XRアプリデモを楽しんでもらうための場面構成
こんにちは、じゅんです。
Scientist/Developer Relationsとして開発者クラスタと科学者クラスタの間を行ったり来たりしながらXR活用のきっかけをふやす活動を(趣味で)続けています。
そんななか、業務改善用のアプリを説明する事もあるのですが、この時の設計に関して私が考えていることが一般的なアプローチと違う可能性がある気がしてきたのでまとめてみようと思いました。
楽しむと理解するは違う
原則として、楽しんでもらうという事を第一の目標にしています。アプリの仕様を理解してもらうというのはそれはそれで重要なのですが、「わかったけど楽しくない」という感情になってしまうと使ってもらえないので、「なんかわからんけど楽しい」となってもらう方が次につながるような気がします。なのでこちらが準備することは、質問受付体制と意見出しの雰囲気と、デモの場面構成です。
⓪録画OKからのアイスブレイク
早い段階で相手には録画OKであることを伝えます。メモ取りなどでエッセンスを取りこぼすことがないように、資料は極力用いません。必要な資料は事前共有か事後共有にして、質問はなるべく会の最中に解決できるようにします。とにかく両手を空けてていいという状況を共有して、HoloLensを触ってもらえる余地を強制的に作ります。
冒頭で気を付けていることは、「いっぱい聴衆からの反応を聴きますよ」というメッセージを植え付ける事です。うっとおしいくらいに色んな人に話を振ってみて声での反応を引き出しておきます。その場でのエモーションアイコンの使い方を決めて無言の意思表示の仕方も説明・練習してみるのもいいと思います。私だけが喋る時間をなるべくしたい雰囲気を作ってから本題に行く、みたいなことをしています。逆に、「今から自分がしゃべり続けるので黙ってついてきてください」みたいなメッセージが誤って伝わった場合は大体失敗してます。
「申し訳ないですがグダります」宣言を出します。要するに楽しんでもらうために時間をたっぷりかけるよって事なんですが、以降のプロセスが人によってはただグダってるようにしか見えないので、時間設定に関する期待値を下げるために言っています。ルーズというワケではないんですけど、反応を拾おうと思っていると延びがちです。でも「決めた時間をきっちり守る」<<「相手がいっぱい反応してくれた」なのです。いわゆるビジネスパーソンと相性悪い方式なのは自認しています。
①まず見せる
アプリの機能の根幹となる機能だけをパッと実演して見せます。いろいろ便利機能とかもついて操作が複雑化していることもありますが、そういう部分をあえて省いて、最短で嬉しい事が起きる様子を見てもらい、そこに至るまでの道すじを提示します。
②やらせる
最短の要素しか見せていないので、すぐ実践に移ることができます。体験版などがある場合は事前にダウンロードしてもらっておいて、起動できる状態までサポートします。①で見せたところまで手元で再現できているようであれば、賞賛していきます。
できない場合も多々ありますので、手順を戻って設定などの確認をしてその場で解決します。バグを引いた時が実はもっともおいしく、開発フィードバックになるので是非共有してくださいと言えます。自分でバグを引くのもまあまあで、復帰の様子を実況で見せる事ができるので、デモ相手にトラブルシューティングを一つ渡したことになります。
うまく操作できるようなら、以降はもう手元で遊びながら聴いててくださいという感じにします。
③高度な使い方を遊び方として提示する
「機能の説明はしたぞ!さあ楽しめ!」と上から言っても無理な話なので、「自分がこのアプリを使ってこういう楽しみ方をしています」というパートを意識的に作ります。その際に、説明していない残りの機能の要素を絡めたりしています。機能は高度に、意識は低めな例を探すのがこつです。
ここから先がデモ先の要望とフィットしていくのかどうかを決める重要なパートだったりもします。質問が出てくるので答えながら、デモ相手が好きそうな新しい遊びを考えたりもします。精度がウリのアプリとかであれば、精度の検証をしやすい操作の仕方なども実演します。表現がウリのアプリとかであれば、同時に映り込むと楽しい現実は何か?とかを考えたりします。そうこうしているうちに相手から案が出てくるようになれば100点です。出たという事自体が超重要なので、質や実現可能性については気にしないです。自分ゴトとして消化してもらえることが大事です。
セカンドペンギンを超大事にする
ここだけで1話まるまる割きたいくらい大事なんですが、画面を見せて同調してやってくれる人が時々います。この人は最高にありがたく、具体的には社会運動のきっかけになる真のヒーローです。集団心理の問題で、「一人がやってるけど他の誰もついてこなかった」→「一人がやってて誰かがマネをしはじめた」となった時には3人目(記事一番下で書いてる、組織内部の「2人目」)になるハードルがめっちゃ下がります。②の時点で、やらせてはいるはずですが、共有までかけさせることはしません(なのでやってないかもしれないわけです)。ところが視覚的に、リアルタイムでデモ相手の身内が実際に動き始めたという景色が残ると、「あいつがやるなら俺も」みたいな人が出てきます。このタイプは私単独では動かすことができないので、身内の人ありがとう!って感じになるわけです。このムーブメントを作り出して伸ばすことが、導入支援の目標です。
一人そういう人が出て来てくれたら、画面共有を徐々にその人に移譲しながら操作サポートをしていって、「身内の人が操作を覚えた」という景色を印象付けていきます。彼が一番えらい('ω')
参考:デレク・シヴァーズ 社会運動はどうやって起こすか
ここの裸マンの役が私で、フォロワが2人目の人にあたります。
④遊びながら並行して質問タイム
最後に遊び時間を別途明示して、その間は質問対応タイムに割り当てます。遊びながら気づいた事や出来てない事を順次聞いていって、補足説明をしていきます。この意見を処理するのがシーケンシャルで間に合わない時があるので、Slackなどの非同期コミュニケーション系にコメントの吸い込み口を作っておくのもいいと思います。
解決した分だけ、デモ会の満足度が上がると同時に、デモ先でのトラブルシューティングを先に終えたことになります。録画を冒頭で促すのはこのためだったりもします。
仲良くできたと思ったら連絡先を提示して場を閉じます。終わり際に手とか振っておくと返してくれたりします。
注意点:ビジネスでやると事故る
素直にガチビジネスの場でこれをやると高確率で事故ります。これは一体なんでなんでしょうね。
さんざん書いておいて何なの?と思われるかもしれませんがこれが現実です。あきらめましょう。
それではどうしたらいいのかという話になるわけですが、答えは簡単で「①~④をやっても怒られない関係性を"事前に"作っておく」の一言に尽きます。たとえば担当者と私が仲良しで、「あいつはああいうやつなんだ」と第三者からフォローしてもらえるとかですね。
あとは先方の文化にもある程度は歩み寄る姿勢をデモ内容以外から出しておいて(服装とか)、楽しむ一点だけはこちらの流儀でやらせてもらうとか、完全なる押し付けにならないバランス感覚とかも大事かなと思っています。
まとめ
まだ研究途上ではありますが、楽しんでもらうために順序とか工程を工夫しているという話でした。「なんかわからんけど楽しかった」という将来の気持ちから逆算して、要らない所を省いて、感情のハードルを下げそうな要素をつけ足していくという事なのかなという気がしています。逆算すべきポイントは、
・どういう雰囲気だったら話を聴きながら手を動かしてみたくなるか?
・どういう条件を与えたら二人目として名乗り出たくなるか?
の二点です。
大事なので二度書きますが、ビジネスの場でやると事故るので、自分の中でのはっちゃけ具合をグラデーションつけて切り替えられるようにしておくのも重要です。
以上です。
(2021/6/6 1h 3069字)
参考
小手先の工夫の話。このお話の前編に相当します。見せ方の精度を上げる話。
組織内部の「2人目」が重要な理由のスライド
その時のプレゼンスライド(2018 Tokyo HoloLens Meetup LT)
サイト:群衆の英知もしくは狂気 感染伝播シミュレーションができる だいすき
そろそろ書こうと思ったきっかけの絵