2020-2021年で経験したバーチャルプラットフォームの話
本記事は、DevRel Advent Calendar 2021 の12/8日担当分の記事として公開しております。昨年は同Advent Calendar 2020に地方コミュニティにおける野良DevRel活動な内容のポエムを掲載しました。
勉強会をオンラインで実施するうえで、いろいろなプラットフォームを自分でも経験することになった2020、2021年でしたので、それらをまとめてみようという試みです。
12/8現在で思い出せる範囲で書いてみるので、触った当時と、バージョンが違う現在とで異なる仕様もあるかもしれません。
↑は去年の8日担当分の記事。この続きは16日に公開予定です。
3D要素のあるもの(シンプルなものから順に)
空間の概念が奥行き方向にもあり、コミュニケーションにおける"位置"の重要性を感じる事が出来ます。近年ものすごく誤解を与えてしまっていますが、ここに挙げたプラットフォームは、ゴーグルが無くても体験できます(重要)。
・#めちゃバース
夏ごろに公開され、今年のXRKaigiのオンライン会場にも使われたプラットフォームです。ブラウザでいきなり入ることができ、名前だけ付けることができるアバターで、3D空間の中を移動することができます。音声チャットを他の外部サービスに任せたので、めちゃバースは超軽量になりました。結果、1000人まで同時に共存できるので一つのワールドでイベント参加者すべての入場をカバーできるようになりました。ジャンプでコミュニケーションをとります。
・Thread Talk VR
毎週改善が続いている桜花一門さんの #ThreadTalkVR です。こちらは「どうやったら人はオンラインで雑談を好き勝手に始めるのか」というテーマの実験台です。こちらもブラウザからいきなり入れます。緑の円の中に入ると、マイクがオンになり、赤の円の中にいるアバター(箱みたいなやつ)の人に音声が届くようになります。緑の円は、参加者が好き勝手に新たに作ることが出来るので、そこかしこに会話のスレッドを作ってくださいという事のようです。毎週公開デバッグタイムという名の体験会が行われているので、参加すると面白いです。
・Mozilla Hubs
ブラウザベースで体験できるVRミーティングプラットフォームとしてはだいぶ有名になりましたね。音声チャット、エモート飛ばし、メディアコンテンツの貼りこみができます。マシンパワーが非力なPCで入る場合は空間の入場人数を10人とかにしないとカクカクになるので、100人規模の集会を予定する場合にはHubsのワールドを複数分割して人数管理するなどの運営技術が求められます。2021年の応用物理学会でのバーチャルポスターセッション(一部)がこのプラットフォームを用いる中山さんらによって初めて行われました。
・Cluster
アプリをダウンロードして起動するタイプの本格VRプラットフォームです。音声チャット、エモート飛ばし、SNS連携機能、スライドショー、アバターアップロード、ワールド作成機能など盛りだくさんです。スマホでも動くように進化しました。機材を選ばず入れることでより多くの人がVRでのコミュニケーションが出来るようになるよう日夜進化を続けています。
2020年の #NT札幌 にてこのプラットフォームが会場として利用され、オンラインでありながらも、密な感じの集合写真を撮ったりできました。
・Virbela(GAIA TOWN)
海外のオンラインプラットフォームです。こちらもアプリをダウンロードして起動・ログインするタイプです。いろいろな建物が配置されている島のなかにログインして、音声チャット、ダイレクトメール、エモートなどを使ってコミュニケーションします。フランスのVRフェスティバルLaval Virtualがここで学会のような展示会をしていたので初めて体験しました。
今年の夏に、国内代理店のGAIA LINK社が日本向けにサービスを開始し、Virbela→GAIA TOWNとしてプロモーションをしています。展示会イベントなどが発生すると、GAIA TOWN内から行ける施設が増えたりします。また、オフィスなど、日常使いする用途に普及を進めているらしいです。
・XRCloud
MonoAI Technology社のプラットフォームです。アプリダウンロードして起動するタイプです。XRCloudの基本アプリを使ってイベントをチケットで管理する方式(NEOKETなど)と、個別イベントごとにアプリ自体をパッケージして、参加者にインストールさせる方式(デジタル甲子園など)があります。個別向けアプリの方はカスタムがされているのでエリア内の名刺交換機能とかが追加されています。参加者の属性に合わせて機能を絞ったりしているので、操作ややこしくなりにくい配慮がされています。イベントを運営するためには、担当者と仲良くなる必要があります。
・Microsoft Mesh
去年の春に公開されたコラボレーティブコンピューティングツールです。HoloLens2を持っている人を自分のルームに登録すると、その人たちが自由に出入りできるようになります。自分のルームに現れたユーザーはアバターとなり、音声、身振り手振り、視線、言語翻訳をつかったコミュニケーションが取れるようになります。まだプレビュー版なので人数が限られていたりはしますが、今後のアップデートでzoomやWebexなどの他のプラットフォームとも連結するとのことです。
・Horizon Workrooms
Meta Quest 2(旧Oculus Quest2)で利用可能なオンライン会議のプラットフォームです。今はPCユーザーとQuest2のユーザーで利用可能です。Questユーザは仮想会議室の卓につき、他の椅子に座ったメンバーと目の前で喋ることができ、PC版のユーザーはそれを横から眺める形になるようです(上の画像のような感じ)。Quest2を被ったユーザー同士の音声には、自分自身からの相対的な位置関係も聴こえ方に反映されるため、誰がしゃべっているのかきわめてわかりやすいです。また遅延も少なく作られているので、zoomの時のような譲り合いの時間が発生しにくいと感じています。
・VRChat
SteamVRで利用できるアプリです。アバターにギミックを仕込むもよし、ワールドに特殊効果を付けるもよし(ただしプログラムで作れる必要がある)な空間です。ユーザーは目的に合わせて機能や空間を作り、そこで思い思いのコミュニケーションを楽しんでいます。
DoMCNではVRChatユーザーのエンジニアと合同でLT会を開いたり、音楽ができるエンジニアのライブ演奏会に参加したりしていました。
2D要素のあるもの(シンプルなものから順に)
バーチャルプラットフォームと聞いた時に多くの人が連想するのが二次元の移動範囲の示されたボイスチャットツールなのではないでしょうか?ここでは、その中から界隈の話題になったツールを紹介します。
・NeWork
NTT Communications がリリースした音声アプリです。個人同士でつながって通話が始まるモードと、スペースに設置された"ルーム"に入ることでより複数人の通話をするモードがあるようです。1年ぶりに起動してみたら見た目がだいぶ変わっていたので改めて調べます。コミュニティでの利用経験はありません。
・Remo
ブラウザ上で動く集会用アプリです。NeWorkでルームとされていた抽象的な通話ハブに、より具体的な机のイメージが与えられたものです。参加者は、椅子の座標を渡り歩いて、同じ机を共有する人とビデオ通話することができるというイメージがよさそうです。テーブルの違う椅子に移動するとまた別の通話セッションがはじまります。
パーティっぽさのある画面もワールドとして設定でき、私の所属学会の懇親会に使われたりもしました。また、よりオフィスっぽい雰囲気の画面をつかい、ポスター発表を行った事例もあるそうです。
・Gather
昔のレトロRPGのような雰囲気の画面の中を移動して、近くの人と会話するツールです。通信系の国内学会で使われたりしたそうです。
・Spatial Chat
Remoが椅子の上の移動しかできなかったのに対し、Spacial Chatは画面中のどこにでも行くことができます。移動は自分のアイコンをマウスなどで動かすことで行われます。同じ卓を囲むメンバーでセッションを共有するという概念ではなく、こちらでは、アイコン同士の距離がコミュニケーションを決め、離れたアイコンに自分の声は届きません。
若干現実に寄せた性質を平面が持っていることで、参加者がどの人としゃべりたいのかわかりやすくなっていると思います。こちらも懇親会、就職相談会など、微妙に初対面同士の人が交流する場として採用されていることが多かったように思います。
・oVice
Spatial Chatの自由な平面内移動に、NeWorkで抽象化されていた会話のハブの機能も追加されたような形式のプラットフォームです。自分のアイコンと話しかけたい相手のアイコンを線で結ぶと確実に通話できます。結ばなくても距離によって聴こえるモードも(たしか)あったと思います。DevRelJPの最近のイベントでは、Ask the Speakerの会場がここに設定され、本編の配信から流れてきたパネラーがここで参加者の質問を受け付けて答えていました。
位置の概念のないもの(シンプルなものから順に)
・Google Meet, Teams, Webex など
みなさんどれかは使ったことがあると思います。会議のURLなどを共有して、そこに加わるとしゃべれるというやつです。
・Around
海外のアプリです。一時便利そうという噂が流れたのでちょっと触ってみました。各参加者のカメラ映像があんまり自己主張しない感じにトリミングされて表示されるので、↑の会議ツールよりも井戸端会議感のある絵面になる記憶があります。しばらく触っていないのでまた変わっているかもしれない。
・Zoom
これを使わない日はない感じになっていますよね。XRコミュニティで毎月第三水曜に行っているXRミーティング(#XRMTG)もこちらのプラットフォームを使って各拠点のメンバーで集まっています。
ブレイクアウトルームがかなり使いやすく進化しました。メインセッション・小部屋セッションの階層の構造が導入され、使われていくうちに他のプラットフォームでもこの仕組みに似た運用を模索する人が現れ始めました。
・Discord
ゲームをやる人になじみのあるテキストチャットのプラットフォームです。ボイスチャットも設定できます。招待リンクとかで、サーバに加入するとチャットを送りあうことができるようになります。↑の図のように、管理者が複数のボイスチャットルームを立てた場合、サーバの中にたくさんの小部屋ができたことになります。メイン部屋などで小部屋移動の指示など送り、小部屋ではそれぞれトピックに沿った会話をする、みたいな運用をすることができます。詳しくは↑の山口さんの記事をみるのがわかりやすいです。席と机を無くしたRemoみたいな感じでしょうか。最近だとSlackのハドルもこんな感じになってるような気がします(試してない)。
#リンゴLiDAR の懇親会、#XR転職、Tokyo HoloLens Meetup (#HoloMagicians) の懇親会それぞれでこの運用を見かけました。
・Hopin
ビデオチャット、テキストチャット、カンファレンス進行管理、SNS連携プロフィール設定すべてを備えたプラットフォームです。アカウント作成し、イベントのチケットを買うなどしてイベントに加わると、学会のようなタイムテーブルと各ライブセッションへのリンクが表示されたページにつながります。
セッションを視聴しながら大会全体向けのチャットを交わしたりとかもできます。zoomの複数のセッションを積算してタイムテーブルに配置して、流れたチャットは大会の会期中ずっと見られるという感じです。プロフィールは外部のSNSへ飛ぶためのリンクを自分たちで設定することが出来るので、LinkedInなどで友達申請を出してメッセージのやり取りを始めることが多かったです。
VR/AR Association (#VRARA)のグローバルサミットがこのプラットフォームを採用しているので年3回くらい使う機会があります。
まとめ
数が多くてだいぶん駆け足になってしまいましたが、良く分からないプラットフォームはまず触れてみるのが一番です。私が書いた内容が古くなっている可能性も十分ありますので、もしこれらを使うイベントを見つけた際には飛び込んでみるというのがおススメです。
イベント運営上だいじなこととして、参加者全体のITリテラシーを想像して、参加者のほんのちょっとの背伸びの範囲で収まりそうなものを選んで運用するのがよいと思います。場合によっては使える機能を絞った方が体験満足度が上がるというのもあります。(アカデミアの先生方から、学会のオンラインポスターセッション運営などを相談される事が時々ありますが、慣れてるツールで開催しないとサポートの分量が膨大になってしまって詳しい人がしんでしまうという弊害があります。)
今回の記事では、3D、2Dそれぞれの分野の中からで最もシンプルなものの説明からはじめて、その半歩先の自由度の別のプラットフォームの説明にも使う構成にしてみました。いきなりVRChatの事を書いても難しいので段階ごとにインプットしてみてください。
2022年の感染拡大状況はどうなるか全然読めていませんが、研究の界隈では基本的に現地開催に戻る動きがメインになるんだろうと想像しています。ハイブリッドが残るかどうかの瀬戸際な感じはありますが、自分たちの運営イベントに関してはオンライン・オフラインそれぞれの"いいとこどり"が出来る運営ができればと思っています。
16日にもアドベントカレンダー記事を公開しますので、そちらもお楽しみに!
---DevRel Advent Calender 2021 ---
(2021/12/8 初稿 5533字 180 min)