【読み切りショート】紅葉の約束
「あの日のこと、覚えてる?」
彼女の声が、静かな部屋に響いた。窓の外には、秋の風が木々を揺らしている。
「もちろん、忘れるわけないじゃない。」
私は微笑みながら答えた。彼女との思い出は、いつも心の中に鮮やかに残っている。
大学時代、私たちは同じサークルに所属していた。彼女はいつも明るく、周りの人々を笑顔にしていた。私もその一人だった。
「ねえ、今度の週末、どこか行かない?」
彼女が突然誘ってきたのは、秋の始まりだった。私は驚きながらも、嬉しさを隠せなかった。
「いいね、どこに行く?」
「紅葉が綺麗な場所があるんだ。行ってみたいなって思って。」
彼女の目が輝いていた。その輝きに引き込まれるように、私は頷いた。
週末、私たちは電車に乗って郊外へ向かった。紅葉が見事な山道を歩きながら、彼女は楽しそうに話していた。
「ここ、本当に綺麗だね。」
私は感嘆の声を上げた。彼女は微笑みながら、私の手を握った。
「一緒に来てくれてありがとう。」
その瞬間、私は彼女の存在がどれほど大切かを再確認した。
時が経ち、私たちはそれぞれの道を歩むことになった。彼女は夢を追いかけ、私は仕事に追われる日々を過ごしていた。
「元気にしてる?」
久しぶりに彼女から連絡が来たのは、ある冬の日だった。私は懐かしさと共に、彼女の声を聞いた。
「うん、なんとかね。そっちは?」
「私も元気だよ。今度、また会えないかな?」
彼女の言葉に、私は胸が高鳴った。
再会の日、私たちはあの紅葉の山道を再び訪れた。季節は冬に変わっていたが、彼女の笑顔は変わらなかった。
「あの日のこと、覚えてる?」
彼女の声が、静かな部屋に響いた。私は微笑みながら答えた。
「もちろん、忘れるわけないじゃない。」
彼女との思い出は、いつまでも心の中に鮮やかに残っている。
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