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【むこじゅん政策の視点】:安全保障編②

noteで政策に関する視点を書いている記事、昨日の安全保障編の後半です。

私が安全保障政策で重視したいこととして以下の3点を挙げました。
今回は、②、③について触れます。(→前編はこちらご参照ください。)

①同盟・国際関係の重視
②グレーゾーンへの対処
③ゲーム・チェンジャー技術への投資

②グレーゾーンについて

昨年、シンクタンクで若手政治家や研究者、官僚の方々と共に、台湾危機シミュレーションに参加しました。内容は非公表ですが、シナリオの中でロールプレイする中、私が担当した国は、小泉進次郎議員が国のリーダー、私は民間企業役という配役でした。

軍事衝突に至らなかったとしても、国家を背景としたプレイヤーによる民間へのサイバー攻撃が起きたら?漁船による衝突が起きたら?半導体輸出規制が起きて産業が何日持つのか?

危機において、民間と公的セクターが切り離せないことを痛感する経験でした。

私が今安全保障に関して政治的な手当が重要だと思う分野は、所謂グレーゾーンへの対処です。海上保安庁の管轄から自衛隊の管轄に変わる瞬間、民間が武力でない形で海外勢力から狙われた時の対処等の穴・法律の穴を塞いでシームレスに対処する形を作れるのは政治だけです。

その中でも、私が今後仕事に取り組む中で重視したいのは、情報・サイバー空間の守りを強化すること、そして、経済分野の安全保障(半導体等の重要物資やインフラを守ること・食糧自給率の向上・エネルギーの確保等)です。

「防衛予算で重視すべきはサイバー」という主張をされる方もおりますが、
もちろんそれも一つのピースとして重要ですが(今回、安全保障戦略でも既に明確にサイバーは領域として入っており、また人材強化のために、横須賀の陸自通信学校がサイバーの専門性を高める教育機関になったり、専門人材登用のための処遇等の環境づくりが行われています)、防衛予算の文脈だけでサイバーを語るのは一面的となります。

クリミア半島併合等の過去事例を見ても、サイバー空間で重要なのは「民間と連携した守り」です。なぜなら、サイバー攻撃では、防衛に関わる施設(防衛省・自衛隊の対処するエリア)以上に、発電所、港湾、病院、銀行などの民間施設が狙われる可能性が高いからです。日本でも一昨年の大阪急性期・総合医療センターへの攻撃や、昨年夏に名古屋港がサイバー攻撃を受けて物流が約3日間止まったのは記憶に新しいところです。

従って、サイバー分野では米国でも防衛省だけではなく、同省と連携する形でDHS(国土安全保障省)の管轄に司令塔CISAがあります。日本では、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が中核になって体制整備・拡充が議論されています。民間のことは民間で、とはいかず、政府がしっかり重要インフラもカバーできる体制を民間と連携して構築する。このことが何よりも重要だと考えます。

手段としての能動的サイバー防御の議論も重要ですし法改正を伴いますので、議論をしっかり深めあらゆる手をとれる体制を整備する必要があると考えております。

尚、普通科連隊長として函館に勤めておられた渡部悦和さんが「プーチンの超限戦」という本を書いておられます。その本のベースになっている「超限戦」と呼ばれている1999年の中国の戦略研究の文書では、諜報・金融・世論等の非軍事的手段も含めて勝つ戦略が考えられており、中国という国がまさに孫氏の兵法で言われるような「戦わずに勝つ」ということを重視していることがよくわかります。(ちなみに、渡部悦和さんとは、同氏がハーバードのフェローとしてボストンにおられた時代に、私は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の故エズラ・ヴォーゲル ハーバード大名誉教授の日中関係史の研究助手をしており、ヴォーゲル先生の私塾で一緒に中東研究などの議論をご一緒させていただいた経験があり、同氏の任務地であった函館に私が来たことにとてもご縁を感じます。)

民間の重要施設をどう守っていくのか。SNSでフェイク情報が溢れる時代にどう国家を守るのか。民間と軍事の「グレーゾーン」を政治がしっかり埋めて穴がない守りを構築する。この点こそがこれからの時代に重要な観点だと考えています。

③ゲーム・チェンジャー技術への投資

最後に、「攻めない方が得だ」「攻めても成功しない」という抑止力を実効的に持つためには、急速な時代の変化に適応しなければならないと、私は考えています。

第二次大戦時、日本軍の幹部は艦戦の時代から空母・航空戦の時代に変わったことを認識しながら、戦艦大和を建造しました。冷戦時代には核戦力の保有が中核にありましたが、時代時代で中核技術は移り変わる現実があります。今、無人機の利用やAIなどが大きな戦場にも大きな変化を与えています。安全保障3文書でも安全保障の新領域として宇宙・サイバー・電磁波等の従来型戦闘と異なる部分の重要性が提起されています。

日本が国力を維持していくためには、量子、宇宙、バイオ等の先端技術等、全ての状況を一変させる可能性があるいわゆる「ゲーム・チェンジャー」技術に常に投資をしていく必要があると考えております。科学技術の優位性が国の「パワー」に直結します。先週末、H3ロケットの打ち上げの成功の報道がありましたが、宇宙空間も含めて先端技術への投資は欠かすことができない重要な視点です。

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以上、簡単ですが、安全保障に関わる政策的な着目点について書いてきました。

日本を取り巻く安全保障環境が激変する中で、目を背けずに、国民を守ること、そして、国益の視点に立って、議論を続けて参ります。

追伸:
昨日、noteを読んでくださった方から、「真のゲームチェンジャーは『人』だと考えています。」というコメントをいただきました。確かに、技術は結局のところ研究者・産業の尽力や実際にそれを活用する「人々」にいきつきます。安全保障というと無機質な戦略論になってしまうところ、とてもハッとさせてくれるご指摘でした。私は、人に加えて、仕組みも含めた「イノベーション力」が国にとって非常に重要だと思っております。
以前、ウクライナ戦争の状況も踏まえて以下の記事を書きましたので、併せてご覧ください。

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