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片付けはサイコセラピーの1つ #9

「片付け」で世界的に知られる「こんまり」さんの会社で働いている友人と昨日MTGをした。
Netflixでこんまりさんのドキュメンタリーが賞を取るほど人気らしい。

おすすめされたので早速見たのだが、これがめちゃくちゃ良かった。

年末ということもあり、大掃除したい気持ちがあるものの気が進まなかったのが、一気に掃除したい欲が強くなった。

そして、何より片付けというものが、人の心を癒やし自分の望む生き方を実践していく様子から、1つのサイコセラピーなんだと感じた。

片付けは単に捨てるだけではない。
しかし捨てるところにポイントがあり、
取捨選択の過程で、自分との対話が起こり、
何かを拠り所に選択していくことで新しい自分になっていく様子が見られる。

今日は、片付けをする過程で起こっている変化。
こんまりさんの関わり方の中で、対人支援にも活きる重要な点。

こんまりさんのことはあまり存じ上げていないのですが、
このあたり、ドキュメンタリーを通じて感じたことを残しておきたい。

拝見した番組 
・社会人らしい空間づくり
・哀しみからときめきへ

1.人の心に土足であがらない

まずは、家に上がる際、こんまりさんのすごく礼儀正しさを感じられる。
勝手に進むでなく、必ず「次のお部屋を紹介していただけますか?」といって連れていってもらう。

それもそのはず。
家の中を見せるのは、自分の知られたくないプライベートなことも覗かれてしまう繊細な空間。

こんまりさんは、見せてもらったお部屋や押し入れの中にも、
きちんといいリアクションで反応する。

何気ないが、これが重要だよなとしみじみ思う。

そして、極めつけは、片付けの前に、家にご挨拶をする儀式がある。
家の住人にご挨拶するのはわかるが、家自体にご挨拶をするなんて珍しく
クライアントも不思議な表情。
でも、悪い気持ちはしない。むしろ家そのもの、空間そのものに
敬意を払っていることに、礼儀正しさを感じられる。

こんまりさんは、こんなことを言っていた。
「片付けの過程で、ひとりではなく、家とものがすべてあなたを応援してくれます。」

こんまりさんは、人だけでなく、家の中にあるもの自体や家そのものにも生命を感じて、尊重しているからこそ、この儀式が生まれているのだろう。

ことコーチングのセッションになると、
家の中を上がるほど、わかりやすいものではない。
こと仲の良い友人になれば、なおさら丁寧にできているだろうか。

対人支援に関わるものであれば、一度はラポール形成について学び、
ペーシングから入るなど、色んなことを意識はされていると思う。

ただ、それだけでなく、
純粋に自分自身がどれだけ「礼儀正しい」人間なのかが大事だと思う。

単にクライアントだけ、セッションだけでなく、
どこまでものごとを尊重できているのか。

カフェでセッションする際は、かばんの置き方、店員とのやりとり、
自分の日頃の佇まいすべてが礼儀正しさとして、にじみ出るもの。

私もまだまだできていない部分が多過ぎて、考えさせられた。

相手の心の中に、土足であがっていないだろうか。

まずはこの問いを自分に向けていたい。


2.理想の未来を妄想する

そして、鉄板ですが、理想の未来をイメージする。
こんまりさんもこの時間を作ってそうだった。

私が見たドキュメンタリーでも、
このあたりのストーリーが泣ける。。。

フランクは両親が家に来るから、それまでにきれいにしたい。
自分は医学部に行かなかったし、ゲイでもある。
親が一生懸命育てた子が、家の中をみることで、
立派な息子を育てたと安心してもらいたい。

なんて素晴らしいのだろうか。
奇しくも、私もちょうど土曜日に両親がくる。
なんとしてでも掃除したい。

マーギーに関しては、9ヶ月前に旦那さんを病気でなくし、
家の中には彼の思い出がいっぱい。
片付けをして第二の人生を歩みたい。

私はアドラー心理学も大事にしているが、
この目的や理想へのストーリーがものすごいパワーをつくる。

このとき、アドラーでいう共同体感覚もポイントで、
自分の幸せだけでなく、
自分の周りの人も幸せか、その周りの人の周りにも幸せか。
広げて考えていくことが重要だと思う。

これは人だけではない。
こんまりさんは、儀式の際、フランクにも、家と対話するように投げかけていた。
家自体が喜んでいるのか、望んでいるのか。

そんなことを感じていくのも、理想の未来をイメージするには大切にしたい。


3.死と再生のプロセス

フランクの言葉で印象的だったことがある。
「この家は、私とマットの関係、私と両親の関係、私と世の中の関係の象徴なんだ」

彼らがものを捨てていく過程を見ていると、
家の中は、自分を構成しているそのものなんだとしみじみ感じる。

よく本は、自分を構成しているというが、本だけじゃない。
書類も、メモに感情が入っている。ものにも思い出が入っている。

それを手放すということは辛いものがある。
しかし、手放した先に、新しい未来、理想がある。

インテグラル理論の中で、意識の変容は「死と再生」と表現されるが、まさに片付けというのは、そのプロセスと捉えられる。

死というのは大袈裟かもしれないが、何かを手放すことの怖さがある。
それにばかり目がいくとなかなか手放すことができない。

しかし、手放すからこそ、生まれるものがあって、
生まれるものに目がいくからこそ、手放すことができるのだと思います。
その意味でも、未来を描くというのは、生まれるものに目を向けられる点でパワフルなのだと思う。

お三方とも、片付けが終わったの晴れやかの表情や発言は、
生まれ変わったような感じがした。

このプロセスを通じて、人間的な発達が起きているように思う。


4.一番を扱うことでグラデーションをつくる。

ここからは、より対人支援の観点で、
クライアントが手放していくためのこんまりさんの関わり方をもう少し残していきたいと思う。

手放すには、何が自分にとって大切なのかを知らなければ手放すことができない。

これをこんまりさんは、トキメキと呼んでいるが、実際のところ難しい。

マットが、トキメキがわからず、本を捨てれない時に、こんまりさんは、「絶対手放さないものは?」ときいて、この本ですと答えながら理由を話すマット。
「その感情がトキメキなんです」とこんまりさんはいう。

コーチングのセッションにおいても、この一番を扱うのはすごく重要に思っている。

充実体験から何が一番あなたを魅力させたのか。
複数あげても、その中で一番は何なのか。その奥にあるのは何なのか。

これは何もトキメキだけではない。
不安や怖れもそうである。

例えば、何もかもがしんどいというクライアントがいたとする。
そのときでも、「何が一番しんどいんだろう?」と聞いて探索する。

ものごとは複雑であり、複雑さを理解するというのは、
私の中では1つの捉え方として、グラデーションを描くイメージを持っている。

どこからが白か黒という区切りが付けられるほどシンプルなものは少ない。

複雑なものを複雑なまま捉えていくには、
一番濃い(あるいは薄い)部分からあたることで、グラデーションは作りやすい。

一番を扱うからこそ、グラーデーションが生まれやすい。


5.感謝を伝えて居場所を与える

マーギーが服を捨てる際に、こんまりさんは、
「「ありがとう」ってぎゅっーと抱きしめてあげて」
と教えていた。

保持するか捨てるかの葛藤の際、
この感謝が気持ちよく手放すポイントだと感じました。

口に出して、抱きしめる動作をすることで、心とつながる部分もある。

私がクライアントに対して、葛藤解決をする際に、
ゲシュタルト療法のエンプティ・チェアという技法を用いる。

そこでは、葛藤→分離→対話→統合というプロセスを経るが、この対話から統合へは、葛藤するそれぞれを尊重することで、肯定的な意図(感謝の気持ちなど)に気付けて受容できるようになる。

服を捨てる際に、葛藤する者同士の対話はないが、抱きしめて「ありがとう」というのは、近いものがある。

この服を物理的には捨てるわけですが、失う感覚だけではなく、感謝の感覚が持てる。

特にこんまりさんが勧めているのかわかりませんが、
私がみたドキュメンタリーでは、2つともリサイクルショップへ持って行っている。また別の所で活躍してね!という気持ちになりやすい気がする。

本を整理するシーンでは、こんまりさんが
「本をコンコンと叩いて起こしてあげるんです。」と言い生きているものとして扱っていました。

人それぞれ受け取り方はあるだろうが、
実際捨てられないのは、単に損得感情だけじゃないものがあって、
あなたと繋がっている点で生命の一部なんだと思って接している。

そう扱うからこそ、1つ1つと向き合えるし、
捨てる際にも、感謝を伝えることで、
気持ちよく進めていけるのだと思う。

こうやって私も色んなものに眠っている肯定的な側面をみて、言動にしていきたい。そしてセッションの中でも同じように大事にしたい。

6.こんまりさんの関わり方全般を通じて

マーギーさんは子どもたちにこんな事を言ってました。
「ただ捨てるんじゃなくて、よく考えて捨てたい。
支えてほしいの。現実と向き合わないといけないから辛いの。」

こうやって言えたら素敵だな。

捨てる捨てないは自分で決めるしかない。
でも誰か伴走してくれるだけで向き合いやすくなる。

ロジャーズは、関係性の中で自分が自分になっていくと言うが、誰かがいてくれる存在があって本当に向き合えるものがあるんだと思う。

こんまりメソッドの詳細はわかっていませんが、あくまで伴走者。

毎回会うたびに、ハグをして、あれからどうだった?と関わる。
こういう関わりができるのは、対人支援者の理想のように思う。

衣類や本という、わりと捨てやすい(人によって違いますが)ものから始めることで、スモールサクセスを積んでもらう。

少しでも進んでいれば、
「落ち着いて取り組んでください。あなたはすでに、ときめきを判断することができます。何度も実行してますから。」
と勇気づけを行う。

「思い悩んだら深呼吸してみてください」
と時おりに必要なアドバイスも行う。

片付けは捨てるだけではないので、クライアントの中に起きている
・過去を引きづらず前に進みたい、捨てたい気持ち

・大事なものは残しておきたいという気持ち
との両方を大事にする言葉も伝えて、どちらも受容する。

何か良いことがあれば自分ごとのように、一緒に喜ぶ。

ここに書ききれないが、こういった細かいところに対人支援として通じる部分がたくさん感じられた。

私自身も、物を捨てることで、新しい自分と出会い直したいと思う。

2020年12月23日

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