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『北九州市立美術館50周年記念 大コレクション展』 ーあの時、この場所で。ー

秋晴れのとある木曜日、北九州市の”丘の上の双眼鏡”と市民から親しまれている北九州市立美術館に行ってきました。平日のお昼前というのに駐車場は7割方埋まっている盛況ぶり。展示場は1階の二ヶ所+3階部分の3つのパートに分かれていました。入ってすぐに掲示があり、スマホにアプリをダウンロードすると作品のキャプション横のQRコードを読み込んで音声解説が聞けるとのこと。解説ボタンを押して説明を聞く時代は終わったんですね!(あれは博物館とか水族館でしたっけ)ゆっくり美術館に来るなんて本当に久しぶりのことでもっと前から導入されていたのかもしれません・・・。

     東山魁夷「凍池」           ルオー「アルルカン」  
                      

会場に入ると1枚の絵の前に2、3人が佇んでいるような感じでしたが、見えない程ではなく譲り合いながら観ることができました。まず驚かされたのは点数の多さ。通常の展覧会であれば、作品と作品の間にある程度の空間があると思いますが、この展覧会はほぼ隙間なく作品で埋め尽くされています。それもそのはず、
この50年の間に購入または寄贈されてきた収蔵品が惜しみなく展示されているのです!ですので、とても斬新な組み合わせが隣り合っていることもあります。私がまず驚いたのは、ルオーの「アルルカン」(道化師)の横に東山魁夷の「凍池」が並んでいたこと。そして、次に待ち受けていたのは浮世絵群。あまり美術に詳しくないのですが、何となくこれまでに観た展覧会とひと味ちがうゾ、ということだけはわかります。しかし、これこそが本展覧会の面白さなのです。通常であれば、フランス印象派、とかアメリカンPOPアート(例えがこの位しか出てきません)などジャンル分けされたものが整然と並んでいるところ、名作がひしめき合っている
ザワザワ感を楽しむことができます。言葉の洪水、というのはよく聞きますが、
美術作品にも洪水があると身をもって知りました。作品群も戦時色の濃いものも
あれば、宗教画のようなものがあったり、人物画あり抽象画あり、写真に版画に
オブジェにインスタレーションと多岐にわたっています。

ジュリアン・シュナーベル「何と耀かしき嘴(先端)」   ジャン=ミシュエル・バスキア「消防士」

絵画中心の第一会場を後にし第二会場へ移ると、ここはカラフルで大ぶりな作品が並びます。順路はありますが回遊型になっているので、観る角度によって作品群の見え方で遊ぶことができて面白かったです。入り口を少し入ると最奥に展示されたヴィヴィッドなピンクの油彩「逃げ水」(加納光於)までの連なりが目を惹きました。珍しいところでは、映画『潜水服は蝶の夢を見る』でカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞したジュリアン・シュナーベルの「何と耀かしき嘴」が。『潜水服〜』以前にバスキアの伝記映画を制作しているだけあって、隣にはバスキアの作品が飾られていました。他には人気の草間彌生作品もあり、2階には50周年記念の三沢厚彦氏の木彫刻「ANIMALS」の獅子像がどどーんと建って(座って)いましたよ。

加納光於「逃げ水」              画像はすべて↑北九州市立美術館コレクション選より

ここで一旦ランチ休憩。併設されたカフェのメニューにも展覧会にちなんだものがあり、小高い丘に建てられた立地を活かし採光を大きく採った一面の窓からの眺望がみごとでした。一人なら断然カウンター席がお薦め。そして、3階へ。こちらでは目玉であるルノアール、モネのほかインスタレーションや写真、映像、もはや小さな建造物と呼びたいような作品も観ることができました。作家でありキュレーターでもある原田マハさんものちに来館されたそう。芸術の秋、満喫の1日でした。

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