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選手に耳を傾けてもらえないコーチが行なっている5つのNG行動
チームを指導する際に一番避けたい状況の1つに「選手から話を聞いてもらえない」があります。いわゆる信頼関係が築けていないということですが、皆さんも1度はコーチキャリアの中で経験のあることではないでしょうか?
せっかく時間もかけて準備したミーティングの内容やトレーニングの説明を聞いてもらえないとなると結構辛いですよね。
僕自身もバルセロナの現場で初めて監督としてチームを率いたシーズン、そもそもの言葉の壁や外国人というアドバンテージなどが原因で全くスペイン人の選手から話を聞いてもらえないような時期があり辛かったのを覚えています。
ではなぜこのような現象が起きてしまうのか?
間違いなく、コーチとしての選手/チームマネジメント力の欠如に原因があるわけですが、僕自身がこの10年の間、スペインの異なった育成年代カテゴリーを見てきた中でも、このような状況に陥ってしまうサッカーコーチが共通して行なっているNG行動がいくつかありました。
ということで今回のテーマは「選手に耳を傾けてもらえないコーチが行なっている5つのNG行動」ということで順番に紹介していきます。(特に最後の5つ目が直接的に影響していることが多いです)
皆さんが気づかないうちに行なっている可能性のある行動ばかりなので、指導している年代、性別、国籍に問わずぜひ最後までご覧ください。
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①話すぎている
まず1つ目の選手に耳を傾けてもらえない要因となっているのがそもそもで話すぎているという点です。
これに関してはよく聞くポイントではありますが、例えば自分が話している様子を撮ったビデオを後々振り返ると「やべっ、めっちゃ話してるやん」と自分もドン引きしてしまうような量を話してしまっていることは多いです。
「とにかく何か話さないと」のマインドから何の意図もなく話を初めてしまうことは試合のハーフタイムでもよく見られる光景です。
【参考動画】指導者のハーフタイム5つのNG行動を解説!
とは言ってもこの「話しすぎ」が選手の集中力が2分で切れてしまうことを引き起こしていることなんて冷静に考えればわかることなのですが、実際の現場では熱も入ってしまいなかなかコントロールすることができないのが指導者の我々にとっては難しいところです。
まずは第一ステップに「時には少なくシンプルな情報の方が豊かな情報になる」という前提を頭で理解することからスタートしてみてください。
②常にネガティブな言葉使いをする(文句や暴言も含む)
「何回ミスするの?」「ボール失ってばっかり」「 それは違うって」
日本の育成現場でもよく耳にするフレーズばかりだと思います。大丈夫です、スペインでも同じです。これらネガティブな発言というのは、どのチームにもいるようなチームで一番意識が高くリーダーシップのあるような選手のモチベーションすらも消してしまう力があるわけです。
時には厳しく叱る場面も必要ですが、常にこのようなネガティブな声かけを受け続けてしまう選手の脳は疲れてしまい、聞く姿勢が崩れてしまうのは当たり前です。
我々コーチは、しっかりとその場その場で選手が犯したエラーの種類を分析し見定めることで、彼らにかける言葉をチョイスする必要があります。
【参考動画】【怒鳴るだけのコーチはもう卒業...】選手が犯す3つのミスタイプを徹底解説
「何回ミスするの?」→「ミスしてもOKだから次はベストな判断をしていこう」
「ボール失ってばっかり」→「ちょっとずつ良くなってるから次こそは大丈夫」
「それは違うってば」→「こんなオプションもあったと思うけどどうだろう?」
言葉を少しでもポジティブに変換できれば、彼らの頭もよりシャープになり、聞く姿勢が整うはずです。
③WHY(意図)を伝えないで話す
「このシーンではこうやってプレーしなさい」
コーチがまるで神様でもあるかのような話し方をするコーチはスペインの現場でも存在します。このような伝え方をするコーチが率いるチームほど、プレーが全く機能していないことが多いです。
「このシーンでは運ぶドリブルよりパスを優先してくれ。なぜなら運んでいると相手のスライドが間に合って前進を難しくしてしまうから」
行う各アクションの背景にある意図(why)を理解した上でプレーする選手は、理解していない選手に比べても自信とモチベーション高くプレーします。
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一方的に話を進めても、選手はそれを聞いてはいても脳の深くまで聴いてはいません。聞くと聴くは全く異なるもので、「聴く」という姿勢には相手への敬意があり信頼関係を築こうという意思があります。ここを勝ち取ることができればもうあなたの勝利です。
④選手(チーム)に耳を傾けようとしない
「リーダーになる」ということを勘違いしているコーチが多いように思います。
「俺の発言が絶対だ」と完全独裁主義のリーダーが成り立つ組織もあると思ってますが、サッカーの世界では主役は常に選手にあるという前提に、積極的に彼らに耳を傾けなければいけません。
彼ら一人一人が今の状況をどのように感じているのか?これさえも聞かずに彼らとの信頼関係が生まれるわけがありません。
トップの世界とはいえ、アンチェロッティの考え方はマネジメント面において非常に参考になります⤵︎
トッププレーヤーへの管理に対して「彼らの意見を尊重する」重要性を話すアンチェロッティ。指導者と選手の関係性。育成年代にも十分に還元できること。 pic.twitter.com/DVICQcRePw
— Jun Takada / 高田 純 (@ney10jun) August 5, 2024
アンチェロッティの選手に対する考え方、指導者としての本音がマスタークラス過ぎるので是非皆さん見てください。 pic.twitter.com/K7l3zPijqY
— Jun Takada / 高田 純 (@ney10jun) December 25, 2023
この傾聴力に関しては、僕がスペイン人指導者から学んだ1つ大きな点です。これはスペイン人の国民性もありますが、選手との会話を本当に重視し意見を受け入れます。時には練習後に1・2時間もグランドに残り彼らと会話をする時間を設けます。
またこれは③とも被りますが、一方的にコーチから話をしてしまうと聞き手である彼らの思考は停止し、考えることをやめてしまいます。会話の中で意図的に彼らに対して質問を導入すること。彼らの脳を活性化させるためにも非常に重要です。
⑤全選手に同じ接し方をする
最後に個人的に一番指導者として陥りやすい罠だと思っているポイントを話して終わります。
あなたが指導するチームの全ての選手に対して同じ話し方や接し方、アプローチの方法を行なっていませんか?という点です。
よく 「日本人に対してはこの方法だ」「スペイン人にはこれが正解だ」と聞くことがありますがこれでもまだ主語が大きすぎます。日本人という枠の中にもたくさんのタイプの人間が存在し、それはスペイン人の中でも同様です。
もう少し異なった視点で見てみても、例えば主力として試合に出る選手への接し方とサブが続いている選手への接し方は異なりますし、ジョークが通用する選手もいれば通用しない選手もいます。それはポジション別に見ても、GKへ行うマネジメントとFWに対するマネジメントでは異なることが多いです。
僕がスペインで指導者としての2シーズン目に監督として率いたU-12のチームには、ブラジル人・トルコ人・アゼルバイジャン人・インド人・ペルー人・スペイン人がプレーしていて、とてつもないインターナショナルなチームを率いた経験があります。(監督である自分は日本人、セカンドコーチはエクアドル人だったので笑えるくらいです)
その時の経験に、ブラジル人に与えるチームのプレーモデルの量と、スペイン人に与える量は調整が必要だったことがあります。
自由性の高いブラジル人に対して、適応力の高いスペイン人に与えるプレーモデルと同量を与えた時、彼らが持つ創造性に過度な制限をかけていることに気づきました。日本の現場では中々ここまで多国籍なチームを育成年代において率いることは少ないと思いますが、これはその選手の性格をとっても同様なことが言えます。
スペイン人指導者を見ていても、例えば多彩なフェイントを使って相手を抜くドリブルをトライする南米系の選手やモロッコ系統の選手に対して、そのようなプレーを全面的に禁止させるような指導者がいます。これは、選手(人間)を理解せず、適応ができていない悪い例だと思っています。
先ほどのアンチェロッティのインタビューでもあったように、我々指導者は彼らを「選手」の前に「人」として知る必要があります。
最後に少し昔の動画にはなりますが、マネジメントに関する重要なポイントを語るグアルディオラのインタビュー動画を共有して終わります⤵︎
グアルディオラが話す「マネジメント」の鍵となる「直感」の重要性。 pic.twitter.com/YtTzqY2HQ8
— Jun Takada / 高田 純 (@ney10jun) July 27, 2020
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