WAY WAVE @LIVE STUDIO LODGE〈HANG OUT!!〉(20241011)
ポジティヴなヴァイブスが導いた、破顔に溢れた饗宴。
女性が多ければすべて良い、という訳ではないけれど、特に女性アイドル出自のグループやユニットにとっては、同性からの評判を獲得するということは人気のバロメーターを上昇させる要因の一つ。その意味でもガールズ&レディーズがフロアを多く占めるステージというのは、楽曲の良さや自身のポテンシャルを示す良い機会になったのではないか。たとえ、それぞれの“推し”の出番が来るまで前方で虚無な顔をしていたとしても、「WAVY GIRL」よろしく“きっかけなんてどうだっていい”、のだ。
代々木にあるライヴスタジオ、LIVE STUDIO LODGEでの恒例企画イヴェント〈HANG OUT!!〉にラップオバケ、財部りょうじ、WAY WAVEの3組が集い、フライデーナイトを賑やかに彩った。“HANGOUT”が意味する“ぶらぶら一緒に過ごす”“遊ぶ”のごとく、気を張ることなく音に乗り、盛り上がりや笑いに溢れるステージとなった。WAY WAVEは絶対忘れるなとの2マン・イヴェント〈Beat Happening!終わらない夏の2MANライブ!〉(記事→「絶対忘れるな / WAY WAVE @HOME(20240825)」以来、残り2組は初めての観賞となる。
トップバッターはWAY WAVE。バックDJにはおなじみのarincoを配して、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック(ジョン・ルウォンゴ・ダンス・リミックス)」使いの出囃子から元気よく登場。杏奈の「いつもと異なり、女性が多い現場で嬉しい」という言葉とともに、arincoが奏でるファンキー&ディスコテックな音に乗り、2人のシャウトが唸る「Looking For Woman」からリアルソウルシスターズワールドをフロアに解き放っていく。
恒例のソウルカヴァーパートでは、ザ・エモーションズの「ベスト・オブ・マイ・ラヴ」(ダンス☆マン的に言うと「バスタオル舞うお風呂」)をセレクト。“ウォウ、ウォウ”からのキュートなフックは、緊張をほぐし、場を和ませるのに最適。arincoとともに可愛らしいフリもつけて、チアフルなモードでフロアを温めていく。そこからシームレスに「September Wind」へと繋ぐ。イントロにエグゾーストノートがアレンジされている同曲は、フェイドインしやすく、メドレー的に繋ぐ楽曲として重宝しそう。推進力が高いトラックということもあって、アクセルを踏み込むがごとく、テンションやヴォルテージをグイッと上昇させるのにもうってつけだ。
アッパー・ファンクな「流されていこう」は、もう完全に自分の手にした感じもあって、“悪くないだろう”どころか最新アルバム『JOURNEY』収録曲のなかでもベスト・アクトの一つに近いパフォーマンスを安定して披露しているのではないか。自然とフックラストの“ここじゃないどこかへ”のフレーズでホットなフェイクをかましたくなるのも分かる気がする。
このままトップギアへ、とはいかず、一旦クライマックスへ向けてギアを落として焦らすのもファンクの流儀といえばいいか。「女子は共感できる歌詞だと思う」とレディース多めのフロアへ向けて放った、垢抜けない野暮ったさも纏った「断捨離FUNK」から、一転しっとりとセンチメンタルなムードへ落とし込んだ切ないソウル「友達終了のお知らせ」で“聴かせる”ポイントを配置。ダンサブルな曲だけ、明るく元気なだけじゃない! というところもしっかりとアピールしていく。
クライマックスは、60~70年代のソウル/ヴォーカル・グループの意匠を継承したような拳を掲げる“フィストアップ”ソング「WAVY GIRL」から、リズム&ブルース的なアプローチで綴った「ソウルシュガー」でファンキーに沸点へ到達。「ナナナーナナーナ~」のシンガロングも決まって、ソウルシスターズの面目躍如を果たしたといったところ。トップバッターとしてしっかりとフロアに熱をもたらし、後続へ加速度をつけたのではないだろうか。
2番手は財部りょうじ(財部亮治)。福岡県出身のシンガー・ソングライターで、YouTuberとしても活動している。YouTube登録者は43万超、インスタグラムはフォロワー16万超、TikTokはフォロワー35万超のインフルエンサーだ。普段はアニメキャラなどに変装してアニソンを歌う動画などをアップしていて、まだ“YouTuber”という名前が一般的になる前の“動画投稿系男子”と呼ばれていた頃から活動していたようだ(となると2010年頃か)。バラエティ要素強めの「歌ってみた」「替え歌」動画がメインとのこと。名前を聞いた時にはピンとこなかったのだけれど、以前、ペンタトニックスのア・カペラでのダフト・パンク・メドレー(Pentatonix「Daft Punk」)みたいな、もっと近しい言い方をすると、ジェイコブ・コリア―のア・カペラ一人多重録音カヴァーみたいなこと(Jacob Collier「Don't You Worry 'Bout A Thing」)を、日本人男性がマイケル・ジャクソン「スリラー」でやっていた動画を観た記憶があったのだが、後ほど調べてみたら、なんと当の本人だった(→「口だけでスリラー。Thriller / Head Will Roll - glee cover- "RYOJI TAKARABE" HITORI glee vol.4」)。
YouTubeを覗きに行ったところ、トップには「推しのマイケルジャクソンの命日なのでMV作りました」という動画が掲載されていて、「歳の離れた従兄弟がいたおかげで、人生で一番最初に好きなったアーティストがマイケルジャクソン でした」との説明が。音源でもステージでも初めてオリジナル曲を耳にしたのだが、第一印象は80年代後半~90年代前半の洋楽やブラコンあたりを意識した日本のポップスが下地にありそうだ……などと勘ぐっていたのだが、マイケル・ジャクソンの影響が大きかったとなれば、それなりに合点もいった。
YouTuberとしてエンターテインメントに振り切った活動スタイルだからか、MC含めてテンションも高く、非常にヴァイタリティある歌唱が特色。もちろん溌溂としている声色なのだが、元気溌剌、天真爛漫なMCとは異なり、ヴォーカルワークは斜に構えたというか、ほんのり気障な“キメ感”が横溢していて、そのあたりが艶っぽさとのギャップが、女性ファンの心をくすぐるところでもあるのだろう。曲間にちょいちょいコミカルな言葉を放ったり、何かと笑わせてやろう、盛り上げてやろうという気質が見える調子モノっぷりは、YouTuberの性(サガ)なのかもしれないが、個人的には特に嫌みな感じもなし。
冒頭に披露した「Fiction」は、アレンジこそ跳ねのあるエレクトロな装飾を施しているが、メロディラインやグルーヴはブラコン/R&Bのそれで、続く「SHUKUMEI」もほんのりセンチなミディアム・ファンキー・ポップに乗せたラヴソングと、そこかしこに“黒さ”が見え隠れ。「大変よくできました」や「シークレットラブ」は林田健司にも通じるファンクネスも迸っていた。
しっとりとしたメッセージ・ソングの「胡蝶蘭」でも時に感情を張り巡らせ過ぎ、フェイクが過剰になるきらいがあり、正直なところバランスとして微妙に感じたりもしたが、そのハイテンションや熱唱が持ち味の一つでもあるのだろう。ラストの「声を聴かせて」まで、歌で気持ちを届けたいという意志が伝わるパフォーマンスだった。
トリはラップオバケ。豪生まれのバイリンガルラッパーのHOMEY、トラック制作やステージ構成を手掛け、コリオグラファーとしても活動するPEACE、MCバトルで研鑽を積み、MCバトルイヴェントを主催するKAKUの3MCクルーだ。なんとなしにネット検索したら「活動休止する運び」という大切なお知らせが目について一瞬驚いたが、この8月から活動再開したそうだ。12月にはワンマンライヴ〈ラップオバケヤシキ Vol.8〉も控えている。
系統としては、パブリック娘。とかJABBA DA FOOTBALL CLUBあたりに近いのかも知れないが、冒頭から圧倒的にエンジョイモードに振り切ってくるステージングが何よりの魅力。サングラス姿でクールな風貌ながら、キャッチーなフロウを繰り出してくるHOMEY、かなりタッパがある上背からロウヴォイスも駆使する丸縁眼鏡のPEACE、小柄を感じさせないほどステージ狭しと激しく動きラップを畳み掛ける(ほんのりSOUL'd OUTのBro.Hiっぽさも感じる)KAKUと、それぞれが独自のスタイルで目まぐるしく展開していくが、スキルやステージングの土台がしっかりしているから、ノイズにならずに爆発力あるヴァイブスをもたらしていく。
冒頭のタイトルからも賑やかなステージングが想起出来そうな「ワッ!!!」から、ラップ・グループならではのワチャワチャ感とグッドヴァイブスを心地よく振り撒いていく「チョットウォッチミー」、“Breakin' Breakin'”のフックが印象的な「ステテ」とジョイフルでハイテンションなモードで、一気にフロアを巻き込んでいく。
自らのアンセムともいえる「オバケパーティー」では、手の甲を上下させる(「うらめしや~」なおばけ定番ポーズ)ポーズや、ノーティー・バイ・ネイチャー「ヒップ・ホップ・フーレイ」よろしく“ヘーイ、ホー”のフレーズでフロアとの距離感をさらに縮め、オーディエンスと共に弾ける空間に仕立てていく。
かと思えば、ハイテンション一辺倒じゃなく、こじゃれた夏っぽい涼感を湛えた「ドンナ」でクールダウンをするなど、引き出しの数も多そうだ。
MCでは出演後にフロア脇で観ていた財部りょうじと絡み、笑いをもたらしていたが、この日出演の3組は基本“陽キャ”な分類に当てはまりそうなこともあって、アーティスト同士の相性の良さもステージの盛り上がりに一役買ったといっていい。
アッパーなテンションで攻め立てるステージゆえ、時間のスピードもいささか速く感じるなか、「こんな夜は」からラストスパート。肩の力を抜きつつ疾走感を伴ってアグレッシヴに進行していく「ヒビヒビ」を経て、ラストは「オモイデシャシン」へ。途中から財部りょうじとWAY WAVEの姉妹を呼び込んで、曲中の“カシャッ”というシャッター音とともにステージ中央で集合写真ポーズを決めたりしながら、笑いと興奮に溢れたステージを締めくくった。
個人的にはWAY WAVE以外は初見の2組だったが、各組のコミュニケーションも良好で、トータルバランスの優れた3マンイヴェントだったのではないだろうか。再び同じ組み合わせのイヴェントが組まれそうな予感もした、祝祭感に満ちた夜となった。
◇◇◇
<SET LIST>
《WAY WAVE with DJ arinco Section》
00 INTRODUCTION~"Dance To The Music (John Luongo Dance Remix)" by Sly & The Family Stone
01 Looking For Woman
02 Best of My Love (original by The Emotions)
03 September Wind (*J)
04 流されていこう (*J)
05 断捨離FUNK (*J)
06 友達終了のお知らせ (*J)
07 WAVY GIRL
08 ソウルシュガー
(*J): song from album "JOURNEY"
《財部りょうじ Section》
00 INTRODUCTION~"SHUKUMEI" overture
01 Fiction
02 SHUKUMEI
03 大変よくできました
04 シークレットラブ
05 Always
06 胡蝶蘭
07 声を聴かせて
《ラップオバケ Section》
01 ワッ!!!
02 チョットウォッチミー
03 ステテ
04 オバケパーティー
05 ドンナ
06 こんな夜は
07 ヒビヒビ
08 オモイデシャシン
<MEMBERS>
WAY WAVE are:
小池杏奈、小池優奈
DJ arinco(DJ)
財部りょうじ(財部亮治)
ラップオバケ are:
HOMEY
PEACE
KAKU
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