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【連載小説】薔薇の流儀「ユニバース西へ(後編)」The Universe Goes West: Part2.



前編のあらすじ

東京丸の内から暗黒七星として知られるダークセブンが武器や化学兵器製造を行う関西工場地帯へ調査隊が潜入し、そのデータ解析に成功を収めた。

そして、そこで人類と同等かそれ以上の科学力を持つ異種族が居住していることが発見された。しかし、東京将軍アヤと大阪将軍アンは、その調査を一方的な侵略と見なし、ユニバースへと東京大爆破と世界各国の首都攻撃の報復を通告する。

この重大な事態を受けて、国際警察は世界各地から科学者を集め、六甲山の防衛センターで防衛会議を開催する緊急予定会議を予定した。この会議に参加すべく、虎ノ門とユニバースのメンバーは急遽、神戸へと向かう。

その途中、外国人のみが狙われる連続殺人事件が起こる。実は殺害された外国人たちは国際警察の科学者ばかりだった。ユニバースがダークセブン関西基地に調査ロケットを送り込んだ事が、ダークセブン大阪将軍に侵略行為と見做され、彼らが報復を開始したのだ。

虎ノ門とみやびを含むユニバース直属のM5ことギークガールズのメンバーは「ユニバースの頭脳」と呼ばれる若き女性科学者ローリー・アンダーソンの護衛に当たり、六甲・神戸へ赴く。神戸の街の暗闇。ホテルプラザ界隈で、赤坂みやびは単身で謎のAIロボットの死闘が開始された。

ロボットの怪力になす術のないみやび。絶体絶命の赤坂みやびの運命やいかに?? 急行するギークガールたちに秘策はあるのだろうか?? そこへ到着する一台の車両から金髪の女性が降り、アタッシュケースを開いた。


その途端、ロボットは電子音を鳴らしつつ、動きが停止して、みやびから体を離して起き上がった。

気を失いかけたみやびは、ふと我に返り、やや驚いた表情で、金髪の女性を見上げ、こう言った。

「あ、あなたはもしかして、ローリー博士?」

彼女はなにも答えない。

と、そのとき、ローリーはアタッシュケースから取り出した小型コンピュータでキーを連打。

すると、金色のロボットは飛行形態と化して夜の闇へと飛び去って行くのだった。

みやびは寸前に自爆を停止させたスーツを降ろし、特殊レンズを取り出して、目測でロボットの行方を監視した。

「なぜ、急に空中へ?」

そこへ、虎ノ門と4人のメンバーが2台の車で駆けつける。

5人に気づいた男は腰から銃を抜こうとする。

銃口をみやびへと向けた瞬間に。

パンッ!!

虎ノ門の撃った弾丸が男の脚に命中して倒れこむ。

そして彼は崩れるようにして倒れ、液化しながら消滅していく。

それを見ていたみやびと4人が駆け付ける。

そして、ローリーに近づくと。

「ローリー博士、ご無事でしたか?」

「いかん、君たち、それはダークセブンの替え玉だ!!、近寄るな!!」

ローリーは大阪将軍アンが変身したニセモノで、本物のローリーは日本へ来る途中でダークセブンに拉致されていた事が判明する。

ここより、数時間前・・・・・

ニセのローリーことアンから送られた情報を受けて、防衛会議に出席する科学者2名を乗せ、米国から日本に向かっていた原子力潜水艦レイダー号は、ダークセブンの操る3機の金属物体に襲撃され、沈められてしまった。

そして、その3機の金属物体が今度は六甲に現れ、さきのロボットの飛行体と合体し、スーパーロボットに変ずる。

体長はおよそ50m。夜の神戸の街を進撃していく巨人。

地響きを立てて、ビル群を破壊していく。

警察と機動隊が駆け付けるも全くビクともせず、彼らの攻撃にも微動だにしない。

ただ、時間だけが過ぎていく。

さんざん街を荒らしまわる金色の巨大ロボット、クイーン・ジョー。

スーパーロボットはエネルギーが限界となり、一時撤退したが、ダークセブンの脅威が去ったわけではなく、非常警戒態勢は続いた。

ローリーの姿をした大阪将軍アヤが虎ノ門を含むユニバースの5人とみやびの前に姿を現し、みやびと二人だけでの話し合いを希望した。

ダークセブンのテロリスト養成機関「闇の華」で特務訓練を受けていたみやびを捕獲してダークセブンに連行して洗脳する。アンにはふたたび彼女をおびき寄せて誘拐する目的があった。

その任務が全うできなければ、アンは組織の訓練生で、闇の華のホープとされていた最大の裏切り者である赤坂みやびを抹殺すべく覚悟があるのだ。

「ボス、ここはわたしひとりで行きます」

「みやびちゃん、そんな。わたしたちも行く!!」

かけよってくる、4人。

虎ノ門も心配を隠せない。

「大丈夫。みんな。ここはわたしがなんとかダークセブンとの駆け引きに応じてロボットの破壊行為を止めてみせるわ」

虎ノ門は彼女の言葉と力を信じてそれを委ねる。

二人はレクサスに乗車して、走り去った。

キングクイーンロボットとの戦いにおいて、みやびは代表者として、ユニバース側は新兵器の開発を中止することを約束した。

この約束により、大阪将軍アンとロボットも神戸から撤退することになった。

みやびは純真な気持ちでアヤとダークセブンの約束を信じた。

彼らもまっとうな人間ならばきっと約束は守るだろう。

アンもみやびに対して。

「みやびよ。ダークセブンの司令官として、お前との約束は守ろう。ローリー博士を釈放する。そして、われわれは今回の攻撃を停止して撤退しよう」

「アン、あなたを信じる。わたしも、もとはあなたたちの仲間だった。もうこれ以上、悪いことをするのはやめて。改心するのよ。きっとだよ」

「わかった。約束しよう。すぐに撤退するから安心しろ・・・・」

しかし、それと交換条件でダークセブンから解放されたローリーは記憶を完全に奪われていたのだった。

みやびは単身、ローリーを連れてタクシーを拾いいったん静寂に包まれた街を走り、ふたたび、虎ノ門たちと合流して、ホテルへと向かう。

ホテルの部屋に戻ると、ローリーは別室で休み、6人はゆったりと話した。


みやびはテンションを非常に上げて、自分がアヤとの終戦の約束を取り付けたことをユニバースの面々やローリー博士に報告するが、みやびの言葉に応えて喜ぶことはついになかった。

彼らはみやびとの大阪将軍らダークセブンが約束を守るとは、はなから思っていなかったのであろう。

「みやび、キミの言うことは分かるし、その気持ちは尊いと思う。しかし、やつらはダークセブンだ。いちおう次の手を考えて防衛策を練らねば」

「そうよ、みやび、そんなの信じられないよ」

「そうだよ」

「みやび、人が好過ぎるってば」

口々にみなそう言った。

みやびは激昂した。

半ばうっすらと涙を浮かべている。

「みんな何を疑ってるの。まず相手を信じることよ。そうでなければ人間は永遠に平和を掴むことなんてできっこないじゃない!!」

神戸の夜は刻一刻と闇へ包まれていく。

「もう。今日は遅い。みやびも他のみんなも疲れただろう。とりあえず仮眠だ・・・」

「ハイ」

5人はそれぞれが床へ着くと誰一人として口も利かず、休むのだった。

それから2時間が過ぎようとした。

そして、ついにダークセブンは約束を破り、ふたたび神戸に宇宙船団を大挙して呼び寄せ、更にはあのスーパーロボットによって神戸港を襲撃開始したのだった。

しかし、駿河や現役看護師の中野らM5の尽力により、ローリーは記憶を取り戻した。

そして、わずかな時間の中で、目覚めたローリー博士と共にユニバースの5人は助手として新兵器ライドンR77の完成を急いだ。

街中を大暴れするクイーンジョーロボット。

あたりは火の海に包まれている。

燃え盛る業火の中で一人の少女が怒りに震え、わなないている。

「おのれ、ダークセブン。わたしを、わたしを裏切ったな!!」

いかなる武装にも耐えうるとされたクイーンジョー。

戦車や航空からの攻撃にもビクともしない巨大ロボ。

ライドンR77は完成にはあと少し間に合わなかった。

虎ノ門は許可を得て、陸自のジープにM5のメンバーと乗り込もうとする。

「さぁ、出動だ。ユニバース特製、ダークセブン対空波動バズーカ砲撃でまずは仕留める。これなら一発だ」

しかし、彼らをみやびは静止した。

「わたしが行く。一人で行かせて」

「みやび。ばかな。キミ一人で手に負えんぞ。あんな巨大なバケモノに」

みやびは無言のまま、ジープに乗ると大阪将軍アンのもとに走っていく。

そこで待ち構えていた、仁王立ちのアンを発見した。

クイーンジョーの殺戮行為は止まらない。

多くの犠牲が出た。

街は火炎に飲み込まれあたり火の海。人々の泣き叫ぶ声が広がる。

消防が大挙して消火活動をするも、とても及ばない。

これ以上の被害は食い止められるのか。

波動バズーカはクイーンジョーに当たるもビクともしない。

ロボットから怪光線が幾度となく発射されて、みやびや駆けつけた虎ノ門らを攻撃にかかる。

大混乱のさなか、窮地に追い込まれるユニバースの面々。

ロボットは勝ち誇ったように進行を止めず、ポートタワーを直撃すべく、その方角へと向かっていく。

そこへ鈍い銀色のレクサスが急行し到着する。

ドアが開きローリーが叫ぶ。

「なんとか間に合ったわ! これをあのロボットに撃ち込んで!!」

「おお、博士。間に合ったか」

「一発しかないの。必ずそれで仕留めて」

「ようし、みんな手伝って支えてくれ。わたしが撃つ!!」

「ラジャー!!」

「目標までギリギリにまで接近する。火の粉を目に浴びないよう、気を付けるんだ」

ロボットはそれに気づいて必殺の怪光線で、5人を射程圏内に入れた。

その瞬間、動きがストップする。

リーダーの駿河メイが甲高い声で叫ぶ。

「ボス。今ですっ!!」

4人がそれぞれ支えていた小型の大砲を抱えて、虎ノ門が構えて狙う。

ユニバースとローリー博士は力を合わせ、スーパーロボットに対してライドンR77を命中させ、その結果、ロボットは木っ端微塵に大破した。

ズドドドドトドーーーーーン!!

逃げようとした大阪将軍アンも赤坂みやびの持つショットガンによって背後から狙撃された。

よろよろとうごめきつつ、アンは白目を剥いてのげぞるように倒れ、やがて痙攣しながら生き途絶えていく。

すると、その様子をうかがっていたダークセブンの偵察隊である飛行する船団は恐れをなし、神戸から東へと引き返していくのだった。

このように、みやびとユニバースの努力によって巨大ロボットとの戦いは終結し、神戸は被害を被るも一部にとどめ、それ以降の安全を取り戻した。

果たして、調査ロケットを送り込まれなくても、東京将軍指揮下の大阪将軍アヤは神戸を攻撃しようとしたのだろうか?

本編に登場する大阪将軍アヤの神戸への攻撃は、最初は報復だったものが途中から侵略へと変わったと言えよう。

もちろん、ユニバース側が調査ロケットを送り込むことで、ダークセブン関西基地に神戸地区を攻撃させる一因をつくってしまったことは間違いないのかも知れない。

しかし、もしユニバースが調査ロケットを送り込まなかったら、ダークセブンが神戸を侵略しようとする事態は起こらなかったのだろうか?

いつのまにか明け方に近づく夜。周囲は少しずつ明るくなっていく。

それは夕日のような雰囲気だった。

みやびはただ一人そこに立ち尽くしている。

部屋着のままのホテルを飛び出した彼女は、通常の戦闘感覚ではなく、 いつものままの彼女だった。

ふと、突然、自分はただの女子大生ではなく、使命を帯びて戦い続けていることに悲しみを感じた。

人を信じることに疑念を感じてくる。

やらなければならないことを改めて感じている。

虎ノ門もローリーも、そして4人の仲間も、

誰一人として彼女に声をかけることはなかった。


いかがでしょうか?他に修正や追加したい部分があれば教えてくださいね。

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