【信号無視話法】2019年3月22日 NGT48山口真帆さん暴行事件調査報告書 AKS記者会見
2019年3月22日午後、NGT48を運営するAKSは山口真帆さん暴行事件の第三者委員会による調査報告書について記者会見で説明。記者会見開始から40分ほど経過した頃、事件の被害者である山口真帆さん本人が会見内容に反論するツイートを投稿し、会見の質疑に大きな影響を与えた。
本記事では、これまで国会答弁を視覚化してきた「信号無視話法」の分析手法で、約2時間55分に及んだ記者会見の質疑を視覚化する。具体的には、会見に出席した3名(松村取締役、早川支配人、岡田副支配人)の中で大半の回答を行なった松村取締役の回答を山口さんの反論ツイートによる影響を加味して分析していく。
✳︎信号無視話法の分析事例は筆者のハーバービジネスオンライン記事、3カ国語で発信中のYoutubeチャンネル「赤黄青で国会ウォッチ」(日本語版 / 英語版 / フランス語版 )を参照
信号無視話法のルール説明
信号無視話法分析では回答者の質問内容を以下の配色ルールに沿って、直感的に視覚化していく。具体的には、信号機のように3色(青はOK、黄は注意、赤はダメ)で色分けする。これによって、回答者は本当に質問に答えたのかが一目でわかる。
前提条件
・筆者は、山口真帆さん暴行事件について報道などで公になっている以上の情報を一切知らない。そのため、山口さんとAKSで主張が食い違っている点の真偽は判断できない。
・また、信号無視話法分析では「質問内容に答えか」に着目する手法である。
つまり、この分析では松村取締役の回答が事実かどうかは考慮しない。当日の記者会見中のツイートで山口さんが「嘘だ」と指摘した内容であっても、松村取締役が質問内容に回答さえすれば青信号として判定する。
分析対象
約2時間55分に及んだ記者会見の内、以下の質疑を対象とした。
<分析対象>
・開始から1時間16分頃までの松村取締役の全質疑
→結果は以下2つに分けて、本記事に掲載
「山口真帆さん反論ツイート前の松村取締役の全質疑」
「山口真帆さん反論ツイート後の松村取締役の質疑」
・当日の山口さんツイート内容に関係する松村取締役の全質疑
→結果は「山口さん反論ツイートに関する質疑抜粋」と題して、本記事に掲載
考察1
松村取締役の論点すり替え
赤信号で答えたくない質問を推察
まず、論点すり替え(赤信号)に着目する。
この棒グラフは松村取締役が論点すり替えを行った回数を質問内容毎に整理している。回数が多い内容ほど、松村取締役が正面から答えようとしなかったと言える。
「ファンと繋がりのあったメンバー12名」に関する質問は実に15回もすり替えている。これは、調査報告書に記載された下記文言に関する質問だ。
<調査報告書22ページ「ごく一部のファンとメンバーとの関係」より引用>
メンバーからの事情聴取の結果、確たる証拠はないものの、ファンから聞いた、あるいは、メンバー内の噂として聞いたとして、36名のメンバーから、他のメンバーとファンとの「つながり」に関する供述があった。
その際、12名のメンバーの名前が具体的に挙がった。
以下、当日に挙がった質問の一部。
・繋がりのあったメンバーは不問のまま?
・運営は以前からメンバーを調査していた?
・今日の山口さんツイートと調査報告書に齟齬が生じている理由は?
・事件にメンバーの関与がないと判断できた根拠は?
・今日の山口さんツイートとメンバーの言い分が食い違う中、メンバーの意見だけを信じる理由は?
・今日のツイート「繋がっているメンバーは全員解雇と約束した」の事実関係は?
・昨年12月末に似た事案で1人処分しながら、今回の12人は処分しない理由は?
・今後、被疑者との繋がりの確証が出たメンバーは処分する?
・事件に関係しなければ、ファンとのつながりがあっても構わない?
・今日の山口さんのツイートの事実関係をどう判断する?
・今日のツイート「犯人グループとの交際を認めたメンバーもいます」を見ても、12人を不問にする?自分を暴行した犯人と交際しているメンバーがいるのは山口さんからすれば相当怖いはずだが
などなど、記者たちは何度もこの問題を質問するが、松村取締役は「ファンとの繋がりの定義」や「コミュニケーションをしっかりとる等の曖昧な方針」などにすり替えて、この質問には頑なに答えない。
また、松村取締役は「ファンとメンバーの繋がりに確たる証拠はない」という趣旨の回答を度々するが、会見中に山口さんのツイートによって否定されている。
次に、「スタッフとファンの交流」に関する質問は7回も論点がすり替えられた。インターネット上で今村前支配人と犯行グループの繋がりが指摘されていたこともあり、多くの質問がなされた。
以下、当日に挙がった質問の一部。
・スタッフと一部ファンの私的領域での接触の調査結果は?
・スタッフと一部ファンに交流があった?
・今村前支配人と犯行グループの繋がりは?
・スタッフが一部ファンを優遇した事実はある?
などなど、記者たちは何度も質問するが、松村取締役は「メンバーとファンの交流」や「ファン交流の教育方針」など論点を微妙にずらして、頑なに答えない。
3位以下の説明は割愛するが、松村取締役が正面から答えなかった質問がこれだけあるという「事実」をこの棒グラフは示していると言えるだろう。
考察2
松村取締役と山口さんの主張の食い違い
色別集計で信憑性を推察
次に、松村取締役回答の色別集計を以下2つの切り口で分けた円グラフを示す。
左:会見開始から40分頃まで(山口真帆さんが反論ツイートをする前)の全回答
右:会見開始40分以降、山口真帆さんの反論ツイートに関する質問への全回答
左右の円グラフを見比べて、最も伸びているのは赤信号で+14%(23%→37%)。一方、青信号は-15%(66%→51%)。つまり、反論ツイートに関する回答において、松村取締役は論点すり替えを行う割合が増え、質問に正面から答えなくなったことが客観的な事実として言える。
また、もう1つ注目したいのが灰色だ。これは「あのー」「えー」などの不要な言葉や同じ言葉の繰り返しを指している。人は誰でも発言の中でこうした不要な言葉が混じるものだが、その割合には個人差がある。淀みなく喋れる人もいれば、「あのー」「えー」ばかりで言葉が聞き辛い人がいる。だが、松村取締役の場合は同一人物の回答でありながら、+4%(9%→13%)とわずかながら伸びを見せている。これは、山口さん反論ツイートに関する回答をしていた際、より強い緊張状態にあったり動揺していた可能性があると言える。
当日の山口さんの反論ツイートと松村取締役の主張で大きく食い違っている点が幾つかあるが、冒頭の前提条件でも述べた通り、これらについての真偽は筆者には判断できない。
<山口さんと松村取締役の主張の相違点>
・松村さんが山口さんに1月10日の劇場での謝罪を要求したかどうか
・第三者委員会の調査前、「被疑者と繋がっているメンバーを全員解雇する」と松村さんが山口さんに約束したかどうか
・犯行グループとの交際を告白したメンバーがいるかどうか
だが、以下2つの「事実」から判断して、山口さんの主張が正しい可能性が高いと「推察」することはできる。
<事実>
・松村取締役は山口さんの反論ツイートに関する回答では、論点ずらしが14%増えた
・松村取締役は山口さんの反論ツイートに関する回答では、不要な言葉や同じ言葉の繰り返しが4%増えた
なぜならば、松村取締役の主張が正しいのであれば、質問に正面から答えれば良いだけの話だからだ。論点をずらし、しどろもどろになっている時点で、松村取締役の主張の信憑性には疑問符がつく。
最後に、繰り返しになるが、筆者は山口真帆さん暴行事件について報道などで公になっている以上の情報を一切知らない。そのため、山口さんとAKSで主張が食い違っている点の真偽は判断できない。だが、ここまで積み上げてきた客観的な「事実」がどちらの主張に正当性があるのか判断する助けになれば幸いだ。
-----------------------------------------------
以下、考察2点を導くために信号無視話法分析した質疑内容
信号無視話法 分析結果
山口真帆さん反論ツイート前の松村取締役の全質疑
以下、山口さんが反論ツイートをする開始40分頃までの質疑を信号無視話法分析した結果。
4問目に論点のすり替えが見られるため、赤信号と判定。
質問内容:調査報告書に対する山口さんの納得の有無
↓すり替え
回答内容:山口さんの心の傷
また、山口さんの主張と食い違う部分はあるが、質問には回答している箇所は青信号と判定している。これ以降も同様。
5問目に論点のすり替えが見られるため、赤信号と判定。
質問内容:スタッフの私的領域接触の調査結果
↓すり替え
回答内容:メンバーの私的領域接触が判明した経緯
太字で示したように、「スタッフ→メンバー」や「調査結果→判明した経緯」と微妙に論点をずらしている。これは質問を勘違いしたのではなく、意図的に論点をずらしている可能性が高いと考えられる。
スタッフの一部ファンとの私的領域での接触は、この後も繰り返し質問される内容だが、松村取締役はこの点に関しては、論点すり替えに終始し、頑なに答えない。
1問目に論点のすり替えが見られるため、赤信号と判定。
質問内容:運営スタッフのファン交流の有無
↓すり替え
回答内容:ファン交流の定義
質問内容:運営スタッフのファン交流の有無
↓すり替え
回答内容:ファン交流の教育方針
やはり、スタッフとファンの交流や接触には頑なに答えない姿勢が読み取れる。
3〜4問目に論点のすり替えが見られるため、赤信号と判定。
質問内容:ガバナンス等に秋元康氏が関与するか
↓すり替え
回答内容:ガバナンス等の中心的な担当者
質問内容:ガバナンス等に秋元康氏が関与するか
↓すり替え
回答内容:クリエイティブな部分に秋元康氏が関与するか
秋元康氏に関する質問にも答えない。
2〜3問目に論点のすり替えが見られるため、赤信号と判定。
質問内容:12月28日以降の対応の経緯(特に劇場での謝罪)
↓すり替え
回答内容:問題を深刻化させた原因
質問内容:今村前支配人に対応を委ねたのか
↓すり替え
回答内容:問題を深刻化させた原因
事件発生後の対応内容や経緯についても答えない。
2問目に論点のすり替えが見られるため、赤信号と判定。
質問内容:運営スタッフとファンの繋がりの有無
↓すり替え
回答内容:調査報告書への言及
質問内容:運営スタッフとファンの繋がりの有無
↓すり替え
回答内容:今後の対応方針
やはり、ねとらぼが(2)〜(3)のスライドで質問した時と同様、スタッフとファンの交流や接触には一貫して答えない。
2問目に論点のすり替えが見られるため、赤信号と判定。
質問内容:一部ファンを優遇した事実はない」という回答は調査結果か
↓すり替え
回答内容:ファンとの私的なつながりの定義
質問内容:一部ファンを優遇した事実はない」という回答は調査結果か
↓すり替え
回答内容:今後の対応方針
これまで同様、スタッフとファンの関係に関する質問には一切答えない。
この質疑の最中、会場内の記者がこう発言し、状況が一変する。
「山口さんツイートがあった」
会場がざわつき、これ以降の質疑にも大きな影響を及ぼしていく。
この時点で会見が開始してまだ40分程度。会見はまだ2時間以上も続いていく。
信号無視話法 分析結果
山口真帆さん反論ツイート後の松村取締役の質疑
以下、山口さんが反論ツイートをした40分頃から1時間16分頃までの質疑
信号無視話法 分析結果
山口さん反論ツイートに関する質疑抜粋
以下、記者会見当日の山口さん反論ツイートに関する質疑の抜粋。
「山口真帆さん反論ツイート後の松村取締役の質疑」で紹介した内容と一部重複あり。
記者の質問が「どう思うか?」という曖昧な聞き方なので、質問に対する回答(青信号)と判定したが、その内容は意味不明である。また、灰色も多く、動揺がうかがえる。
✳︎本記事は以上になります。内容に価値を感じて頂けた方は下部の「サポート」ボタンからサポート(投げ銭)をお願いします。今後の情報発信の充実に活用させて頂きます。
参考情報
NGT48第三者委員会調査報告書
2019年3月21日更新(最終閲覧日:2019年3月22日)
THE PAGE 会見動画「NGT48山口真帆さん暴行事件で第三者委の報告書を説明」
2019年3月22日更新(最終閲覧日:2019年3月24日)
更新履歴
2019/3/23 14:24
新規作成(山口真帆さん反論ツイート前の松村取締役の全質疑まで公開)
2019/3/24 16:19
追記(山口真帆さん反論ツイート後の松村取締役の質疑を公開)
2019/3/24 22:46
追記(山口真帆さん反論ツイートに関する松村取締役の質疑を公開)
2019/3/25 20:34
追記(考察2点を公開)