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株式譲渡における「陰陽契約」の効力

一、背景

①定義

 陰陽契約とは、取引関係のある当事者間が関連取引において、裏契約(本当の契約)と表向きの契約(嘘の契約)の2種類の契約を締結することである。二重契約の一種であり、陰陽契約の「陰」が裏契約、「陽」が表向きの契約である。

  • 陰契約:実際の取引条件を記載し、当事者間の契約履行の根拠とする契約

  • 陽契約:取引条件が双方の真なる意思表示ではなく、行政機関への届出や税金納付で関係部署に提出する契約

②背景

 実務上、株式譲渡の場合は、陰陽契約の締結が、基本的に、同じ会社内の他の株主による優先購入権行使への回避、税収対策などの目的で行われている。

二、法律規定

 『民法典』第146条により、行為者と相手方が虚偽の意思表示により行った民事法律行為は,無効とする。虚偽の意思表示を以て隠匿した民事法律行為の効力は,関連法律規定に従って処理する。

即ち:

①陽契約効力:「虚偽の意思表示で実施された民事法律行為」であり、無効と認定すべきである。

②陰契約効力:法的に無効な事由が存在しない場合は、有効と認定すべきである。

三、実務

①原則(無効)

 実務上では、脱税を目的に「陰陽契約」を締結のうえ株式譲渡を行った場合には、人民法院は、当事者間による通謀虚偽で国の利益を損なったと認定し、「陽契約」の一部または全部を無効にすると判定するのは、原則である。

②例外(有效)

 しかし、脱税目的を理由に、直ちに株式譲渡契約書の無効を認定すべきではないという見方もある。

  • 昆明安寧永昌物資経済貿易集団有限公司とシャングリラ県博峰鉱業有限責任公司、林毅、程啓開、拉茸春平、雲南恒達華星鉱業有限公司の企業売却契約紛争    

    【判旨】中国税金徴収管理の関連規定によると、当事者間の株式譲渡につき、税金を発生し、その当事者が  上記税金を未納な場合は、当該行為は、行政処罰の対象であり、直ちに譲渡契約書が無効なものあると認定すべきではない。よって、双方当事者が締結した『博峰公司全体買収協議書』、『株式譲渡協議書』及び関連補充協議書が有効なものであるとの一審判決は、妥当なものである。

  • 三亜半山半島投資有限公司、閆琦玉株式譲渡紛争

    【判 旨】上記条項は、税金問題に係る約定で、かつ違法な要素がない。双方が脱税の目的で契約書及び補充協議書を締結したかについては、税務局などの行政部門が認定するものであり、今のところ、関連部署からは、違法認定や行政処罰を受けていなかった。株式譲渡により発生した税金については、税務局が当事者間で約定していた譲渡代金のみで計算するのではなく、関連規定に基づき譲渡された株式の価値を査定のうえ税金を算定するのである。元契約書が譲渡価格を意図的に抑えたとしても、新契約書においては、その譲渡価格を既に引き上げていた。よって、双方の締結していた旭洋会社関連の一連株式譲渡契約書及びその補充協議書は、当事者の真な意思表示によるものであり、かつそれが法律、行政法規などの強制規定に違反していなかったので、有効なものであると言わざるを得ず、双方がその約定を厳格に履行しなければならないものとする。

四、留意事項

①無効リスクの増加
  
 「陰陽契約」効力の認定については、実務上では、確かに意見が分かれている。ただし、新公布の『民法典』第146条の「虚偽の意思表示により行った民事法律行為は,無効とする」に関する規定は、「陰陽契約」における「陽契約」が無効であると認定されるリスクを増加させているのは、間違いない。

②実務提案

 株式譲渡において、当事者は、株主の出資額、株式の現価値及び予想収益などを考慮した上で、株式価値を公正に算定することを提案する。「陰陽契約」は、法律上のリスクが生じるだけでなく、税務局からの行政処分や刑事責任を問われるリスクに直面する可能性も考えられる。

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