2021年によく読まれた記事

どうも、エンジニアのgamiです。

いつも通りnoteの管理画面を開くと、「2021年の記録」というバナーが表示されていました。

「2021年の記録」

note全体の統計情報をまとめたインフォグラフィックかなと思ってクリックすると、なんと僕の活動記録をまとめたページが生成されていました。
(オプトインで一般公開できたので、↓から見られます)

せっかくなので2021年の振り返りも兼ねて、「今年よく読まれた記事」5選を取り上げつつ、現在の視点から後日談的にコメントしてみます。


5位: SNSの暴力性と、サービス設計思想の変化

インプレッション至上主義の危険性やそれを回避するビジネスモデルについて、陰謀論やインフルエンサー論と絡めながら書きました。いま自分で読み返しても、結構面白い。

当時はまだYouTubeやTikTokを結構見ていて、一般人とインフルエンサーの違いに思いを馳せることが多い時期でした。

よっぽどの才能が無い限りは、本気でインフルエンサーになろうとしても生活の足しになるほど稼げるようになる人はほんの一握りです。一部の人にとってSNSは「何者にもなれない自分」を強く意識させられ生き苦しさを助長するものにさえなっているように見えます。

個人的に興味があるのは、「サービスの設計や最適なユーザー行動が、ビジネスモデルによって規定されている」という構造です。たとえば「収益構造が広告モデルに依存する限りはインプレッション至上主義から抜け出せないしインフルエンサーが数で殴り合うディストピアは変えられない」みたいな話は、社会って面白いなあと感じます。

無料のSNSを運営し続けるということは、広告の表示数やクリック数をなるべく上げるようなサービス設計思想にどうしても寄ってしまうという弱点があります。たとえば、コンテンツやアカウントが「多くの人の興味を呼ぶか?」という軸で評価されがちになります。YouTubeチャンネルで広告収益を最大化したいと思えば、不安を煽ったり根源的な欲望を刺激したりする動画を上げ続けるのが有効になります。自分がやりたいことで独自性を出すよりも、バズを狙った扇情的な動画の方がYouTubeというプラットフォームからは評価されてしまうのです。

一方、そういうディストピアは外から見る分には楽しいですが、直接的には関わりたくないです。個人的には、noteの記事は有料で書きたいし、最近は「閉じたコミュニティ」作りについて考え始めています。

4位: なぜWebに関わる人にはJavaScript知識が必要か?

なぜWebに関わる非エンジニアがJavaScriptを読める必要があるのか、について書きました。僕の仕事や当時のYouTube動画の内容に直結するテーマですね。

最近は「非エンジニアでもSQLを学ぼう」という風潮が盛り上がってきています。しかし、JavaScriptに関しては「エンジニアのもの」という意識がまだまだ強い印象です。少なくともWebに関わる人であれば、簡単なJavaScriptを読めた方が圧倒的にできることが広がって市場価値も上がるよなあと、今でも思っています。

GoogleアナリティクスやGoogleタグマネージャーなどのWebマーケティングで多用されるサービスをちゃんと使うには、JavaScriptの知識が要求されます。自社のWebサイトにサービスを導入するには、サイト上に外部JavaScriptファイルを呼び出すためのタグを設置する必要があります。またWebサイト上からユーザーの行動情報を密に取得しようとすると、そのためのJavaScriptプログラムを記述する必要があります。もちろん、各サービスはよくあるユースケースをテンプレート化しているので、場合によってはJavaScriptを見なくて済むこともあります。しかし、ちょっと複雑なことをやろうとすると、すぐにJavaScriptの壁にぶつかります。

とはいえ非エンジニア向けの良質なJavaScript学習教材が無いことも事実なので、僕としても2022年はその作成に力を入れたいところです。

3位: 「DX人材って何www」と思う方へ

「DX人材」に関するTweetがTwitter上でバズっていたので、それに反応してDXについて書いた記事です。

個人的にも2021年は「DX」という言葉と真面目に向き合った時期で、たとえばDXと自分の仕事との関係性についてデブサミで話したりしました。

DXという概念との向き合い方には人によってかなり温度差がある印象です。具体的には、真剣に向き合っている人、バズワードだと思って馬鹿にしている人、単に金儲けのタネだと思っている人の3種類にざっくり分かれます。この温度差についても、本記事ではいい感じに表現されています。

経産省のDXレポートを読んでいると、「デジタル競争の敗者」とか「技術的負債がIT予算の9割に」とか「サイバーセキュリティのリスクが」といった悲観的な主張がたくさん出てきます。「今のままじゃ日本マジヤバい」という焦りがひしひしと感じられます。この「今のままじゃ日本マジヤバい」感にどのくらい共感できるかによって、DXという言葉の納得感が変わってくるといえます

DXが目指すものは、ものすごくざっくり言えば「組織やビジネスモデルの改革を伴いながらデジタルを前提にした事業を作っていこう」みたいなことです。そこでは、職種横断的に動くアジリティの高いチームが必要になります。にも関わらず、AIなど特定のテクノロジーを導入すればDXできる、とか、優秀なエンジニアを採用すればDXできる、みたいな幻想を信じている人が多すぎます。それが、「DX人材」という言葉に対する誤解につながっていて、なんとかならんかなあと日々思っています。

「DX」が目指す変革がビジネスモデルや組織や企業文化の変革をも含む以上は、そこでやるべきことは多くの人の想像以上に多岐に渡ります。価値あるソフトウェアの開発、社内システムや端末の見直し、SaaSの選定・導入・運用、組織構造の改革、社内ルールの改定、これまで採用してこなかった人材の採用などなど。これらを「全てを1人がこなす」という状態は、DXが目指す「変化に強い」状態とはかけはなれています。前掲したDX人材マンダラチャートも、一人で全てを満たすものではなく、各自が他の領域に手を伸ばしつつチーム全体として満たすべきケイパビリティの全体像を示している、と理解するのが良さそうです。

2位: 同僚30人にSQLの講義をしたら起きた3つの変化

社内の非エンジニアメンバーにSQLを教える活動について書きました。(会社の広報活動を兼ねた記事なので、無料で全部読めます。)

この講義は、僕のここ数年のアウトプットの中で最も価値を生んだものの1つで、今でも社内のデータリテラシー底上げに貢献しています。

同時にこの記事では、技術リテラシー教育の難しさについても触れられています。特に片手間での学習を強いられる非エンジニアにとって、「単にSQLを学ぶ」とか「単にJavaScriptを学ぶ」ということはかなり難しいと言えます。技術とは多くの人にとって単なる手段であり、自分の業務に対する価値実感が無いとそもそも学習する動機が無いからです。

SQLを教えるときは、社内にある実データを使って実際の課題解決にとり組むのが一番早いという気付きを得ました。そこで、講義と事後課題提出を完走した受講生に対しては、さらにOJT(On-the-Job Training)プログラムを提供しました。

SQLに限らず、個人活動の中でも技術リテラシー教育のためのコンテンツを作ってきました。そこでも実感したのですが、非エンジニア向けの学習では特にストーリーが重要です。「どういう順番で何をどのくらい学ぶと仕事で何ができるようになるのか」を示せないと、ただ「勉強した感」を味わうだけで終わってしまいます。単発のコンテンツではなく、理想状態やそこに至るまでの学習の全体像を示すことが重要だなあと痛感してます。

ちなみにこの講義を受けた人数は、記事当時は約30人でした。現時点でなんと累計78人の社内メンバーが講義を受けています。すごい。

1位: 「NoCode」という幻想

これまで書いたnoteでぶっち切り1位のPV数を誇る記事です。はてなブックマークのホットエントリーなどにも載り、同僚からも「この記事読んだよ」と言われました。

この記事を書いてから約8ヶ月経っていますが、現代NoCodeツールの限界について感じることは増えています。

個々のNoCodeツールというのは新たな高水準プログラミング言語に近い存在であるともいえます。NoCodeツールを上手に使えるということは、「比較的簡単なプログラミング言語が使える」ということと同義の可能性があるということです。そうだとすると、「世のプログラミング言語と比べてNoCodeツールは誰でも簡単に使いこなせる」というのは「C言語と比べてRubyは誰でも簡単に使いこなせる」というのとあまり変わりません。つまり、実際には「誰でも簡単に」使いこなせるというのは嘘であり、実際には一定の学習コストが必要になったり、人によって向き不向きがあったりするようなものだと理解した方がいいはずです。

ここで書かれている限界とは、端的に言えば
「NoCodeとはNoProgrammingではない」
ということです。もちろん、コードを書くより書かない方が一般的には楽になります。しかし、それは「何もやらなくても良くなる」ということではなく「少し楽になる」ということでしかありません。それを理解せずに「なんでNoCodeツールなのにこんなに難しいんだ!」と憤慨するのはナンセンスです。

他方、厄介なのは、世の中のNoCodeっぽいツールの中には次の4種類があるということです。

・できることが多い、出来の良いNoCodeツール
・できることが少ない、出来の良いNoCodeツール
・できることが多い、出来の悪いNoCodeツール
・できることが少ない、出来の悪いNoCodeツール

そして一般に、できることが多いほど難しくなり、ツールの出来が良いほど簡単になります。このバランスの中で、「この難しさは本質的に必要な難しさなのか」を判断しながらツール選定や学習をしなければならないわけです。結局ユーザーにできることは、「一度ツールを選んだらそれが出来の良いNoCodeツールだと信じて自分が使いこなせるように成長する」ということでしかありません。それを理解して時間を投資できる人がどのくらいいるかというと、怪しいところですが。


というわけで、今年もたくさんのnote記事を書き、仕事を楽しくする方法や社会課題との向き合い方について考えてきました。もし面白かった記事などあれば、一言でもいいので感想を教えてください!

来年は「ストーリーのある学習体験づくり」と「適度に閉じたコミュニティづくり」に注力したいと思っています。
自分がどんなnote記事を書くのか、今から楽しみです。

(以下、有料マガジン購読者の方へのメッセージ)

今年もありがとうございました✨

無料コンテンツが大量に生み出されるインターネットで、「限られた人しか読めない」という有料noteの特別感が好きでした。僕としても、まさに「インプレッション至上主義」なインターネットから距離を取る活動の一環として、細々と有料マガジンを続けてきました。

note記事を書くのは結構大変で、1つの記事を書き上げるのに5時間以上かかることもあります。それでも続けてこられたのは、「お金を払ってでも読みたい & 応援したい」と思ってくれる皆さんがいたおかげでした。
せっかくのつながりですので、ぜひ書いて欲しいテーマなどあればTwitterで遠慮なくメンションとかDM飛ばしてください。

ではでは、来年もよろしくお願いします。
皆さんの仕事や生活が、もっと楽しいものになりますように。

ここから先は

0字
同僚と飲むビール1杯分の金額で、飲み会で愚痴るよりもきっと仕事が楽しくなる。そんなコラムを月に3〜4本お届けする予定です。

【初月無料】デジタル時代の歩き方について考えたことを発信します。ソフトウェアの時代とは何か。エンジニアの頭の中はどうなっているのか。NoC…

サポートをいただけると、喜びドリブンで発信量が増えます!初月無料のマガジン『仕事を楽しくするデジタルリテラシー読本』もおすすめです!