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手話の復習

 私は手話の勉強をしている。
 昔の職場に聾者の女性がいて、彼女と一緒に働くに当たって勉強し、2〜3年かけて日常会話と業務に関する話はほとんど手話でできるようになった。

 しかし転職してから10年チョイ、手話を使わない生活が長くなり、ほとんど忘れてしまった。

 小売業になってから、聾のお客様に会う機会が何度かあった。
 聞こえない人だと分かれば手話で話しかけて行く。

 やってみて分かった。
 私は手話を忘れている!

 一度獲得した言語を失ったという現実は、ショックだった。昔は夢の中でも手話で話していたのに。
 帰国子女が身に付けた外国語を忘れないために帰国後は英会話スクールなどに通うと聞いたことがある。そういうことを私もしなければいけなかった。

 早速、地域の手話サークルに入った。
 デパ地下に勤めているとシフトによって勤務時間がマチマチで、毎週何曜日と決まっている講習会には通えない。サークルも曜日は決まっているけど、講習会のようなカリキュラムがないので休みがちでも気兼ねなく通える。

 私は福祉とかボランティアとかってあまり意識していない。
 ボランティアというのに参加したこともあるけど「あの人が“人手が足りない”って言ってるから加わった」という軽い感じだし。

 手話の勉強をしていると言うと福祉に関心のある意識の高い人と思われることがあって困る。
 外国人のお客さんに試食を勧める短い英語フレーズをいくつか覚えているのと同じ感覚だ。
 人とのコミュニケーションに必要だから身につける。身に付けた能力はせっかくだから維持したい。それだけだ。

 外国人のお客様は日本語が分からないからか、私に話しかけられてもそれほど長居しないし、言葉のコミュニケーションを求めてこない。あ、私の英語が下手すぎたのか?練習してるのに。それでも私は話しかけに行く。

 でも日本人の聾者の方は、私がどんなに下手な手話であっても根気強く付き合ってくれて、楽しそうに話して行ってくれる。

 思うんだけど、聾者とのコミュニケーションに必ずしも手話は必要なくて、筆談でも会話はできる。
 しかし、それに慣れていることが大事じゃないかと。

 私も勉強中の身なので、通じないこと、読み取れないことが多く、「もう一回」とか「今の手話なに?」が多い。
 本当に初めて手話の勉強を始めた人が一度のやり取りで通じないとき「今のじゃダメなんだ!」と思って焦って次の矢を放てないでアワアワしてしまうケースがある。
 でも私の経験上、手話勉強中の聴者に対して聾者の皆さんは大変寛大な態度で接してくれる。だから心配しないで何度でも分かるまで聞いて大丈夫だと思う。
 あなたの思いを理解したいのです、ということだけは確実に伝わるから。

 今の私は手話言語がほとんど身についていないサラの状態に戻ってしまったけど、手話初心者の初々しさは無く、まるで手話ペラペラのような態度で基本的な質問を繰り出している。
「今のなに?」
「もう1回!」
手話サークルではもちろん、来店したお客様にもやっている。(汗)

 さあ、楽しんでやっていきましょう!


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