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📕『国境』 黒川博行さん
ヤクザと一般民間人(と言ってもスレスレの商売をしている)が共通の敵を追って、北朝鮮を舞台に決死の追跡劇を繰り広げる。
途中に差し挟まれる現地の言葉といい、並大抵の取材では書けなかっただろうと想像しながら一気に読んだ。
参考文献の欄を見ると、やはりものすごい数の資料が並んでいた。
内容から言って映画化はおそらく無理だろうと思われるが、事実を絡めながら展開する物語は各人物像にさらなるリアリティを与え、非常に興味深い読み物になっている。
本作は『疫病神』の続編に当たるのだが、知らずに読んでも充分楽しめた。前作を示唆するくだりもチラホラ見られるが、ネタバレやうちわウケにならない程度に納まっている。
作者は実は出身は四国らしいが関西の文化に浸かって生活している。
生活者が繰り出す言葉は美しい。
東京弁で小説を書いたこともあったらしいが、ことごとく編集者に手直しされたそうだ。
小説の内容はもちろんだが、会話の妙味が楽しめるのも大きな魅力である。
(2004.11)
⭐️追記:その後、疫病神シリーズ『破門』は2017年に佐々木蔵之介、横山裕の
ダブル主演で映画化されました。