ライフ」、ムーンチャイルドやキャットパックのヴォーカルを務めるアンバー・ナヴラン「ヒーズ・ビーン・ゴーン」、スノー・アレグラ「アイ・ウォント・ユー・アラウンド」あたりが選曲されていて、個人的な“ツボ”をたっぷりと押さえてもらえたのは良かった。

◇◇◇
<SET LIST>
《1st Set》
00 INTRODUCTION
01 ECHO  (*E)
02 Stay As You Are  (*E)
03 Do You Feel
04 Hypnotized  (*E)
05 This Love  (*E)

《2nd Set》
06 Close To Being In Love  (*E)
07 Family
08 甘い夢  (*E)
09 きみとふたり  (*E)
10 Like This Before  (*E)
《ENCORE》
11 I'll be there

(*E): song from album "ECHO"

<MEMBERS>
Kevin / ケヴィン(vo)
Yuichiro Takahashi / 高橋柚一郎(g)
Wataru Saito / 斎藤渉(key)
Sosuke Oikawa / 及川創介(syn)

◇◇◇

■ Roomies 『ECHO』 PCD-25452(2025/01/08)
 CityHeim / P-VINE

01 When We’ll Be Together
02 Like This Before
03 Hypnotized
04 甘い夢 – Retake
05 This Love
06 きみとふたり – Retake
07 Close To Being In Love
08 Stay As You Are
09 ECHO

◇◇◇
【Roomiesのライヴについての記事】
2022/12/13 Roomies @BLUE NOTE PLACE
2023/03/04 Roomies @WWW(20230304)
2023/04/11 Roomies @BLUE NOTE PLACE(20230411)
2024/02/28 Roomies @BLUE NOTE PLACE(20240228)
2024/12/16 Roomies @BLUE NOTE PLACE(20241216)
2025/01/19 Roomies @タワーレコード渋谷〈In-store Event〉(20250119)
2025/02/04 Roomies @BLUE NOTE PLACE(20250204)(本記事)


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