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システムトレード リアルフォワードを確認しよう!EAの性能や収益力の評価について

SNSでは「月利+○%」と射幸心を煽る数字を掲げてアピールする悪質な商材屋が多いと感じています。そのような広告に騙されて、詐欺的な商材やリターンを生まない高価な商材に手をつけてしまった人も中にはいるかと思います。
他者作の ExpertAdviser(EA) を選ぶ(購入する)際にはまずリアルフォワード、またはデモフォワードで結果を出しているのかをしっかり確認して、EAの性能や収益力を正しく評価することは大切だと思いましたので、この記事を書いてみました。

この記事で示しました指標のいくつかは、
EAを利用する立場であれば、市販されているEAを購入する際の判断材料に使えると思いますし、
EAを開発する立場であれば、基準値として比較することで、改めてロジックを見直したり改善したりするきっかけになればと思います。

この記事で取り上げますリアルフォワードのデータは、筆者自身が楽天証券のMT4口座で実際に売買したドル円と日経225の運用実績です。

ドル円のリアルフォワード

まずは、ドル円のリアルフォワードがこちらです。この口座ではロング・ショートの単ポジで反発・反落を狙うEAが動いています。(GogoJungleさんのRealTradeより)

これを月次でまとめたサマリーがこちらです。

ドル円のリアルフォワード 月次サマリー

こちらは2023年の3月からショートのロスカットが続いて、ドローダウン中です。

日経225のリアルフォワード

もう1つの口座では、日経225でロング・ショートの単ポジで反発・反落を狙うEAが動いています。(GogoJungleさんのRealTradeより)

これを月次でまとめたサマリーがこちらです。

日経225のリアルフォワード 月次サマリー

こちらはリアルフォワード期間が9か月と短く、取引数も97と少ないですが、調子はまずまずです。

上記の月次サマリーをCSVからコマンド実行で出せるようにしたものをこちらの記事で書きました。
システムトレード EAの性能や収益力を確認しよう!コマンドで簡単にレバレッジをチェック|Jun Otake (note.com)

リアルフォワードの各項目について少し説明しますと

累積損益(円)
月末時の累積損益で、累積の確定損益+含み損益 です。
同時に複数のポジションを持つナンピン系のロジックではかかえている含み損益も計算に入れてください。

ポジション最大(円)
=レート最大×ロット最大×1ロットあたりの数量
その月に同時にとったポジション量の円換算の最大値です。後に実効レバレッジを計算するために必要になります。なお、1ロットあたりの数量 は証券会社や口座タイプによって異なることがあります。
複数の通貨ペアのポジションを同時にとった場合はその和になります。例えば、ポンド円を187円で1万通貨、ドル円を151円で1万通貨のポジションを同時に取ったという場合は 187×10,000+151×10,000=3,380,000 となります。

月の損益率
=損益増減(円)/ポジション最大(円)
その月にとったポジションの最大値に対する損益増減の損益率を計算します。
株式投資で例えるなら、これは月間のROA(総資本利益率)に相当するでしょうか。

ドル円のリアルフォワードの2023年11月(11/20決済分まで、橙色の囲みの部分)では
その月にとった最大のポジションがレート 151.686円 で 25,000個 のポジション 3,792,150円 で、運用によって損益増減が +30,125円 となり、損益率が +0.79% となった
ということになります。

下振れとその確率について

セルの背景が淡いピンク~濃いピンクの部分は、相場の値動きとロジックがかみ合わずに連敗するなどして、下振れして大きな損となってしまった月と、それが起きるおおまかな確率を示しています。

ドル円のリアルフォワードでは
-1.03% を下回る損は 2022年9月 で (-0.67σは25%程度の確率で起きる)
-2.40% を下回る損は 2023年4月 で (-1.28σは10%程度の確率で起きる)
-3.21% を下回る損は 2023年6月 と 2023年8月 の2回で (-1.64σは5%程度の確率で起きる)
となりました。
特に、2023年8月については、踏み上げが続いていたショートのロスカットの設定幅を大きくとってみたりしていたのですが、それが結果的に裏目に出てしまったようです。

注目する指標と基準値について

以下には筆者が注目している指標とクリアしたい基準について書きました。これらはEA開発者としてももっと良くなるように注力したい項目だと思います。

フォワード期間
基準:12ヶ月以上
フォワードの期間が長いほどロジックを信頼できます。かつ、上昇相場→下落相場(またはその逆など)相場の転換点をまたいだ期間あることが重要です。右肩上がりの期間が多いヒストリカルデータで作成したEAで下落相場に転換したらとたんに機能しなくなりドローダウンを更新してしまうのはよくある光景なので気をつけたいところです。
フォワードがバックテストと乖離していないかを1日あたりの利益最大ドローダウンからの回復日数などで確かめる場合には12ヶ月は最低限必要だと思います。「-○%のドローダウンがどの程度の確率で起こるのか?」をより正確に知るためには、相応に長い期間が必要になります。

取引数の合計
基準:100以上
ロジックの優位性を統計的に担保するために、取引数が大きいほど良いです。
リリース後のフォワード期間で取引数が著しく少なくなるようなEAはバックテスト詐欺の粗悪品の可能性もありますのでご注意ください。

月の損益率の平均
基準:+0.40%以上
月の増減率の平均をとってレバレッジなしでの本当の収益力がここに現われます。
ロングとショートで往復をとれるEAなどはこの値が大きくなります。特定の曜日や時間帯でしかポジションをとらないアノマリー系のEAなどではこの値は小さい傾向にあります。
この数字が +0.40%以上 ないと年率換算では +5.0% を割ってしまいますが、この基準を上回れていないEAは結構多いと思います。これが +0.14%未満 では日本国債20年の利回り(2024年6月時点で年利+1.7%)にすら劣ります。そんな低収益のEAにロットを大きく配分するのはもったいないでしょう。ちなみに、S&P500に過去10年で積立投資でバイアンドホールドする戦略では +1.4% になります。

シャープレシオ
=年率換算リターン/年率換算リスク
基準:1.0以上
ロジックが安定的で月々の損益のブレが小さく、残高の推移がキレイな右肩上がりなものほど大きい値になります。
トレンドフォロー系で優秀なロジック、または、リアルフォワード期間中に(たまたま)調子が良かったロジックなどでは(一時的に) 2.0以上 になることもあります。
逆張り(ナンピン)で損切りをしないタイプのEAで、相場が長く逆行して大きな含み損を抱えたときはこの値は小さくなります。

レバレッジをかけて運用する場合

リアルフォワードのデータがある程度たまったら、その結果をもとにレバレッジをかけて運用する場合の見積もりができます。
例えば、ドル円でレバレッジ5倍 を想定して運用する場合は
必要証拠金は 759,765円 で
月利の想定値としては +2.39%
下振れについては
25%程度の確率で -5.15% を下回る損
10%程度の確率で -12.01% を下回る損
5%程度の確率で -16.07% を下回る損
が起きる可能性がある
と見積もることができます。

実際には、この必要証拠金に余剰分(余剰証拠金)をいくらか設けて運用することになりますが、その有効証拠金(=必要証拠金+余剰証拠金)に対して、実際に何倍のポジションをとったか?を実効レバレッジと言います。

さて、SNSでは「月利+100%の爆益EA!」のような胡散臭い広告を見かけることがありますが、上で述べましたように「年利+○%」「月利+○%」の部分は商材をアピールしたい人の都合で設定したレバレッジ次第で変えることができます。レバレッジを伏せて魅力的に見える月利や年利をアピール…というのはハイレバの海外FXに誘導したい人たちなどがよくやる手段です。ですから、それが非現実的なレバレッジを想定したものではないか、リアルフォワードをしっかり確認していただきたいと思います。

最後に、その胡散臭い商材で使われているロジックが仮に優秀で月の損益率の平均が +2.00%、シャープレシオ 2.00 だったとして、ちゃんと運用できるのか?考えてみました。

月利100%で運用してみると

この場合、ひとまず レバレッジ50倍 を設定すれば 月利100% を想定することは一応可能です。ただし、翌月には 16%以上 の確率で -100% となり破綻する見積りになります。これを追加入金でなんとか耐えたとしても、5%程度の確率で -218% でやられてしまいます。ロジックがいくら優れていても、このような資金管理ではいつか破綻するのがオチでしょう。
というわけで、胡散臭い広告がいかに非現実的なレバレッジを想定したものかお分かりいただけたでしょうか?

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