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花ざかりの校庭 (前半部書き直し)

彼の脳裏に、ふと麻里のことがよみがえった。


しかし、このまま浅子と別れることはまた、考えも及ばなかったのだ。


彼は立ち上がり、病院の外を眺めていた。


外はやけに薄暗く、雲が垂れ込めていた。


病院の重苦しい雰囲気が……彼の胸を締め付ける。


体だけ繋がって、心は別物?


そんな都合のいい具合にはいかない。


多分、浅子はそれができると思っていたのだろう。


男の高志ですらそれにかなりの抵抗を感じていた。


アタマで考えるほどに、心は都合良くできてはいない。


こういう時に限って、ちょっとしたことが気にかかる。


彼女の部屋の洗面台においてあった二人のコップ。歯ブラシ。


彼はため息をついた。


やがて、診察室のドアが開く。


さっきの看護師だ。


「……体調不良みたいですね」


と、言って彼に入るように言った。


中には入ると、浅子は簡易式のベッドの上で点滴を打ってもらっていた。


腕で顔を覆っている。


「……ゴメン、こんなことになっちゃって……大したことなかったみたい。貧血だって」


彼女はボンヤリとしていた。


「よかった」


高志は言う。




浅子は首をふった。

枕元に携帯があった。


「実家から兄が来るみたいで……」

メール?


なにやら込み入った話になりそうなんだ。


浅子は呟く。


「どうすればいい?」


帰るとはさすがに言えないのだ。


彼女が自分の前で倒れた以上、それは身勝手である。


支払いが終わると、彼女は立ち上がった。


そして病院の裏手にある庭に面したところに腰をかけた。


「……ダメね、私。悪人にもなれやしないい」


そう言うと、浅子は舌打ちしていた。


……嫌だな。


「……俺のこと?」


ちがう、貴方があの子のことを好きなんだってこと。


私は遊びといっておいてさ、遊びで終われなくなったみたい。

ねえ?あの子のこと……好きなんでしょう?


浅子は高志を見た。


……よく似てるんだ。

え?

貴女と。


浅子は彼をじっと見てから、


「……あの子?」

「うん」

「高志くん、あんた将来、すごい女ったらしになると思うわ」


そういって、髪を整え始める。


「その子、抹殺してやりたい」

当て付けで遊んでるなんて言うんじゃなかった。

「貴方のこと、騙しぬいてやればよかった」

彼女は悔しげに手櫛を…豊かな髪のなかに入れる。そして、髪を後ろにかきあげる。

ジップのパーカーを彼女は着た。


「ホント、あの写真、バレたのがミスだった」


彼女はひとりごちている。



高志は少し笑う。

「ああ、あれ?」

浅子は苦い顔をしている。

彼はテラスで微睡む患者たちに目をやっていた。


浅子は唇をかんだ。


自分らしくない……。

ヤバいくらいに目の前の少年との恋にはまっている。

浅子はこの時、気がついた。


ふと、芝生のくすんだ青に目を落とす。

河合竜二のことを思い出す。

福岡でサッカーをしている彼女の元彼である。


当てこすりでつき合った筈の高志の方が彼女のことを大切にしてくれた。

情欲が何かの拍子に彼女の胸の奥からつきだしてくる。

この9ヶ月あまり、二人は何度も逢った。

最初、繋がった時、彼はまだ女性を知らないことは明白だった。

彼女の胸に手をやって、幼い愛撫をしていた彼。



浅子はゆっくりと彼を受け入れて、二人の身体を確かめ合った。

浅子は縺れ合いつつ、彼を上から奪った。

「……いい?」

自分の中に、彼の一部が入る。

それは熱かった。

彼女の下半身もその部分がじんわりと熱くなる。

じっとりと中で濡れていく。

お腹の中で、それは硬くなって、ひくひくする。

浅子は眼を閉じて、彼の胸に頬を寄せた。

彼は気を利かせて浅子を愛撫しようとする。

どこかいたいけなその行為に好感を抱く。

浅子は少年に口づけをしてから、からだをゆっくりと動かし始めた。

ふいに、高志の体がピクッと痙攣する。

まさか行きそう?

アタマのなかに酸っぱいレモンのような感覚がはしる。



やがて、彼女は夢中になっていた。

二人は波のように揺れながら、遠い潮騒の音を聞いていた。

アタマの奥で珊瑚礁の淡いピンク色が火照っていた。

硬くなった彼女の胸の先に少年の指が触れる。

泣きたいくらい切ない気持ちになる。

彼は何度も彼女の名前を呼んだ。

浅子は少年の胸を唇に含む。

そして、そっと歯をたてた。

おへその下の中に入った彼のそれは熱くて硬い。

もしかしたら前世で、二人はこうやってむつみあったのかも知れない。

彼女はふと、そう思った。



浅子はまた波になる。

彼女は高志のそれと密着するように繋がっていく。

やがて少年は何度か痙攣した。

「いく?」

彼女は囁く。

高志は虚ろな目をしていた。

彼女はじんわりと来る波によっていた。

「キスしてくれる?」

小さな声で囁く。

高志は言われた通りにキスをした。



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淳一
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