【空白の66時間のタイムテーブル】2018年11月1日 衆議院 橋本岳議員発言との整合
台風7号が九州に接近した2018年7月3日以降、西日本を中心に記録的な豪雨に見舞われ、14府県で220人が死亡、12人の安否が不明となった平成30年7月豪雨。
(人数は7月20日の毎日新聞報道より)
7月4日14時に気象庁が大雨としては異例の緊急会見で事前に注意喚起を促した一方、政府が非常災害対策本部を設置したのは、この記者会見から実に66時間も経過した7月8日8時であった。これを筆者が「空白の66時間」と命名して7月8日15時にnoteで時系列を整理したタイムテーブルを公開。
Twitterのリツイートは2000件以上、note記事の閲覧は4万件を超え、政府の初動対応の遅れに注目が集まった。
一方、与党側からは「政府はしっかりと対応した」という意見があることも事実だ。
本記事では、2018年11月1日 衆議院予算委員会での災害対策 補正予算案審議 質問における自民党・橋本岳議員の「政府は迅速に対応した」という発言について、空白の66時間との整合を検証したい。
空白の66時間のタイムテーブル(真備町追記版)
自民党・橋本岳議員は岡山4区(倉敷市など)の選出であり、豪雨で大きな被害を受けた地域の住民として、真備町や倉敷市の被害状況を例に挙げながら質問に立っている。そのため、タイムテーブルの右側に新たに「真備町の被害状況」を追記した。
真備町が急速に浸水し始めたのは7日午前1時半頃。
その直前の6日夜は首相動静の記録が無く、総理の行動は謎に包まれていた。だが、実は総裁選に向けた無派閥議員の囲い込みを目的とする極秘会合にこっそりと参加していたことが後に日本テレビのスクープで発覚する。わざわざ人目を忍んで開催していたことからも、進行中の豪雨災害の深刻さは理解した上での行動と考えられる。
また、話題になった赤坂自民亭はその前日の5日夜の開催。つまり、安倍総理は2日連続で災害対応よりも自らの総裁選の票固めを優先した。
空白の66時間のタイムテーブルと橋本議員発言の整合
上図は、橋本議員の質問内容をタイムテーブルの右側に書き起こし、時系列の整合を矢印で結んだ結果だ。(画像をクリックすると拡大表示が可能)
以下、橋本議員の質問内容に沿って、見ていきたい。
橋本議員:
災害対策を中心に伺いたいと思います。まずは、平成30年7月豪雨災害。
(中略)
本会議で何名かの方から、その・・「災害対策遅いんじゃないか」という話がございました。私はこの指摘は全く当たらないと思っています。
まず冒頭に「災害対策が遅い」という指摘は誤りであると明言した上で発言を始めている。そして、質問者という立場でありながら、質問は全く始まらず、なぜか政府による真備町などへの支援の実績をここから5分超に渡って説明し始める。
橋本議員:
真備町の話をすれば、6日の深夜から7日0時ごろに洪水が起こったのではないか、証言や報道からそう言われますが。6日の夜中に洪水が始まった。
この発言の通り、6日深夜から洪水が始まったと考えられる。
タイムテーブルから一部を抜粋すると以下のような流れになる。
7月6日22:00 真備地区全域に避難勧告
7月6日23:45 小田川の南側に避難指示
7月7日1:30 小田川の北側に避難指示
(その4分後に堤防が決壊。急速に浸水が始まり、救助要請が相次ぐ。この頃から死者が出始めたと考えられる)
✳︎短時間で急速に進んだ浸水のシミュレーション映像は以下リンクより閲覧可能
朝日新聞社「真備町での浸水を再現 東京理科大 二瓶泰雄教授提供」
(最終アクセス日時:2018/11/3 15:00)
https://www.youtube.com/watch?v=RLQ7CZYrdSs
橋本議員:
最初の自衛隊員が真備町に到着したのは7日の午前5時と言われ・・、伺い・・、聞いてます。
この発言については、根拠となる公式資料を見つけられなかったため、真偽は不明である。少なくとも、内閣府の資料には関連する記載は見当たらない。
内閣府「平成30年7月豪雨による被害状況等について」
(最終アクセス日時:2018/11/3 15:20)
http://www.bousai.go.jp/updates/h30typhoon7/index.html
また、自衛隊が「到着」した後に実際にどのような「救助」活動をしたのかを橋本議員はなぜか言及しない。これ以降の緊急消防救助隊や国交省ポンプ車の例では具体的な活動内容を述べているのに、だ。
さらに、「7日午前5時」と述べた後に何度か言い直している点も気がかりだ。
橋本議員:
で、その朝には岡山県知事が災害救助法適用を決定して7時には県と内閣がこれを発表している。その日の朝10時には関係閣僚会議が行われてます。
これは事実の通り。だが、すでに真備町の4分の1にあたる1200ヘクタール(東京ドーム256個分)が浸水し、死者が出始めていたと考えられる7月7日午前の時間帯に「会議」の話をされても説得力に欠ける。
橋本議員:
そして、その日の午後1時半頃には緊急消防援助隊の愛知県の大隊が真備町到着し、救助活動を始めている。あるいは防災ヘリ等も各県から来ていただいて救助活動が始まっています。翌日8日から国土交通省のポンプ車が20台くらいズラッと川沿いに並びまして、排水を開始しました。これが時間かかるかと思っていたら翌日にはすっかり排水が完了するということで迅速さに驚いたわけでございます。
先ほど述べたとおり、自衛隊の例とは異なり、緊急消防救助隊や国交省ポンプ車の活動内容を詳細に説明している。
橋本議員:
11日には総理にも真備町あるいは倉敷市の避難所にお越し頂きました。
ありがとうございました。
(中略)
実に迅速に取り組んで頂いたと私は思っております。
(中略)
これがどうして遅いと言われるのか私には全く理解できません。
洪水4日後に総理が避難所に来たことをアピールしているが、総理が避難所に来ることは迅速な災害対策とは全くの無関係である。
また、橋本議員は質問者の立場でありながら、こうした政権擁護が目的と思われる説明に5分半も費やした後、わずか40秒ほどで質問を終えている。
その質問内容は「決壊した川の改修の見通しについて」であった。
✳︎本記事は以上です。内容に価値を感じて頂けた方は、画面下部の「サポート」から任意の金額のカンパをお願いします。今後の情報発信の充実に活用します。
参考情報
当日の質問映像(1時間8分45秒〜1時間13分58秒ごろ)
https://www.youtube.com/watch?v=Oy1WciSasi4
ロイター「岡山・真備町襲った洪水、現実となった住民の長年の懸念」
https://jp.reuters.com/article/weather-japan-failures-insight-idJPKBN1K61KM
被災者の手記 西日本豪雨災害
https://note.mu/zerofagi/n/nc76e699f5b78
✳︎実際に被災された真備町の住人の方が豪雨時の避難を時系列に沿ってレポートしています
更新履歴
2018/11/3 15:57公開
2018/11/4 21:36 更新
・空白の66時間のタイムテーブルのみの拡大画像を掲載
・真備町の被害状況の説明を追記