さっぽろ #Portalgraph 体験会のお客さん集めと運営のお話
こんにちは、じゅんです。
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)というHoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。
7/2に、札幌でPortalgraph体験会というイベントを開催しました。
Portalgraphは、VIVEトラッカーと呼ばれる位置検出のデバイスと、3Dプロジェクターを組み合わせたシステムです。自分の頭の位置に対応した映像を右目用と左目用それぞれ作ってスクリーンに映すことで、トラッカー装着者にとってはあたかもそこにCG空間・モデルが居るかのように感じられてしまうようになっています。
おかげさまで、体験会は満席になり、アウトプットも大変たくさんして頂き
、かつ会場内では常に意見交換の輪が出来ていましたので、そこに至るまでの運営の裏側を私視点で残しておくことにします。
開催にあたってのポイントとして、
・参加者同士のコミュニケーションを自然に発生させる
・具体的アクションのアウトプットを引き出して、可視化する
・総体として、出展者が得をしたなと思ってくれる状態にする
を目標にしました。
当日にうまく行くまでに気を付けたことなどを中心にメモしていきます。イベントまとめは公開してありますので、具体的な中身についてはコチラを参考にしてください。
発端と経緯
東京に移ったじゅーいちさんが、遠征先を求めるROBAさん(Portalgraphの発明者)に札幌を勧めるRTをしたのがきっかけでお話はスタートしました。私とさってーさんでそれぞれリプライを付けてみて、最初に反応をもらったさってーさんが開催場所の都合を付けることができたので、7/2の開催が決まりました。
6/10にconnpassのイベントページが公開されて、一般向けの集客も始まりました。30分の体験時間に4人の体験者と決めてそれを数回繰り返すスタイルは関東の体験会などでよく採用されています。この方式で先に福岡・熊本方面の体験会を行う事になったようなので、札幌もそれを踏襲する形にしました。
ちょうど札幌周辺ではコロナウイルス感染者数が減る傾向にあった期間ですので、7月の夏の陽気で周囲の感染者数が増えてしまったとしても第六波の時のような大混乱にはなっていないだろうと当時判断しています。8月開催であれば開催できていなかったでしょうね。
会場・日程面のめどが付きましたので、あとは集客を中心とした肉付けの段階に移ります。現地運営の役割分担について、ROBAさん達の出展者ケアがさってーさん、来場者のケアを私中心でやる事が流れで決まりました。会場設計については完全にさってーさんにお任せで当日までノータッチですw
直接声掛け・バッファ枠の確保・小部屋のアイデア
冒頭でも書きましたが、今回のイベントでの目標は参加者同士のコミュニケーションを自然に発生させるです。
そのためにどんな状態が望ましいかという事を考えます。
・その場にいるであろう4人の参加者がそれぞれ似たような関連のテーマの開発・研究をやっている(近い関心軸を持っている、ともいう)。
・その場で体験した事を誰かに話したくなる。
・話す場がその場の近くにある。
の三条件が揃うとまあまあいいのかなと思います。これを満たすための方策が見出しの内容です。
DMでの直接声掛け
直近で、裸眼立体視デバイスに関する何らかのアウトプットをしている開発者が一番本件と相性の良い想定参加者としてお声がけさせてもらいました。LookingGlassとかELF-SR1のディスプレイが好きそうな人たちと言えばわかりやすそうです。
次に、ROBAさんが札幌に持ってきてくれるであろうコンテンツ作品の内容と関係の深そうな作品を持っている道内のクリエイター・研究者に声をかけました。藝大のデモを見ていた感じでは、水族館、VR180動画、フォトグラメトリ、天体の教育、音ゲー、バーチャルアシスタント、ビジュアルジョッキー的空間表現と一通りそろっている感じがしました。↑の領域で活躍されているクリエイターにそれぞれお声がけすることで、ROBAさんへのフィードバックの精度が高くなるように設計しました。
あとは、発信を通じて体験を共有する文化を持った人々を補強要因として考えました。Developer Relationsの職の人にもお声がけをしてきましたが、ちょっと近い領域の違う事をやっている某社コネクト支援チームのtomioさんが来てくれることになったので、あとはSNS発信したくなってくれるようにこちらでケアすればよいと目途が立ちました。#JMLT という謎のムーブメントをこちらでも取り入れてみる事にしました(雑)
肝心の手段についてはものすごく地味ながらも、本人への個別メールを一番使いました。相手から私にかつて相談されたことのある課題感などを再確認する文面+今回のPortalgraph体験会で解決しそうな内容という構成のものを、相手に応じて全部変えてやり取りしてたという感じです。もうお誘いというよりは説得に近いのかもしれませんが、ちゃんと目的がすり合わさった状態での来所なので「動員」とは違うと思います。
これは参加者自身の中にストーリーを事前に作っておいて直前キャンセル率を下げる目的でもあります。
研究者クラスタによる枠調整枠の確保と運用
実は当初、あまり参加者枠が初期に埋まらない事を想定していました。オフラインイベントを再開しているコミュニティ・組織があんまり多くなかったことと、イベント参加の優先順位付けの問題です(後回しにされがち)。あるいは、↑の方式で集客が進んだ時に、たとえばHCI系研究者が3,4か所の体験時間に散ってしまうなどの心配もありました(他のジャンルも同様)。そうすると、その場で行われる会話の内容が似たようなものになってしまい深まらない&参加者同士ではすれ違いになってしまいます。せっかくの機会なのにこの状況は勿体ないので、技術クラスタはなるべく近隣の時間帯にそれぞれ集中するように設計しようとしていました。
①募集期間中に希望時間帯のシャッフルイベントを行う
②運営の方でチマチマ入れ替えていく
③そもそも最初から時間帯関係ナシに一括で予約枠を募って後日振り分ける
などが考えられますが、イベント公開時点で枠が仕切られていたので、②の方針をとりました。
体験を上げる&ある種保険として、#NT札幌 湯村さんと小水内先生が本番当日の会場でお話しできるよう日程アレンジするためのチャットスペースを別途確保し、本番の外でもコミュニケーションできるチャンネルを作りました。
イベント全体で参加枠の調整をするためには、運営者自身の参加枠とかも動員する必要がありますが、その際に生じた歪みを吸収するバッファとしての役割も裏にはありました。結果的には補欠枠の処理に上手く機能した形にはなったので、事前チャットスペースの設置は今後も工夫して継続しそうな気がします。
雑談小部屋の発明
関心の近い人をそれぞれ集めるわけですから、話す場があると良さそうと考えますよね。感染防止策との両立が難しくて悩ましいわけなのですが、今回はコミュニケーションを増やす方向に決断して、短時間滞在用の小部屋をさってーさんにお願いしました。
湯村さんの待ち合わせ所の形から構想を始めたので、当初は受付脇に4名ほどの小部屋を作ってそこを私が常駐して来客の待機時間のお世話をするという形をイメージしていました。
本番当日に会場に行ってみると、ハンズオンなどで使わせていただいている広い空間を待合スペースとして開放して頂けていたので、そこに常駐していろいろな会話の場として使う事になりました。
事前キャンセルの問題・補欠枠の処理と告知など
これは後で書きます。なんか混み入って大変でした。
当日のオペレーションの仕掛け
現場運営のコミュニケーション担当として用意した以下のものをそれぞれ解説します。
・connpass登録者用名札
・ハッシュタグツイート投稿直結のQRコード
・怪しいマネキン
・牛乳とカップ
・機材持ち込み可能な雰囲気
名札
これは、来場者が受付に来た際にお渡しして、その人が会場にいる間に誰か識別できるようにするためのものです。お渡しの際に会話を膨らませることが出来れば体験の時の会話のフックも増えそうなので前日に急遽作ることにしました。名札ホルダも間に合わなかったので、固定はセロハンテープです(雑)。connpassページからの名札作成に関しては、@yoshiko_pg さんの「参加者の名は。」サイト(https://yoshiko-pg.github.io/your-name/)を使わせてもらいました。2年ぶりくらいでしたが今もちゃんと動いて良かった。
QRコード
スマホでQRコードを読み込むと、ツイッター投稿画面に飛ぶという仕掛けです。最近のオンラインイベントでは、講演開始前の冒頭とかでたまに表示されていますよね。あれを印刷して各所に置けるようにしました。
オンラインイベントと違って、スマホでハッシュタグツイートをしようとするととにかく文字入力の手間でめんどくさいんですよね。なので、つぶやきそうなイベントが起きそうなところに重点配置して、参加者からのツイートを呼び込もうとしていた試みです。
connpassの参加者さんの中で、twitterアカウントと連動させていない方が地方には割と多くて、connpassページだけからではすべての参加者の分布を知ることが出来ません。その事情を補う意味でも、発信の導線をコチラから用意しておいて後でまとめる事には意味があります。
怪しいマネキン
ネタバラシをすると2眼映像の移動撮像システム(人の代わりにPortalgraphを体験する仕掛け)なんですが、会場に搬入した段階で完成していなかったので、怪しげなマネキンが放置されている感じになりました。私が待合スペースで必死に組み立てていくという様子を色んな方が撮ってツイッターにあげてくださいました。もちろんQRコードのそばにありました。
牛乳とプラコップ
集客の段階でケアをしていたtomioさんご一行の始めたジョッキミルクチアーズ (#JMLT)という謎のムーブメントに安易にのっかるため、会場に行く前のコンビニで普通の牛乳と乾杯用のプラコップを買って行きました。本当は牧場とかの本場のやつがいいらしいそうなのですが、突っ込みどころのある方がいいかなと思って微妙に間違えても気にしない事にしました(北海道内の地方で勉強会を次々開くというコンセプトにリスペクトはしている)。
当日のオペレーションでてんてこ舞いな私たち現地運営2人に代わって、会場でワイワイ楽しくやれてる様子をかなり詳細にレポートして頂けました。コンテンツも楽しんで頂けていたようですし、彼らが引き寄せて連れてきてくれた学生さんなんかもそこそこいて、交流の良い場になっていたと思います。
機材持ち込み可能な雰囲気
こちらは直前のイベント案内の際に来場予約者向けにアナウンスしました。「交流スペース作ったから、なにか見せたいガジェットあったら持ってきて遊びましょう」みたいな雰囲気にしました。本当に持ってきてくれた人を順次交流スペースの片隅に追いやって()、Portalgraph以外のXRコンテンツのプチ体験会場にもしました。札幌のXRエンジニアなきっポジさんやみやもりさんがいつものごとく楽しいものを持ち込んでくれて、札幌にもまだエンジニア残ってるぞってことを示してくれました。
交流スペースの常駐マン(自分)
ただ場所を用意するだけでは会話はあまり生まれませんので、それをなんとか引き出す役が必要です。招待をかけたりした私が来場者それぞれの特性をだいたい把握しているので、その時々の参加者の共通の話題を振ってみたりしてのファシリテーションに努めました。あまりに人口が密集しすぎた場合は追い出し役も兼ねていました。
結果としては、体験予約枠の前後数十分の滞在可能時間を有効に使って参加者どうしの会話に盛り上がってくれる人が多かったように思います。お菓子の差し入れも頂きありがとうございました。常時ほどほどの人数のまま入れ替わる状態が続き、追い出し役としての仕事をあえてする必要もなかったので助かりました。
事後のケア
イベントの後はいつも通りアウトプットを促していくものと、当日来れなかった人のためのアーカイブを並行して作っていきました。
Portalgraph疑似体験動画の公開
残念ながら病欠になってしまった方が居て、札幌でめったにないこの機会を逃したことを悲しんでいました。怪しいマネキンで撮った体験映像をVRゴーグルで見る事によって、当日のスクリーンの前での見え方を追体験できるようにしました。ぶっつけ本番でしたが意外によく撮れています。ブラウザだと赤青メガネ必要ですが、ゴーグルだと両眼立体視のモードが選べます。testというタイトルで01-05まで出しているので、興味があったら見てみてくださいね。生で体験してみたくなる場合は第二回目を計画するかも。
togetterまとめ
これはいつものまとめです。イベントの発端から事後の出来事までザックリ振り返るのに都合が良いようにまとめています。今回はROBAさんが旅に出たり(#ロバ旅)、イベント翌週に札幌内でのセットアップ会が開かれたり(後述)と、派生イベントがいくつも生まれたので、それらも後から収録したりしています。できるだけ、この技術に関心のある人を増やしたいので、共有する用のネタ記事として使ってもらえればありがたいですね。
非公式の第二回さっぽろ #Portalgraph 体験会の実施
実は今回、体験会参加をお誘いしていた人たちの中に、当日参加が仕事で叶わず代わりに投影システム一式買うという人が数名いました。その中のヲタケンさんが自身のスタジオでのセットアップに稚内帰りのROBAさんに来てもらうという話をしてくれて、その場にお誘いいただきました。それで急遽当日不参加だっためんたろさんと一緒に現場に遊びに行って、技術話を中心にいろいろ改めて聴いたりすることが出来ました(役得)。
オフラインイベントをやってみての総括
体験会というイベントの一連の行動によって、
①北海道でもPortalgraphが体験できる拠点が少なくとも2つはできそう
②体験会のオフラインの場で新しくできた知り合い関係が今後の楽しい事に発展するかもしれない
③北海道でのXRイベントのニーズを可視化できた
くらいの成果が得られました。運営としては100点の結果かなと思っています。
もちろん出来なかったことも多々あり、企業所属のエンジニアに対してはお誘いがイマイチ響かず訴求力がほぼ無い現状も見えました。コミュニティの体験会の方が情報が一足早いよなんてことを言っても信じてもらえない程度に、コミュニティ文化が地元企業には浸透してないのも一因かなとも思います。この辺は2019年までさっぽろHoloLens Meetupやってた時にぶつかっていた壁と全然変わらないです。
今回はいろいろな偶然が重なって開催できました。雑に札幌をおススメしてくれたじゅーいちさんに始まり、会場をいち早く押さえたさってーさん、もちろん北海道に来てくれたROBAさん一行、情報拡散に協力してくれた皆さん、当日の発信を手伝ってくれた参加者の皆さん、プロジェクタを思わず買ったヲタケンさん中村さん達のおかげで楽しいムーブメントにすることが出来ました。ありがとうございます。
いつぞやの繰り返しになりますが、雑に始めて丁寧に締めるというのはとても重要な事だと思っています。
イベント運営は大変です。ちょっと思い出すだけでもこれだけの要素を上手く整合させて目的の結果に繋げていく作業です。大げさに始めれば始めるほど収拾を付けるにも多大な労力を払ってむやみに疲れるシーンが増えるので、個人勢力で始めるにはこのくらいのゆるさでやるのがいいのではないでしょうか?(ただし感染拡大防止策はちゃんとやる)
地方で体験会イベントを開催することになった方にこの記事が届けば嬉しいです。全部は使えないですが参考にできる部分はあるかもです。また、この記事を読んで北海道に遠征しに来たくなったXRの方はぜひご相談ください。ちょっとは発信のお手伝いします(雑)。
(2022/7/13 初稿 6793字 180min)