【エッセイ】君に渡せなかった手紙。それは夢みるためのラブレター。
2021/2/19
忙しい日々を送る中で気がついたら、君の誕生日の日付を忘れた。5月の何日だったっけ。付き合った記念日の日付さえも忘れてしまった。8月だったと思うんだけどいつだっただろう。
いろいろなことが僕の中から消え去ってしまう。君と付き合っていた時はあんなに大切にしていた物事がどんどん僕の中から消えていく。
いつか君との思い出さえも消えてしまうのかと思うと、とても淋しくなる。どうせなら思い出と一緒に君への未練も消えてしまえばいいのに。
君との写真も、君からもらった手紙やプレゼントも全部燃えるゴミの袋に入れた。手元にあったら君のことをどうしても思い出してしまうから。
クリスマスに君に渡すはずだったプレゼントは部屋の隅っこでどこにも行けずに泣いている。まだ現実を飲み込めなくて泣けない僕の代わりに泣いてくれているのかもしれない。
こんな内容の手紙を10年前に書いた記憶がある。当時の彼女に振られて、行き先のない気持ちを紙とペンにぶつけて書いた。
もちろんこんな情けない手紙を渡せるはずもなく、書いた後にはすぐにビリビリに破いて、元彼女からもらった手紙やプレゼントと一緒に燃えるゴミの袋に入れた。その燃えるゴミの袋は結局すぐには出せずにしばらく部屋の片隅に置いておくことになった。
10年経った今でも彼女との思い出のいくつかはちゃんと消えずに僕の中に残っている。未練はもうないけれど、大切な思い出だけはしっかりと残ってくれたことがたまに嬉しくなる。僕の青春を彩った大切な思い出だから。
その思い出を心の引き出しから大事そうに取り出してたまに思い出してみる。その度に少しだけ心が痛んで感傷的になってしまう。
もう別々の道を歩んでいる人のことを僕は想う。きっと幸せであってほしい。そう思えるようになるくらいの時間が過ぎた。
その分、僕も幸せになってみせる。そう思うと僕は頑張れる。だから僕は今日も明日も生き続ける。幸せになるために。
なぜこんなことを今更思い出したのかというと、今日燃えるゴミの日だったから。そしてゴミ袋を出し忘れてしまったから。今、生ゴミが入った臭いゴミ袋を前に呆然としながら、現実逃避として過去の甘い青春の日々を思い出している。
それではみなさん、良い一日を。