【統率者/EDH】《勇敢な追跡者、ルビー》デッキを1万円くらいで組む
本記事では、下表のレベル5をデッキパワーの目安とし、「1万円程度で組む」というコンセプトをもって、《勇敢な追跡者、ルビー》デッキの紹介を行いたい。
デッキ例
上が先述のコンセプトをもとに、筆者が構築したデッキである。
これを用いて、デッキの目指すところ、デッキの核となる部分、簡単なプレイ指針を説明していく。
統率者《勇敢な追跡者、ルビー》
言うに及ばず、統率者としてのルビーの強みは「2ターン目に確実にマナ加速が出来る」という点にある。
マナアーティファクトやクリーチャーなどの有無に関わらず、3ターン目に4マナへたどり着く道筋をつけることができる。
ルビーを除去されることはあまり考えなくていい。2ターン目にこの一見して地味なマナクリーチャーに貴重な除去を使いたいと思うプレイヤーは少ないだろう。
ここまではルビーを使うプレイヤーが共通して持つ採用動機だと思う。
マナクリーチャーでありながら速攻を持っていることも注目に値する。
今しがた引いてきた《太陽の指輪》をプレイして、2ターンで5マナを生み出せる盤面を作ることだってできる。
+2/+2修正能力もちょっと嬉しい。ちょっとだけね。
あとは3ターン目以降どう動くかでデッキ構築方針が分岐するので、ここで以下のどちらかに決める。
A:4~5マナあたりの強力なクリーチャーで一気呵成に攻める
B:4マナから更に土地を伸ばし、早いターンに6~7マナの怪物を出す
Aならば、3ターン目に《地震土竜、アンズラグ》、次ターンには《栄光をもたらすもの》をプレイするなどして早期に驚異的な盤面を作り出すことができ、魅力的に映る。
しかし、折角の赤緑という「デカいの重視」カラーの統率者を選んだのだから、ここでは思い切ってBに進んでしまおう。
構築の指針としての『彌永ケッシグ』
このデッキの目指すところを説明するために、2011年の世界選手権で優勝を果たした彌永淳也氏のスタンダードデッキ(基本セット2012・ミラディンの傷跡ブロック・イニストラード期)『赤緑ケッシグ・ランプ』(通称:彌永ケッシグ)に少し触れる。
当該デッキのMTGwikiページを参照されたい。
このデッキの何よりも強い点は、2~3ターン目にそれぞれ1マナ加速、4ターン目には6マナのタイタン2種のプレイ、という2→4→6の動きの再現性の高さにあった。
筆者はこのデッキのその精髄に感銘を受け、いつかこうしたデッキを強く使える場に持ち込みたいと考えるようになった。そのタイミングが中々訪れないまま今日に至ったのだが……
先述のプランBはまさに、この『彌永ケッシグ』の思想に合致したものと言える。やっと見つかった感。
それも「2→4→6」で不可避だった「マナ加速を引けるか否か」の運否天賦のうちの「2→4」を、ルビーの存在によりパスすることができる。
後は「4→6」をもたらす1枚さえ3ターン目までに手の内に入れられたならば、以降はお気に召すままに大怪獣どもをプレイし、戦場をあなた好みの遊び場にしてしまおう。
つまり、「4→6」を達成できるカードをどうするかが肝要である。
しかし、ここは化物たちが跳梁跋扈するEDH。1ランク上の「4→7」を目指しちゃいましょう。
マナ加速の選択
4ターン目に7マナが出るようにしたいのだから、初手に必ずマナ加速できる呪文が1枚含まれるようにしたい。
なるべく安定的に加速できるものを優先的に選択するなら、まず4マナで2枚の土地を戦場に出せるソーサリーを入れることになる。
デッキ例には、それに該当する11枚のソーサリーと、それらの同様の効果をもたらすバトル《ゼンディカーへの侵攻》を入れている。
加えて、除去等のリスクは孕んでいるものの7マナへのジャンプアップを可能にする《巨体の猛竜》《カル・シスマの恐怖、殺し爪》《反逆の先導者、チャンドラ》も採用し、キープ基準の達成可能性のアップを図っている。
これらのカードは場に残れば相当な脅威となるのも高ポイント。
また、6マナのクリーチャーも相当数採用しているため、補助的に「4→6」用の《真面目な身代わり》《原始の伝令》も入れており、初手のクリーチャーが6マナに偏っているなら、これらも十分キープ基準として扱える。
ちなみに私は基本的に、土地3枚+《真面目な身代わり》さえあれば、後で何か引くだろうと期待して他のカードには目を瞑ってキープしている。
ここまでに17枚の4マナのカードを紹介したが、これでも初手にそれらが無く、泣く泣くマリガンを強いられることも珍しくない。
かといって更にマナ加速カードを追加すると、今度はデッキの主役たるデカいやつらを引ける確率が下がるジレンマに陥る。
故にデッキ例で考えれば、このくらいに抑えておいた方がいいと今のところは思っている。
追加するとすれば、《耕作》や《木霊の手の内》あたりが有力。
または、《忌まわしい守護獣、ハグス》や《密室の温室の事件》などの土地を追加で置けるものもいい。
2マナ出せるアーティファクトも考えられるが、壊されるリスクを取ってまでは採用したくない。折角われらは緑の子であるのだから、土地を伸ばす方向で検討したい。
主戦力となるクリーチャーの選択
続いて、マナ加速後に出すクリーチャーを選んでいく。
クリーチャーは35~40枚の中で枚数を決めると使用感が良い。
クリーチャーに関しては自身の好みで選んでいいよという部分なのだが、選ぶ上でいくつか重要な要素があるので、それに適合したクリーチャーを意識しつつ自分だけのデッキに仕上げてほしい。
その要素は凡そ以下のとおり。
他のクリーチャーに速攻を付与できる
相手のパーマネントに干渉できる(格闘、エンチャント破壊など)
デッキの継戦能力を上げる(他の呪文に反応してドロー、続唱、発見など)
回避能力を持つ、あるいは持たせる
デカい(特に赤緑はパワー4以上を参照するカードが多い傾向にある)
中でも、上の二つが特に重要だと思っている。
速攻付与については、《隠れしウラブラスク》と《スーラクと殺し爪》あたりがオススメ。全体に速攻を与えられるのは勿論、その他の部分もしっかり強い。
もう少し予算を増やしてもいいのであれば、《歓楽の神、ゼナゴス》で飛行やトランプルを持ったクリーチャーに速攻と修正を与えて滅茶苦茶にするのも非常に素晴らしいので、是非財布の紐を緩めていただきたい。
盤面と日本経済が加速する一助となる。
クリーチャーによる除去に関しては、格闘と赤のドラゴンに多く見られる火力を中心に考える。
格闘で絶対に外したくないのが《巨大猿、コグラ》。攻撃時の誘発能力もデカいし、破壊不能を得る能力も人間さえいれば……そういえば、《勇敢な追跡者、ルビー》っていうカードをあなたは御存知でしょうか?
他には《コグラとイダーロ》、《グルールの憤怒獣》や《茨のマンモス》あたりが採用圏内か。
火力に関しては、《炎の大口、ドラクセス》のようなドラゴンを中心に採る。航空戦力としても非常に大事。
また、安価かつヤバいためオススメなのが《罪人の焼却者》。
証拠収集のタネなら、さっき使った4マナのソーサリーとかがあるじゃないですか……これであいつらのこと、殺っちまいましょうよ……。
予算アップが許せるなら《災火のドラゴン》も採用したい。
ドラゴン以外でオススメしたいのが、《スクリーマーキラー》。
簡単な条件で凄い火力が出る上に安いので是非採用してほしい。
《落星の学者、ロクサーヌ》は、ダメージ自体は控えめかつタフネスも心許ないが、残る隕石が後の助けとしてあまりに大きい。これもデッキに入れるスペースを確保してあげたい。
続いて優先して入れたいクリーチャーとしては、続唱や発見を持つもの。
序中盤はどうしても1ターン1アクションになり、終盤に差し掛かったころには相手と盤面に差が付いてしまう……という負け筋がある。
そのため、「1枚が2枚以上になる」カードをしっかり採りたい。
安価でオススメなものとして、《大渦の巨人》や《苛立つアルティサウルス》が挙げられる。できれば《嘶くカルノサウルス》も、取り回しの良さも
あって是非採用したい。
続唱や発見における大当たりは、後続の大型クリーチャーである場合が多いと思うが、残念ながらマナ加速が公開されてしょんぼり……ということもままある。
そこで、終盤にマナ加速を引いてきた場合の受けとしても活用できる上陸持ちのクリーチャーも試してほしい。
《怒りの座、オムナス》と《猛り狂うベイロス》がツートップ。
他に入れるべきクリーチャーとしては、《運命の大嵐、ドラゴンホーク》だろう。例に挙げたデッキの中では、一番勝ちに直結するカードだといっても過言ではない。
パワー4以上のクリーチャーを並べた上で、妨害される可能性の低いタイミングを狙い、速攻を付けて殴るという運用をしたい。能力によるダメージは「各」対戦相手に入ることを忘れないこと。
このデッキでは本当に強いから!1枚買え!
その他の呪文の選択
クリーチャーが決まったら、次にマナ加速・クリーチャー以外の呪文を選んでいく。
土地の枚数はマナカーブによって多少前後すると思うが、37枚あたりに落ち着くことの多いデッキなので、最初は37枠空けて残りの枠を埋める形で進めていくといいと考える。
ここでも、先述した「クリーチャーの重要な要素」に沿って選ぶとよくまとまる。
速攻付与では、《野生の律動》を必ず採用したい。打ち消されない能力付与まで付いてくるのは破格。
《活力の温泉》も入れたくなるが、枠の関係で抜けることになると思う。
除去としては、ドラゴンや格闘持ちなどをしっかり採用していればそれらが代わりを担ってくれるはずなので、控えめで構わない。
それでも、《サルカンの封印破り》はマストで採用すべきと言っておきたい。自分だけ被害ゼロとなり得る全体除去など中々使えるものではない。
パワー7以上でのボーナスがデカいので、構築段階で意識したい。
次点としては《怒りのワルツ》か。
上手く使えば、同じく自分の被害は無しな上に更なる高火力を狙える。
また何といっても、自分のクリーチャーが死亡した場合のバックアップ能力がある点に、他の全体火力と一線を画するところがある。
ただし、デメリットとして大きいのが、対象に取ったクリーチャーを除去されると立ち消えてしまう点。故に使いどころが難しい1枚になっている。
アドバンテージ源としては、《怪物渦》が圧倒的にトップ。
発見Xの誘発は最初の一度きりではなく、パワー5以上のクリーチャーが発見により唱えられれば、そこからさらに効果は繋がっていく。
4マナで唱えた《巨体の猛竜》が5枚くらいのお供を連れて来るなんてことも珍しくはない。
なので当然、パワー5以上のクリーチャーを優先して採用したい。
もう1枚入れておきたいのが《ガラクの蜂起》。
トランプルとドロー、このデッキに必要なものが2in1。
それ以上の説明は不要!必ず入れましょう。
他に入れておきたいものとして《モンスター・マニュアル》を推したい。
クリーチャーが打ち消されない、2マナで出せる、というこのデッキのために印刷されたカードと見紛うばかりの能力。《流転の護符》なんて使っている場合ではない。
出てくるクリーチャーは概ねろくでもないヤツばかりのため、マニュアルと2マナを立たせておくだけで、相手の攻めに対する抑止力たり得る。
3,000円級のカードに思えるが、500円で買えるというコスパの良さも◎。
土地の選択
最後に土地だが、デッキ例では安く済ませるコンセプトで選んだものとなっているのであまり参考にはしない方がいい。
実際に土地を選ぶ際には、
確定タップイン土地を極力使わない(最短で「2→4→7」を目指す)
《山》《森》を出すことのできるフェッチランドを持っているなら、持っているだけ入れる(色の安定、デッキ圧縮、上陸誘発)
《聖遺の塔》を入れる(エンチャントがうまくハマると手札が溢れ出す)
基本土地を削り過ぎない(基本土地サーチカードが多いため)
といった部分を重視して組むと安定しやすい。
デッキに追加投資をするなら、まずは土地から手を付けるのがいい。
クリーチャー云々より、マナ的に安定してデッキを動かせることの方がより勝ち負けに直結すると思うし、ストレスも少なく楽しめる(おそらく古今東西全てのデッキに言える)。
《Taiga》なんて言わないから、《ギャレンブリグ城》や《踏み鳴らされる地》あたりから始めるといいと思う。
プレイ指針
指針というほど大それたものは無い。
これは繰り返しになるが、キープ基準は厳しく「2→4→6~7」が7枚の中で完結しているものを抱えるべし。
7マナに届いたら7マナのクリーチャーをプレイするのが大抵最善手に思えるが、《怪物渦》などのアドバンテージをもたらすカードがあるならそれを優先したほうがいい。
継続的に脅威的なものを送り込むこと、全体除去から早期に立ち直れるよう盤面を構築することが大事。
中盤を迎えるころには見た目がド派手な盤面になっているので、相手から目の敵にされやすい。そのため、アグレッシブに攻めると手酷いしっぺ返しを受けることもざらにある。
守りから逆算してコンバットを行った方が良い結果に繋がることが多い。
あとは「統率者戦の流儀」に従って攻める相手を決めること……。
おわりに
このデッキは本当に懐が深い。
封印破りや怪物渦が反応してくれるという点で言えば、《巨大な戦慄大口》だって採用したっていい。
……というのは言い過ぎとしても、《揺らし歩きのケラトプス》のような不器用なカードでも採用圏内に十分入れられることができるのが魅力である。
「出せれば強いよ?でも……。」というカードはこの世に数多あり、大抵安い。そして実際に使ってみるとめちゃくちゃ強い。
ストレージで燻る《凶暴な熱口》や《巨大オサムシ》、そのままにしておくのは勿体無くはありませんか?
最強の統率者《大胆な追跡者、ルビー》はそのすべてに光を当ててくれる。
さあ、デッキを組もう。