「ウイルスに打ち勝った証」への違和感
「ウイルスに打ち勝つ」というのは人間のエゴ
昨年末、菅義偉首相は「来年の夏に人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として東京で五輪・パラリンピックを開催する」との決意を示しました。皆さんは「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として」という部分に違和感を感じませんか。私は少しだけ違和感を感じました。「新型コロナウイルスに打ち克つ」という部分に「人間の思い上がり」というか「エゴ」の思いを感じたからです。
地球環境問題でもよく「地球の為にCO2を減らそう」という話しを耳にします。このメッセージにも「ウイルスに打ち克つ証」と同じ臭いを感じます。というのは、地球の長い歴史の中でCO2がもっともっと多かった時代はありました。また、CO2が増えて地球温暖化になって、氷が解けて海面が上がって、それで困るのは人間であって地球ではないと思うからです。
「人間のエゴ」に対する地球の免疫作用
東京新聞に、自然保護団体のＮＰＯ法人エコロジーオンラインの上岡裕理事長の「自然破壊によって、住む場所を失った野生動物が餌を求めて人の住む町に近づいてきたり、希少種を食料や漢方として利用することで、人と動物が接触することになり、新たな人獣共通感染症が生まれる」という記事がありました。
それが事実かどうかはさておき、私はウイルスが人間や動物や植物と同様に「自らの生命を維持しようとする働き」は自然の摂理だと思います。「生存」が危機にさらされた時にウイルスは環境に適応し「変異」を起こすのではないでしょうか。新型コロナウイルスは「人間にとっては困る存在」かもしれません。でもコロナウイルスは森の中でコウモリと共生していたわけです。人間の身体にも沢山の細菌やウイルスが共生しています。お腹を壊す細菌もありますが、消化を助けてくれる細菌もあり、そういった細菌は人間の腸の中で共生しています。環境問題を考えるときに「生物多様性」という考え方があります。それは「強いものだけが生き残る」という淘汰の発想ではなく、「それぞれに役割があって、それぞれが助け合って存在している」という共生の発想です。なんで新型コロナと人間が接触することになってしまったのか。その根本原因は「ウイルスとコウモリが共生していた森を人間が壊してしまったから」なのではないでしょうか。そう考えると新型コロナウイルスは「人間のエゴ」に対する「地球の免疫作用」であり「警告」に思えてなりません。
共生は「人間中心主義」の見直し
米国ヒューストンにあるライス大学教授のティモシー・モートンは「われわれは皆、共生的な存在であり、他の共生的な存在と絡み合っているのです」と「人間中心主義」を見直し「人間、動物、モノ」の境界線を新たに問いなおすべきだと指摘しています。
ウイルスも生物も「自らの生命を維持しようとする」のが自然の摂理です。人間が自分たちに都合が悪いからと言って「新型コロナウイルスは根絶すべき」と考えるのは少し違うと思います。新型コロナウイルスも人間には害になっているかもしれませんが、地球の中ではきっと何かと共生し、何かの役にたっているはずです。「打ち克つ」とか「根絶する」という考え方は「人間のエゴ」だと思います。根本的な解決策は新型コロナウイルスが共生できるウイルスの居場所をきちんと作ってあげること維持してあげることなのではないでしょうか。そうすれば、コウモリがいない都会で新型コロナウイルスが人間に感染する形に変異して人間に襲いかかることは無くなるのではないでしょうか。対処療法としてのワクチンや治療薬の開発はもちろん大事です。でも根本原因である「人間のエゴ」をなくさない限り、新型コロナウイルスが収まっても、また別のウイルスや自然現象が人間を襲いかかってくるのではないでしょうか。
「人間のエゴ」に気づく機会としての五輪
五輪・パラリンピックは商業的であるという批判があることは私も知っています。でも五輪・パラリンピックが本当に伝えたいメッセージとは「平和や共生や多様性やサステナビリティー」です。その根っこにあるのは「人間のエゴ」を見直そうという考え方だと思います。なので、新型コロナウイルスによって１年延期となった２０２１年の五輪・パラリンピック競技大会は、「ウイルスに打ち勝った証の五輪・パラリンピック」ではなく、「ウイルスと共生の始まりの五輪・パラリンピック」あるいは「人間のエゴに気づく機会としての五輪・パラリンピック」になったら良いなと思っています。
地球の浄化力
昨年「新型コロナウイルス」によって世界の経済活動が止まった時、中国の空気が澄み、ガンジス川の水が浄化されるという奇蹟が起こりました。これまでの環境問題の議論では「数十年～数百年のスパーンでないと解決されない」と言われていた問題です。その時私は「地球の浄化力は本当にすごい」と思いました。「もし地球に意識があって、今の世の中を見たら、どう見えるのか？」そんなイマジネーションを膨らませてくれる映像を発見しましたので、こちらに貼り付けました。よかったらご覧ください。
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