自分は長らく必要性に駆られていない学びを忘れていたかもしれない〜独学の地図/荒木博行
社会人になってからというもの、日々、大きな意味での課題解決の連続です。
構造物を設計する必要がある、となれば数値解析なりをして答えを出す。
誰かを説得する必要があれば、資料を準備する。
抽象的に見ると、
・課題の認識
・現状の把握
・それらの差分を埋める方法を考え実行=解
というプロセスの連続です。
仕事の本質が”課題解決”である以上、当然と言えば当然かもしれません。
これはこれで問題ないのですが、知らぬ間にこの考え方が染み付いて、偏った考え方になってしまっていたな、と本書を読んで気付かされました。
社会人になってからというもの、変な真面目さが裏目にでてか、何かを勉強しようという時、
・自分の仕事に必要だから、
とか
・会社からお祝い金が出るから、
といった必要性に駆られたような勉強を続けてきました。
そうすると、周りからは「真面目だね」という評価も得られますし、自分としても「周囲から抜きん出る機会だ!」となりますので、モチベーションもそこそこ。
「なぜ学ぶのか」を最初に考えない
自分としては、それが当たり前と考え疑うこともなかったので、本書の中のこの文字列は衝撃的でした。
自分とは正反対、といってもいいくらいの内容です。
でも最近はつくづくその通りだなと感じます。
例えば、自分は土木建築関係の仕事をしておるのですが、これほどまでにDXが仕事に関与してくるなんて想像だにしていませんでした。
最近も社内教育で生成AIやITパスポートの講義を受けたり、その目まぐるしい変化のスピードに驚いています。
振り返ってみると、自分が学生をしていた20年近く前は、リモートワークなるものがこれほどまでに社会に浸透するなんて考えもしませんでした。
もちろん、荒木さんは自分の仕事に関することや専門性を強化することを否定しているわけではありません。実際、自分のラーニングパレットの解像度を高くするという表現で、”突き詰めていく”ことも進めています。
でも、役に立つから・必要だからという理由だけで新たな分野に手を出していてもすぐに陳腐化する可能性が高いし、義務感でやる勉強はなかなか身につかないのはみなさんも実感しているところかと。
それであれば、子供と同じく「面白そうだから学ぶ」でいいわけですね。
そうやって効率的に学び、知的好奇心が満足されれば、仕事に役立とうが立つまいが、それはそれでいいわけです。なぜなら、want由来の学びだから。
学びの本質は経験前後の差分
で、実際に学んだらどうするか。
その学びを言語化することが大事なのはいうまでもなく。
でも、その言語化の作業、気をつけないと学びのスピードの鈍化に繋がります。
みなさんも、「それっぽい一般論」で学びを総括してしまってはいませんでしょうか。
自分も社内教育に関与する機会があり、受講生に講義の感想を聞くと必ず返ってくるのが
・勉強になりました
・ためになりました
というもの。
でも、ちょっと考えてみてください。
勉強になるよう、ためになるように講義が設定されているわけで、こんな感想であれば講義を受けるまえに講義名を聞いただけで準備できますよね。
そう、それっぽい一般論は私たちの本来の学びに蓋をしてしまうので、要注意です。
そのためには、学びを言語化する時に自分だけの具体論に変換することを心がけましょう。
具体的な手順として、荒木さんは
1素直に感じたことをアウトプットしてみる
2「それっぽい一般論」がないかチェックする
3「自分だけの具体論」に変換する
というステップを推奨しています。
3は骨の折れる作業ですが、自分にとって何が新しい体験だったのか突き詰めていきます。無骨な言葉、言葉にするとこんなちっぽけな、となるかもしれませんが、どんなに小粒であっても、漠然とした言語化では認識し得なかった成長につながるはずです。