刑訴法①〜民事とだいぶ違うよ〜

今回は刑事訴訟法、略して「刑訴法」(けいそほう)を扱ってみたいと思います。文字通り、これは刑事裁判のルールを定めたものです。

ここでついでに刑事と民事のちがいを。民事裁判は個人対個人の争いです(なおこの「人」には法人も含まれ、企業や団体などである場合もあります)。「怪我させたんだから賠償しろー!」「家賃払わないなら出ていって!」などなどが民事での争いです。ここでは両者が公平・公正に主張し合う機会があることが最重要となります。スポーツのようなフェアネスが大事なのです。

一方の刑事裁判は「国」対個人という構図で、国家による重大な人権侵害でもある「刑罰」につながるプロセスであるためルールは慎重、厳格なものとなっています。戦前・戦時中などの「とにかく国に歯向かったら牢屋にいれるぞ!」という政府の横暴を許さないことが最重要という歴史的背景もあり、刑訴法は基本的に国家権力の側を拘束するものとなっています。そうして刑事裁判は「人権保障」に最大限配慮をしています。

交通事故の事例を紹介します。Yが重大な事故を起こし、刑事裁判で業務上過失致傷罪に問われる案件があるとます。Yの運転はどうだったのか、悪かったのか、を検討した結果、有罪となれば例えば罰金は国に支払うこととなります。一方、事故の被害者は民事裁判で損害賠償をYに請求することができます。この場合、被害者側の落ち度なども考慮しつつ、最終的に認められればYは賠償金を被害者に支払うこととなります。このそれぞれが刑事責任、民事責任と呼ばれるものです。

またもう一つの違いとして「和解」というものがあります。「本人たちがまぁいいやっていうのなら、裁判を続けなくていいよもう」と打ち切るのですが、これは民事ならではの結論。刑事では「犯人が認めてるからもういいよね」とはなりません。国家権力によって無理矢理認めさせられている場合もあるからです。公開された裁判所で、弁護士というプロの味方をつけた状態で裁判を受けさせること自体に意味があるのです。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、ここからは刑訴法の中身に触れていきます。刑事裁判のルールと上述しましたが、そのスタート地点は実は裁判所ではありません。刑事裁判の流れは大まかに、①警察官が逮捕する、②検察官が訴える(これを起訴といいます)、というプロセスを経て③裁判所で裁判が行われるわけです。刑訴法もこの3段階の手続きについて定めており、いかに裁判と同じくらい「準備」が重要かということを示してもいます。次回以降、①から順に説明していきたいと思います。


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