エリック・シュミット(Google元 CEO)の「イノベーション・パワー」論考から考えるイノベーションの地政学的な意味
Foreign Affairs(米外交問題評議会(CFR)が発行する国際政治経済ジャーナル)の3-4月号にGoogleのCEOだったEric Schmidt氏の論考が掲載されていました。
「イノベーションパワー 〜なぜテクノロジーが地政学の未来を決めるのか〜」と題されているものです。
同氏は、ロシア軍によるウクライナへの侵略で誰も持ち堪えられると思っていたかったウクライナが敵に有利な点だったのは(ウクライナ人の決意、弱いロシア軍、そして強い西側の支援に帰するところはあるものの)テクノロジーだと指摘します。
政府の重要情報を侵略直後にクラウドにアップロードして守り、建物等の物理的な破壊があっても国家の中枢機能を守ったこと
ゼンレンスキー大統領が2年前に設立したDX省が提供するe-政府のスマホアプリDiiaを、市民が敵の軍についての写真や動画をアップロードできる窓口としてOSINT体制を構築したこと
またネット回線等のコミュニケーション・インフラの危機に対してスターリンクの衛星を使って回線を維持したこと
などを事例として挙げました。
私自身、同様の問題意識を持って世界情勢を見る中で、2020年11月に地経学ブリーフィングの執筆論考中で、「国家サイバーパワー」が重要になるということを提起しました。
しかし、シュミット氏が今回提起したのはもう一歩踏み込んで「イノベーション・パワー」すなわち、イノベーションを起こす力:新しい技術を発明し、適応し、使いこなす能力です。(Innovation power is the ability to invent, adopt, and adapt new technologies)
昨年11月に公開され、世間を賑わせている大規模言語モデルを使ったChatGPTのお陰で、第四次AIブームに入ったとも言われる中、多くの人がAIの進化に驚きと、そして実装される世界の実感を持ったもの思います。
「イノベーションを起こす力」を持つことが加速度的に進化する技術力を持つことにつながるスピードの速い時代に突入しました。
また、シュミット氏は、イノベーションへのコミットについて、中国との競争を念頭に、国ためだけではなく、民主主義のためにコミットしなければならないと主張します。
政策従事者はどうしていくべきなのか。
と同氏は述べていますが、非常に日本も重く受け止めなければならない部分だと思います。
日本は、今岸田政権の「スタートアップ5ヵ年計画」でイノベーションの牽引役であるスタートアップを活性化させてエコシステムを牽引する施策を打ち出しています。
同計画ではディープテック分野にも注力する方向が出ていますが、あらゆる側面からエコシステムとしてイノベーションを後押しすることが国力に直結します。スタートアップのエコシステム支援に加えて、
基本的なデジタル化すらままならなかったデータ基盤を整備していく。
大学の研究室からイノベーションが起こせるための環境整備、
研究者の待遇や研究環境などの整備をしていく。
政府調達や政府のR&Dと産業界・学術界の垣根を整理していく。
企業活動にしても、安全保障においても、教育においても、
テクノロジーの実装と、「使いこなす」ことを後押しする。
自国の経済発展・国益がもちろんの大前提の目的でありますが、長期的な意義・世界全体の秩序の観点からも、私たちが大切にしている価値観を維持するために、「イノベーション・パワー」を日本も磨かなければなりません。
〆
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