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公共事業予算について考える

三菱商事に勤めていた時、火力(石炭・ガス)・風力・太陽光・地熱等の各発電所や空港・港湾・高速道路などさまざまな世界のインフラの開発や運営に携わってきました。民間事業として見ていましたので、採算や投資額や効果についてシビアに分析を重ねていた一方で、それらの開発・維持管理がどれだけその地域の人々の生活に直結していたかを見ており、インフラは豊かな社会の機能を支える重要かつ不可欠な資本だと実感しています。

民主党時代、「コンクリートから人へ」というスローガンで単年度で18%と大幅な予算削減を行いましたが、私は、人とコンクリートは二律背反の概念ではなく、今、重要なのは、「人を守るためのコンクリート」、「人が豊かになるためのコンクリート」に対する投資を、将来を見据えて優先順位をつけ実行することだと考えています。

国家財政が厳しくなる中で、高度経済成長期のように兎に角どんどん国土開発すれば良いという時代ではなくなりました。一方で、高度経済成長期に整備した公共インフラが老朽化時代に入り、どのようにその機能維持をしていくのか。台風の大型化や地震など、自然災害が激甚化する中で、国土をどう強靱化するのか。新しい産業の誘致や農林水産業・観光などの強みを活かすためにどう整備をしていくのか。限られた財政の中で、工夫をして議論を重ねながら地域を守る・地域を発展させるための社会資本整備が問われる時代になりました。

道南地域においては、国の観点で言えば、とりわけ各地方と函館を結ぶ道路は重要なインフラです。渡島西部や檜山南部地域では、買い物先の4割以上、通院先の3割以上が函館市です。また、出産を控えた妊婦さんから高度医療を必要とする高齢者まで、地域医療を支えているのが函館であり、緊急搬送件数も増加しています。松前までの国道228号線のように人流・物流を支える唯一の道路となっている箇所も多く、まさに、今優先順位が高いのは命を守ることに直結している「命のみち」だと考えています。また、道南の強みである農林水産業を活かし、新鮮な魚介類や農産品を道内外に出荷する、新幹線延伸を活かして道内の観光周遊ルートを利便性の高いものとする、檜山沖・松前沖の洋上風力など新しい産業の拠点を繋ぐ…この地域の経済を発展させて、私たちが豊かに生きるためにも、産業と社会資本整備はセットで考えることが欠かせません。2017年当時の与党衆議院議員の尽力で国直轄事業として若松埠頭の整備が事業化されたことで、今、大型クルーズ船が寄港することができ、函館の街の賑わいに大きく寄与していることは皆さんの記憶に新しいことと思います。

尚、 最近、「与党議員がいないから公共事業が来ないって本当?」「与党議員の存在と公共工事は無関係です」という以下のような図表を掲載した投稿を目にしました。私は、社会資本整備について「与党だから」「野党だから」というつもりはありません。一方で、民間企業やシンクタンクでデータ分析を日常的にしていた身からすると、図表のデータについては違和感を指摘せざるを得ません。

与党議員がいた時期が赤棒。
出典:北海道公共事業信用保証株式会社(https://www2.hokkaido-cs.co.jp/statistics/)

・「道南地区・公共事業保証請負金額」の数値は、国の発注だけではなく、北海道の各振興局や道内市町村、そして独立行政法人の発注も含めた道南地区全体の工事請負総額になっています。

・出典資料の「保証工事からみた北海道の公共工事の動向」では地区ごとの国・道・市町の内訳が示されていませんが、北海道全体では全体金額のうち、国発注の工事は1/3から約半分程度であり、もし、意図するところが国の予算についての指摘であれば、道・市町村の予算も含めた表を出すのは提起している課題とデータが合っていません。

・例えば、今回提示されていた表に、当該時期の当初+補正の国の道南地区の事業予算(函館開発建設部事業予算:水色)を重ねてみた図表は以下の通りです。請負額と事業予算なので時期が完全に合致した数値ではありませんが、年度推移の傾向は追うことができます。

重ねた部分の出典:国土交通省函館開発建設部 各年度開発事業費(https://www.hkd.mlit.go.jp/hk/)

データ分析は、フェアな視点が必要だと考えています。大前提として、地域の予算は国全体の予算動向にも左右されますので、そもそも一つの地域の経年を切り出すことはあまり意味がありません。もし、お題として与野党の議員動向を分析課題とするならば、与野党の差異が出る同じ北海道内の開発建設部ごとの横比較や、人口あたり予算、国に対する北海道開発予算の道南シェアの推移、などを比較するのが妥当ではないかと思います。個人的には、どのようなデータをどのような設問に対して出すかは、因果推論含め統計分析の基礎として叩き込まれてきた分野です。

尚、ご参考まで、横比較を見ますと、渡島檜山管内の開発予算は当管内より人口の少ない小樽・釧路開発建設部の予算より少ないという結果です。また、地域の声が届いているかを示す一つの指標となる道路予算のシェア推移については、近年、道路予算で緊急防災(中山・乙部・白神)以外で所謂新規の道路ネットワーク予算は事業化されていませんので、低下傾向となっております。

出典:国土交通省各開発建設部サイト開発事業費より

国道や農地整備、治水等、地域に跨る基盤的な整備は道・市町村ではなく国が担っている箇所が多くあります。北海道の場合は、北海道開発予算が一括計上されますので、その予算配分を議論する際には、道南地域の代弁者として地域のニーズをしっかり伝えていくことが何より大切だと考えています。血税を投下するにあたっての優先順位や将来に渡って対価に対して妥当な社会価値を生み出すのかを冷静に分析し、しっかり議論しながら、地域の皆さんと共に、挑戦していきたいと思います。

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