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『池田屋乱刃』文庫にて発売!     【歴史奉行通信】第十八号

こんばんは。
伊東潤メールマガジン
「第十八回 歴史奉行通信」を
お届けいたします。

〓〓今週の歴史奉行通信目次〓〓〓〓〓〓〓

1. 『池田屋乱刃』文庫にて発売!
2. BOOK倶楽部向け『池田屋乱刃』紹介文
「京都が一番、熱かった夜」&
単行本発売時のホームページ用紹介文
3. おわりに
4.伊東潤Q&Aコーナー
5.お知らせ奉行通信

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1. 『池田屋乱刃』文庫にて発売!
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さて、文庫版『池田屋乱刃』が
昨日、5月15日に発売されました。

この作品は、
幕末最大の事件の一つである池田屋事件を
志士サイドから描いた短編集です。

新選組サイドから描かれることが
ほとんどの池田屋事件ですが、
私は司馬遼太郎氏の幕末作品に接した
中学生の頃から、志士たちが大好きでした。

そうしたことから、
池田屋事件に遭遇して
無念の死を遂げていった志士たちを、
いつか描きたいと思っていました。

この作品の特徴は、
一つの事件を志士たち個々の視点から
多面的に描いている点です。

つまり連作短編の一種ですが、
より密に結合されているため、
連作長編と言ってもいいと思います。

この形式をさらに成熟させたのが、
『天下人の茶』
(https://amzn.to/2Kt0FWu)
になります。

このように長編と短編の間には、
それぞれの長所を生かした変則的な方式がありますので、
そういった点も踏まえて読むことで、
いっそう小説が楽しめると思います。

既読の方も未読の方も、
まずは下記のエッセイをお読み下さい。
そして未読の方は、
この文庫版発売を機に、ぜひご一読下さい。

伊東潤の魅力が詰まった一冊になっています。

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2. BOOK倶楽部向け『池田屋乱刃』紹介文
「京都が一番、熱かった夜」&
単行本発売時のホームページ用紹介文
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司馬遼太郎氏の幕末小説を読み始めた中学生の頃から、
新選組よりも尊攘志士の方が好きだった。

彼らは新選組と違って、
何かを守ろうとするのではなく
何かを目指していたからだ。

しかし池田屋事件が出てくる大半の小説は、
新選組サイドから書かれており、
志士たちは不逞浪士と呼ばれ、
テロリストと何ら変わらぬ扱いを受けていた。

小説や映画では、
彼らは陰謀をめぐらすために池田屋に集まり、
ひたすら新選組に斬られていた。

それゆえ、
いつか志士たちの池田屋を書きたいと思っていた。
しかし、まとまった史料がない。
そこに、中村武生氏著の
『池田屋事件の研究』(講談社現代新書)が出版された。

この本を手にしたことで、
新選組の引き立て役にすぎなかった志士たちを、
血の通った人間として
現代によみがえらせることができると確信した。

*****************

冒頭の『二心なし』は、
池田屋で死んだ志士たちの中でも、
とくに謎に包まれている
福岡祐次郎を主役に据えた一編。

時代小説テイストを濃厚に漂わせ、
ストーリーテリング力を駆使して書いた。

各編の中で最も読みやすいと思われる
この一編の中で、
当時の政治情勢を密に描くことで、
続くエピソード群において、
政治情勢の説明を必要最小限にした。

この短編により、
志士とは縁遠かった男が真の志士になるまでの過程を通して、
「志士とは何か」が見えてくるはずだ。

****

二編目の『士は死なり』は、
土佐藩の北添佶摩を描いた一編。
理想と現実の狭間で、悩むのは志士も同じ。
つい目先の事態を打開することで、
理想も実現すると勘違いしがちである。

その点、本稿の主人公である北添佶摩も、
神戸の海軍操練所から脱出した望月亀弥太も、
天誅組に参加した土佐藩士たちも、
歴史に翻弄された人々だと言える。
スリリングな展開に富んだ一作。

****

三編目の『及ばざる人』は、
肥後の宮部鼎蔵を主人公に据えたもの。
当初、これを表題作に据えようとしていたほど、
志士というものの本質を描ききれたと
自負している。

拙著をすべて読み切っている八十八歳になる母が、
「長編も含めた全作品中の最高傑作」
と言ってくれた渾身の一編。
(ちなみに今年九十二歳になる母は、
今でも変わらず私の作品を読んでいます)

****

四編目の『凜として』は
長州の吉田稔麿を描いた作品。

稔麿といえば
二十四歳という若さで死んでいった
悲劇の志士として、
幕末ファンの記憶にとどめられていると思う。

その清冽な生き様を描くにあたって、
どうしても後味のいいものにしたかった。

それゆえ時間遡行という難易度の高い荒業を使い、
ラストシーンは、
江戸に旅立つ十二歳の稔麿のシーンで終わらせている。
歴史・時代小説という古い器に、
新たな酒を入れることに成功した一作。

****

五編目の『英雄児』は
長州藩京都藩邸留守居役の乃美織江の視点から、
桂小五郎を描いた作品。

志を持たない官吏にとって、
幕末という時代は迷惑以外の何物でもなかった。

乃美織江もそうした一人だったが、
歴史の皮肉か、
幕末京都の中で最も危険な長州藩京都藩邸留守居役に就いてしまう。
本作品中のベストチューンだと自負している。

幕末は熱い。

本来、戦国よりも幕末が好きだった私にとって、幕末の志士たちを描くことは長年の願望だった。
それがこうして実現できて感無量である。

(筆者注 : 伊東潤の幕末小説の第一弾は
『義烈千秋 天狗党西へ』になります。
https://amzn.to/2KZBDPN )

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3.おわりに
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さて、いかがでしたか。

志士というのは、
自らの信じることのためには
命さえも投げ出すことのできる
不思議なメンテリティを持つ人々です。

確かにこの時代、
個人的な名利や地位を目的とせず、
自らが捨て石となっても、
日本をよい方向に導こうとした人たちが多くいたことは確かです。

そうした「無私の心」を持つ人たちこそ志士なのです。

こうした混迷の時代だからこそ、
われわれも志を持って生きねばなりません。
幕末の志士たちは、それを教えてくれています。

ちなみにこの作品集は、
『壬生義士伝』への強烈なアンチテーゼになっています。

平成に残る名作に対抗しようなど、
おこがましいかもしれませんが、
私も平成を生きる歴史作家の一人として、
『壬生義士伝』に対する
アンサーソングを書きたかったのです。

家族のためよりも志のために死んでこそ男だと、私は思っています。

*****************

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どうか、よろしくお願いします。

それでは次回のメルマガをお楽しみに!

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4.伊東潤Q&Aコーナー
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さて、久しぶりのQ&Aコーナーです。
今回は油ノ井四郎様からです。

Q :
小田原生まれの私は北条氏の大ファンです。
北条五代祭りは昔、
お城まつりと呼ばれていました。
今よりももっと賑やかでした。
小学生の時に鼓笛隊の一員としても
参加した思い出があります。
最近、伊東先生の活躍を知るにつれ、
故郷をふたたび調べ始めました。
さて、先生は「小田原評定」をどう思われますか?
私の不勉強からか、
すでに書かれていらっしゃる書物等がありましたら
メルマガなどで取り上げてくだされば幸いです。
(油ノ井四郎様)

A:
その名も『小田原評定』という研究本があり、
私も持っていますが、
今は廃刊となっており、古本でも入手困難です。
ただし最近の黒田基樹先生の諸作などでは、
小田原評定についても書かれているので、
それだけで十分だと思います。

*****

インタラクティブを心がけている、
伊東潤のメルマガでは
皆様のお悩みを、
歴史上のエピソードになぞらえてお答えしていきます。

今後、こちらのコーナーもより活性させていきたいと思いますので、
是非お気軽に以下のリンクよりお送りください。
https://goo.gl/forms/QC0Pu5E4B76NjAyg2

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5.お知らせ奉行通信
新刊情報 / 読書会 / その他
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【新刊情報】
☆文庫版『池田屋乱刃』(講談社) 
5月15日発売予定
「あの暑い夜に何があったのか」
世に名高い新選組の池田屋事件。
しかしそれは、これまで新選組サイドから語られてきたものばかりで、
志士の側から描いたものはありませんでした。
それを伊東潤が、最新の研究成果を元に描き出します。
しかも同一事件綿視点から描くという多視点群像劇+連作短編という構成的にも面白い作品になっています。
https://amzn.to/2rdZWkJ

☆『ライト・マイ・ファイア』
(『アンフィニッシュト』改題) 
(毎日新聞出版)6月22日発売予定
「サンデー毎日」誌に、
一年余にわたって連載していた『アンフィニッシュト』が、『ライト・マイ・ファイア』と改題され、装いも新たに
単行本(ソフトカバー)として発売されます。
伊東潤の全知全能を傾けた
社会派ミステリー超大作です。
すでに以下よりご予約も可能です。
https://amzn.to/2IocxYX
詳細は6/6発行のメルマガでお知らせします。

【読書会情報】
次回の読書会の開催は6/9(土)となります。
今回は第一回ファン・ミーティングとして
『ファンベース』(ちくま新書)を
課題図書として、「読書をもっと面白くする」を話し合います。
お申し込みはPeatixからですが、
すでに満席御礼となっています。
https://peatix.com/event/375014

また8/11(土)の第十回読書会は、
今年10月発売の新刊『男たちの船出』を事前にPDFでお送りし、
その感想を読書会で論じ合い、
それを作品に反映させていきたいと思っています。
『ライト・マイ・ファイア』でやったのと同じ形式です。

【テレビ出演情報】
5/19(土) 「諸説あり」小牧・長久手の戦い(後編)
5/12放映の前編はご覧いただけましたでしょうか。
是非、後編もご覧ください。
http://www.bs-tbs.co.jp/culture/shosetsuari/

【ラジオ出演情報】
NHKラジオのレギュラー放送は、いつも通りあります。
この番組は「マイあさラジオ」といって、
NHK第一放送で毎日やっているものです。
私の担当は土曜日で隔週です。
だいたい朝の7:30から始まります。
今は第二と第四土曜になります。
http://www4.nhk.or.jp/r-asa/

【オープンセミナー・サイン会情報】
☆5/19(土)「くまざわ書店南千住店」
サイン会参上
このサイン会は、誉田龍一氏の呼び掛けに応じた作家が二十人余も集まってサイン会を開催するという一大企画です。
リアルタイムの情報は以下よりご確認ください。
5/19(土) 15:00~17:00
https://twitter.com/ash1208kmzw

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