引っ越しの話

こんにちは、じゅんです。
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)というHoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。

 今回、札幌駅から徒歩五分の部屋を去る方針を固め、アナウンスしました。引っ越しによって変わる事、変わらない事、もともと目論んでいた事、上手く行かなかった要因など、私の実践を通じて見えているものを主観でまとめておこうと思いました。


現状の自分の主な機能

札幌駅にとても近い所に住んでいたことによる個人の機能が色々ありました。

・被せに行くための行動の起点

市内で要望があった時に各種XR機器を一通り体験してもらうために交通の要所に拠点を置いていました。ハードウェアベンダーさんから機器を一時お預かりして希望者に先行体験させるという活動も今年くらいから始まりました。

・各種コワーキングスペースでのハンズオン・勉強会イベントの開催・運営

徒歩数分圏~数十分の範囲に点在するコワーキングスペースをお借りして対面ミーティングを開く際の打ち合わせなどを重ねていました。わりとこまめに現地訪問してスペースのスタッフさん達と関係を作っていました。

・道外からのゲストが札幌に来た時のお話要員

たまにお客さんが出張でやってきたときに、札幌駅~大通り駅周辺で情報交換の機会をつくったりしていました。

活動の断片はこんな感じでその都度記事化して行っていますので、詳しいレポートはリンク先参照です。イベント開催を通じて北海道の内外に信用貯金を少しずつ貯め続け、それに伴い企業が一個人にもやさしくしてくれるようになってきたりという変化を感じていました。

変わる事は、市街地でのイベント減少と長距離移動の増加

 これらのうち、駅前に紐ついていたイベントは引っ越し後大幅に減ることになります。xRに関係する外出をするときはたいていの場合、VRゴーグル、HoloLensはもちろん通信インフラ、PC、LookingGlass、各種全天球カメラ、2眼カメラなどなど大量の荷物を持ち運ぶので、行き先が徒歩圏であることが私にとっては重要です。札幌駅前から撤退したあとは、市街地中心部への移動にまずバスを使う形になりますので、移動時間の面で行動のハードルが上がることになります。今まで気軽に行動を積み重ねて実現していた勉強会開催などは残念ながら減ると思います。

 一方で、居住コストからは少し解放されることになるので、いままで赤字続きであった財政状況が少し改善され、出張が可能になると考えています。技術の調査に出かけたり、学会参加を復活させたり、他の地方のコミュニティに参加したりといった活動が今年よりは増えることを期待しています。先月に書いた、出張行きたい話の本編みたいなことを自分の財源でやるイメージです。

変わらない事は、オンライン主体の勉強会運営と、他領域コミュニティの勉強会への参加

#DoMCN では、毎月第三水曜日に #大阪駆動開発 を中心とする複数コミュニティでXRミーティングを開催しています。コロナ蔓延以降に札幌市内での現地開催は一度も出来ていないのですが、オンライン対応で良ければそれほど手間がかからない体制が出来ているのでこれは継続します。もともと北海道民に限定をしていない告知をしているので沖縄からも参加者がいたりと、北海道色の薄いイベントになっており、特に影響もないと考えています。「他の地域から活動者が視えるようにする」コンセプトで続けているイベントはいつも通り続きます。

 ハンズオンなどで札幌以外の地域と一緒に開催する事も模索をしていて、こちらも継続して協力する予定です。会場に関してはある程度開拓できたので、以前ほどの負担感はありません。

 同様に、私自身がxR以外の技術コミュニティにも広く顔を出して知見提供&認知の向上などをやっている活動については継続する予定です。東京が先行して、コミュニティイベントのオフライン回帰に向かっており、単なるオンライン参加では存在感を示せない問題が再燃しているので(#CMC_Meetup 界隈の言葉でいう所の「想起」に至れない問題)、いい方法ないのかなという所です。運営側でオフライン込みのハイブリッドイベントを開いてもオンライン参加者の中に熱意のある参加者を発見しにくい問題とも表裏の関係です。どちらの立場でも難しい。

目論んでいたことは、研究室方面への技術導入と地方でも生きられるエコシステムの発見

 Scientist/Developer Relationsとわざわざ職名をでっち上げて活動するからには他のエヴァンジェリスト・運営者との差別化を図りたい意図があります。私の場合は大学などの研究室にうまく技術を渡せたら楽しいかもという動機で続けています。この試みは部分的には成功し、国の研究所で技術を紹介したり、所属学会(非VR系)で実施報告を発表したりできました。

 コロナ以降は、構内で持ち込み機器を体験してもらうという事自体が入場制限で難しくなっていき、そうこうしているうちに国のDX予算を得た各大学がそれぞれで取り組み始めるという流れが起きて、そこからは取り残されている感じです。

 また、非東京圏でVR開発・活用に興味を新たに持った人が地方でも生きられる流れも模索していました。東京圏の会社ではフルリモートの会社が出てきていますので、開発志望の方はそこに適応できるエンジニアになることがおそらく重要です。地元で商売をしたい場合は、技術を買ってくれるお客さんの存在が必要なため、私の役割としては裾野を拡げて市場をつくっていくことが大事と考えて非エンジニアリングの方面でいろいろ活動してきました。
 よいお客さんと開発者が地域に居れば、うまく橋渡しをしてみんなが生存できるのではないかと考えています。

残念ながら上手く行ってるとは言い難い

 リアルでお会いする人には自分のことをxR方面の便利屋さんと名乗ることが多いですが、実際に相談されることはまれで、年々微減している感じです。お客さんに関して私が仮説している原因は以下です。

会う人を間違えている

 学会で同席して情報交換などをして、その後関係が継続することが少ないです。一研究者でどうにもならない事に関して私がしゃべっている場合は、その上司の方に情報共有される可能性が極めて低そうです。追加のイベントが起きないのでトピックへの関心が可視化されず、最初の窓口となった話相手とのパスは消えがちです。

会う場を間違えている

 ↑の事情を解るとマネジメントに影響できる先生に会いたいわけですが、普通に学会に出かけて行っても、偉い先生ほど現場であれこれ動き回っておられるので、彼らがアウトロー気味の私に関心を示す機会が無さそうです。ハイブリッド学会に出かけて行っても、現地での飲みの話題が結構耳に入ります(今研究に取り組んでない私は当然誘ってはもらえない)。現地でこうなので、オンライン参加の薄い存在感ではさらに絶望的です。

会う時期も間違えている

 自分が研究者をやっていた時は、春学会の時期、秋学会の時期、卒論修論の時期がとても忙しく、その時に外部のお知らせを見て何かしようと思う状況ではありませんでした。その時期以外にきっかけがあった場合はちょっと関わってみようかなくらいのスタンスでした。外に出た今は、その当時の事情も考えて、会う時期も調整したりもしていましたが、反応が得られる手ごたえが減っています。かつての恩師と定期的に連絡を取って、その反応から忙しさを推測したりもしていますが、教務でオンライン対応・現地対応の両方がのしかかっているようで、常時多忙から抜け出せていない印象です。これでは外の技術への対応優先度が上がるわけないので、私からのアプローチは空振りし続けることになります。

 アカデミア方面で、きっかけ作りの段階からすでに停滞している要因を一部挙げてみました。似たような領域で活動をしている方はこの逆を目指すと良いのかもしれません。

 地域の困りごとをサポートするお仕事の発掘についてもかなり停滞しており、その解決策も模索中です。今感じていることとしては、xR方面に限らず、コーディネーター的仕事を実際にしている個人を見つけてピックアップする仕組みを自治体は備えておらず、立候補以外にはその道で生きる方法は得られないのかもしれない、という事です。この構造のつらい所は、立候補する方法にたどり着けなければ、永遠にチャンスは回ってこないという事です。そのスジの人に知られていないという感じでしょうか。

まとめ

 いろいろ書き出してみて、救いの無さを再発見してガッカリする事になってきていますが、整理をすることによって次の打ち手を見つけたりもしているのでこれはこれでよい訓練になりました。
 限られたリソースの中で活動を続けるうえで地元へのコミットは減りますが、引き続き他地方との協働については増やしていけるように色々工夫しますので、よろしくおねがいします。
 活動に共感して支援いただいている会社さんには感謝しております('ω')
 ここで書いていないけど無駄だったなと思える試行錯誤もたくさんありますので気になる方は個人的に聞いてください。

(2022/10/17 初稿 3700字)