「伊東潤の短編集を読む」 【伊東潤ブックコンシェルジェ】
「伊東潤作品を読んでみたいけど、どれから読んでよいのかわからない..」。
そんなあなたに伊東潤コミュニティメンバーからおくるブックコンシェルジェ。
新たな伊東潤作品の出会いを応援します。
【今回の選者:いがさん(@igadani)】
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伊東潤の短編集を読む
本屋さんに行くと伊東潤さんの本がたくさん並んでいます。多くの方が抱く印象は分厚いハードカバー、大長編(上下巻だったり)ではないでしょうか。そこで臆してしまうあなたへ。伊東さんは実は短編の名手でもあるのです。
実際、過去に直木賞候補に選出された五作品(「城を噛ませた男」「国を蹴った男」「巨鯨の海」「王になろうとした男」「天下人の茶」)はいずれも短編集なのです。
まずは、お手軽に読むことができる短編集から手に取ってみてはいかがでしょうか。
今回はぼくがお薦めする三作品を紹介します。
『城をひとつ』(新潮文庫)
小田原北条氏の家臣である大藤一族の活躍を描いた連作短編集です。
この大藤一族は「入込」という特殊技能を使って敵方の城に潜入して攪乱したり、城を奪ったりする諜報戦を得意とするのです。
戦国時代のスリリングな諜報戦、伊東流リアル忍者の活躍に興奮必至です。
そして、もちろんすべて史実に基づいたストーリーであることにも驚いてください。お城がたくさんでてくるので、お城好きな方には特にお薦めです。
伊東さんの強みである歴史解釈力とストーリーテリング力が遺憾なく発揮された作品です。決め台詞「城をひとつ、お取りすればよろしいか」に痺れてください。
『池田屋乱刃』(講談社文庫)
池田屋事件といえば新選組ですが、本作は襲撃された志士側から描いている点が伊東さんらしい視点です。「志士たちを突き動かした熱とはなんだったのか」を描いています。
そして伊東作品の中で、ぼくが個人的に最も美しい構成と思っている連作短編集です。五人の志士たちの視点で池田屋事件が語られます。ですので、同じシーンがそれぞれの短編主人公視点で描かれる楽しさがあります。
最初の一編「二心なし」は、新選組の雇われスパイが次第に志士の熱にあてられていく話です。対照的に、最後の一編「英雄児」は志士・オブ・ザ・志士である桂小五郎の話です。桂小五郎視点で語られる池田屋事件の真相に、読者は言葉にならない感情を抱かざるを得ないでしょう。
また、本作は雑誌連載時は各短編の順番が逆だったということにも驚きです。是非二度目は逆から読んでみましょう。連作短編集の醍醐味が本作にあります。まさに、伊東潤恐るべし! です。
『国を蹴った男』(講談社文庫)
戦国時代を題材にしたオムニバス短編集です。あえてテーマを挙げると敗者たちの物語となるでしょうか。ただし、時代が違えば勝者になり得た者たちの物語として読むことができます。
いや、そもそも勝ち負けを決めるのは誰なのか。自分自身が勝ちであると思えた者こそが勝者で良いのではないか。現代を生きる我々にも通じるマインドを、本作は示唆してくれているのではないでしょうか。
さらに、表題作「国を蹴った男」は時代歴史短編小説のオールタイムベストで、並みいる古今のレジェンドたちを押しのけて第一位になった作品です・時代歴史短編小説で何を読めばいいか迷ったら「国を蹴った男」一択です。時代歴史短編小説の面白さのすべてが詰まっています。
いかがでしたでしょうか。気になる作品がありましたら、是非お手に取ってみてくださいね。
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