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新人アーティストがフェス出演を叶える戦略


はじめに

こんにちは!来年20周年を迎える渋谷発の音楽フェス『SYNCHRONICITY』を主催している麻生潤です。今回はVoicyで質問をいただいたので、それにお答えする形で放送したのですが、反響も多くいただきましたので、お話し忘れたことを追記してnoteでも公開します!

Voicyから追記したのでちょっと長くなりましたが、自分たちでマネジメントをやっている方も多いと思うのでなるべく分かりやすく書きました。また「フェス出演を叶える」とありますが、フェス出演への戦略や裏話だけではなく、長期目線のアーティスト活動としても大切だと思う内容にしています。新人アーティストは最初のひと押しがとっても大切なので、少しでも皆さんのお役に立てたら嬉しいです!

たくさんの若手アーティストに知ってほしい内容です。読んでみていいなって思ったら、シェアやフォローもよろしくお願いします!

ということで、まずはその質問をご紹介しますね。

「駆け出しのバンドが、これからシンクロニシティのようなフェスに呼んでもらえるバンドになりたい場合に、どんな活動目標を立てるのがいいでしょうか?最低限のフォロワー数、集客力など、現実的な基準がありましたらそちらもお願いいたします🙇」

という内容でいただきました!これとても素敵な質問ですよね。フェス主催者の視点から、こちらにお答えすることで、少しでも新人アーティストのサポートにもつながれば嬉しいなと思ってVoicyでお話しています。noteと合わせて聴いてみて下さい。

新人アーティストの基準とブッキングの現状

まずですね、どういうアーティストが駆け出しのアーティストかっていう基準を決めてからお話しした方が良いかなと思うんですけど、少なくとも対バンイベントに呼ばれたり自主企画などを行ったりできるという実力以上を基準にしてお話を進めていこうと思います。

で、質問は「シンクロニシティのようなフェスに呼んでもらえるために」というところなので、新人アーティストのブッキングの現状を赤裸々にお話しておくと、こちらからのオファーももちろんありますが、新人アーティストの逆オファー(事務所やレーベル、アーティストサイドからのオファー)も毎年シンクロニシティにはめちゃくちゃ来ます。ということは、もちろん他のフェスにも来ているでしょう。2024年のシンクロニシティでも大体60〜70アーティストくらいは出演したいという連絡が来てるんじゃないかなと思います(もちろんオーディションは除く)。なので、こちらからオファーするパターン、事務所やレーベル、アーティスト本人から出演したいという逆オファーをもらって出演に至るパターンの2つあります。なので、新人アーティストにとっては、なかなかハードルが高いというか、敵は多いぞ!ということも認識しておくと良いと思います。

それでは、やはりオーディションしか方法はないのかって思ってしまいますが、「フェス出演を叶える」方法はもちろんそれだけではありません。その確率をどうやって上げていくかということ、長期目線で必要なセルフマネジメントの部分も含めて具体的にお話していきたいと思います。

具体的にどうするか?

ライブの経験値を上げよう

まず1つ目は当たり前なんですけど、楽曲、特にライブのクオリティを上げていくことが大切です。これね、当たり前のことをなぜ最初に言うかというと、それでジャッジが決まってしまうからなんです。フェスっていうのはリアルな現場なので、基本はライブで " YES or NO " って決まってしまう。それって他で努力してもどうにも抗えないことなので、まず最初にお伝えしておきたいと思います。

それじゃ、ライブのクオリティを上げるにはどうしたら良いかって言うと、ライブはとにかく場数なので、数をこなしてほしいと思います。楽曲が良いのはもちろんなんだけど、楽曲とライブってまたちょっと違う。特にライブの経験値を増やして、改善を重ね、クオリティを上げていってほしいと思います。もちろん、なんだって出ればいいってわけじゃないので、そこは自分たちで判断してもらえたらと思います。

今はYouTubeでライブ映像が観れたりするので、そこでライブのクオリティもある程度分かります。主催者は、特に新人アーティストのオファーの際に、リアルはもちろん、ライブ映像も細かくチェックしていると思います。

リアルなイベントやライブハウスとタッチポイントを増やそう

次は、ライブにも関わってくることもあるんだけど、露出やタッチポイントを増やそうということです。呼んでもらうには知ってもらわないといけないですよね。そのためにはたくさんの人、特にフェス主催者やブッキングチーム、その回りにいるイベントの主催者やライブハウスの人に知ってもらう努力をすることが大切です。

それではたくさんの人に知ってもらうには、どうすればどうすればいいのか?

僕は年間に200〜300本くらいライブを観てます。自分ほどライブを観てるフェスの主催者も珍しいとは思いますが、僕はとにかくライブが好きだということ、シンクロニシティの来場者に本当にいい音楽を知ってもらいたいということ、アーティストと直接会って交流することが大切だと思ってるからです。

ただ、これでもかなり絞って観に行ってるんです。身近なアーティストや出演いただいたアーティストのライブは欠かせないので、新人アーティストを観に行く機会は特に限られます。これは僕だけではなくて、色んなブッカー、関係者の人も同様だと思います。それでは、どうやって絞っているのか?これが分かると見てもらえる可能性が増えますよね。

僕らの情報源は色々あります。僕は自分からどんどん新しい音楽を見つけに行くタイプなんですけど、僕のやり方を含めていくつか紹介しましょう。

一つは、出演いただいているアーティストの身近なところから掘っていきます。例えば、浦上想起くんだったら、松木美定くん、碧海祐人くん、高井息吹さんとかね。そうやってどんどん掘り下げて、気になったアーティストは音源を聴きライブに行きます。

もう一つは、関係者からの情報です。センスのあるイベントの主催者やイベンターだったり、ライブハウスの企画をやってるブッカーだったり、アーティストの企画だったり。プロダクションやレーベルからももちろんありますが、もっとも情報が早いリアルなライブの現場からがメインです。なので、まずは身近で自分がセンスがあると思うイベントの主催者に売り込んでいくこともおすすめです。これは結構現実的にできるし、そこから広がっていくこともあるので、ステップとしてフェス出演を目指す以外のメリットもあるんじゃないかなって思います。もちろん友人のアーティスト同士でイベントを組むのも良いんだけど、それだと自分たちにとってはちょっと意外性が足りない。知ってるアーティスト同士になってることがよくあるんだよね。なので、もう少し客観性を持っている人に売り込んでいくのはおすすめです。

ちなみに、シンクロニシティのブッキングのひとりは、もとライブハウスのブッカーです。とってもセンスを感じたし、彼の企画するイベントにもよく行ってました。アーティストに愛があって、想像力のあるコミュニケーションもしっかりできるので加わってもらいました。

ここで僕が新人アーティストと出会うのに注目しているイベントとよく行くライブハウスもいくつかお伝えしておきます。

まずは、いつも一緒にご一緒いただいている「New Action!」というイベントで、よく新宿のMARZでイベントを行っています。彼らのセンスに引かれて、シンクロニシティでコラボステージをやろうってお誘いしてもう10年くらい一緒にやってもらってます。彼らは新人アーティストをいち早くピックアップしてイベントを行っているので、シンクロニシティだったら「New Action!」にアプローチするのも全然アリだと思います!

もうひとつは、アーティストとのコラボTシャツをつくっているBandmerch(バンドマーチ)が主催するイベントです。よく下北沢でイベントを行っていて、新しいアーティストをキャッチするのに長けているので、注目しています。

あとは、exPoP!!!!!もいつも注目しています。あまり行けていないんだけど、いつもフレッシュなアーティストが出ていますよね。こういうところには、たくさんの関係者も集まっていると思います。通常のブッキングライブに加えて、そういう関係者の集まる場所に出演することも意識すると良いと思います。

ライブハウスでいうと、渋谷のTOKIO TOKYOは今もっとも若手アーティストが出演するトレンドの場所のひとつだと思います。アーティスト想いのライブハウスで、自分で企画を作って持っていくのもいいし、自分で連絡を取ってアピールするのもいいと思います。オーナーも若いし若手アーティストと近い目線でシーンを作っていると思います。個人的にも信頼しているライブハウスです。

下北沢のBASEMENTBARにもよく行きます。僕は個人的にお付き合いとかはないんですけど、ここはよく良いイベントやってますよね。キャパも新人アーティストにとってちょうどいいというのもあるんだと思います。渋谷はちょっとキャパも上がっちゃうしね。

こういうところかな。イベントやライブハウスはシンクロニシティの例ですが、一番は信頼できる場所を探すことです。声をかけてもらうこともあるだろうけど、ぜひ積極的に自分からもアプローチしてみて下さい。

ちなみに、主催者にもよると思うけど、インディフェスにはSNSなどを通して直接関係者にアピールするというのもアリだと思います。僕はSNSで気になったアーティストを紹介しているというのもあり、結構な頻度でアーティストからもDMをいただきます。DMは挨拶程度になることが多いけど、連絡いただいたらサブスクで必ずチェックしているし、気になったアーティストは周りに紹介したりシンクロニシティのブッキングリストに入れたりしてます。また、現場で直接挨拶できるのがベストだと思うので、ライブハウスとかで見かけたら気軽に声もかけて下さい。

オーディションに応募しよう!

具体的な方法として、オーディションもめちゃくちゃオススメです。今や様々なフェスでオーディションが行われています。出演すれば、フェス出演だけでなく、プロダクションやレーベルとの契約につながることもあります。実際シンクロニシティでもオーディションから契約という例もあります。たとえ出演に至らなくても、その他のフェス主催者はもちろん、プロダクション、レコード会社など想像以上に色んな人が注目していて、思わぬところからチャンスが訪れることがあります。露出するというのは、それだけ大きな意味があるということです。

ちなみに、シンクロニシティでも毎年オーディションを行っていて、たくさんの応募が来るんですけど、僕は応募いただいた音源はすべて聴いてます。そこから良いなって思ったアーティストをSNSやプレイリストで紹介したり、ライブに行ったりもしてます。

オーディションにはチャンスが溢れていると思うので、特に自分たちの音楽性にフィットするフェスのオーディションには、ぜひチャレンジしてほしいと思います。

ここまで、ライブの経験値を上げよう、リアルなイベントやライブハウスとタッチポイントを増やそう、オーディションに応募しよう、ということでお話してきました。

自分たちの成長を長期視点で考える

最後に、フェスへの出演はもちろん、新人アーティストにとって大切な考え方、する長期的なセルフマネジメントや僕らが考えていることを最後にお話しておこうと思います。特にセルフマネジメントは、今後規模が大きくなっても必要なことだと思います。

SNSで露出を増やそう

まずSNSについてなんですけど、気になったアーティストのSNSってね、ブッキングする人は必ずチェックします。なので、しっかりSNSは取り組んだ方がいいです。新人、駆け出しのアーティストはまだフォロワーも少ないと思うけれど、実はですね、これ僕だけかもしれないけど、もっとも大切なのはフォロワー数ではないです、インプレッション数でもないです。エンゲージメント数です。今見てるアーティストがどれだけのお客さんの、ファンの心を動かしているか、いいねやリポスト、シェアはもちろん、検索までして話題性などからチェックします。フォロワーは買えるし、インプレッションは運もあるしある程度操作できるものなので、僕はあんまり信用してないんです。もちろんフォロワーやインプレッションも見ます。ただ、もっとも大切なのはエンゲージメント。長期視点で見ても大切なことなので、これは覚えておいてほしいです。

あとSNSについて、これはアドバイスなんですけど、しっかり露出を高めてファンとのタッチポイントを積極的に作っていくことをおすすめします。ファンはいつも好きなアーティストの状況を知りたいよね。スタジオの風景、ファンへのメッセージ、近況報告、ちょっとしたことでもいいので、告知だけでなくぜひSNSを使ってしっかりコミュニケーションをしていってほしいです。これね、経験として実感してるんだけど、するのとしないのとでは全然違います。ライブに足を運んでくれるお客さんも確実に増えます。そうやってアツいファンをしっかりとつくっていって下さい。

また、そうしてSNSで露出を高めていくことで、フォロワーやファンだけではなくて、実際のフェスの主催者、ブッカー、関係者の目にも触れやすくなります。今のSNSはアルゴリズム的にフォロワーだけではなくて、おすすめとしてフォロワー以外にも拡散していきます。ぜひそれを理解して、チャレンジしてってほしいなって思います。

SNSに動画をアップしよう

音源を作ったら、SNSに必ず動画をアップしてほしいです。それはなぜかと言うと、それだけで音源を聞いてもらえる可能性が上がるからです。MVでなくリリックビデオでもいいです。ただ、画像と間違えてしまうので、できればアイキャッチ的には少しでも動く映像がいいです。画像と動画では、今のSNSのアルゴリズム的に伸びも違います。その少しの差が、新しいファンはもちろん、オーガナイザーやブッカー、関係者の目にも届くきっかけになります。

音楽配信をしよう

ここもVoicyで話し忘れちゃったんだけど、本気で音楽に取り組みたいなら、サブスクは必ず活用した方がいいです。今や個人でも配信はできる時代です。フェス主催者が音楽を聴いたりするのはもちろん、プロダクションやレーベルも新人発掘の場所としてサブスクを使ったりしてます。カセットやレコードはもちろん、CDすら後でもいいので、ぜひとも配信は音源発信の最初に取り組んでいただきたいです。

また、サブスクでプロフィールやSNSへのリンクがないアーティストが結構います。プロフィールの記載は自己紹介なので言うまでもなく必要ですが、コンタクトを取りたかったり、SNSを観たかったりしてもアーティスト名からは追えなかったり、時間がないとSNSを調べるのも後回しになって忘れてしまうこともあります。サブスクの情報は必ず全て埋めてコンタクトしやすい環境を作っておいて下さい。

主催者や関係者がイメージしているキャパ感

これは参考ということになるんだけど、質問にもあった「集客力、主催者がイメージしているキャパ感」ということもお話しておこうと思います。

場所場所によって人気のあるアーティスト傾向も違うので、東京のライブハウス基準で話しますが、僕らが意識しているキャパの基準はいくつかあります。ただ、新人、駆け出しのアーティストで言うと規模がちょっと大きいと思うので、ここは目指すべきいくつかのポイント(場所)として意識しておいてもらいたいなと思います。

まずは、300〜400キャパのWWW。ここから多くのフェス主催者や関係者はしっかり音楽が伝わっているな、ファンがついてきてるなって認識します。その次は、WWWX〜クラブクアトロ〜リキッドルームの600〜800キャパ。ここまで行くとしっかりシーンにアプローチできていると認識します。ここからは徐々にドライブがかかっている状況だと思うけれど、1300〜1500キャパのO-EAST、Zepp Shinjuku、2500キャパのZepp DiverCityなどのZepp系列と続きます。段階を経てということになりますが、イメージや意識を持って活動していくことは、今後に必ず繋がっていくと思います。

ざっと話してきましたが、こんなところでしょうか?フェスにも様々な規模があるので、アプローチしやすいフェスしにくいフェスがあります。その最初の一歩を踏み出すとき、今回の内容がお役に立てたら嬉しいです。書き忘れたことがあったら追記していくので、ぜひ時々でも振り返りながら活動に取り組んでください。

皆さんの活躍をいつも心から応援してます!

まとめ

ということで、今日は「新人アーティストがフェス出演を叶える戦略」ということで、いただいた質問にお答えする形でご紹介してみました!コメントや質問などありましたら、Voicyでもnoteにでもどんどん書き込んでって下さい。お役に立てそうな回答は、今回のようにVoicyやnoteでも取り上げていきます!

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