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「日曜エンジニア」を増やしたい

どうも、エンジニアのgamiです。

先日、こんな記事を読みました。

NHKの記者さんが書いた、プログラミングを学んで業務を効率化したという体験談です。現時点で6,300以上のいいねがついていて、かなり話題になりました。

この記者さんが開発したのは、ニュースで使われる原稿や画像の生成ツールなどです。その開発は、「日曜大工」のようなものであると表現されています。

この程度のツール開発に高度なスキルは必要ありません。「日曜大工」レベルで十分です。

僕は、日曜大工ならぬこうした「日曜エンジニア」を増やすことが、多くの人の仕事を楽しくするためには必要なんじゃないかと考えています。ひいては、DXなるものにもつながっているんじゃないかと。


目先の課題解決を目的にする

最近のDXブームやプログラミング教育ブームで、何となくデジタル技術やプログラミングやに興味を持っている人は多いです。一方で、純粋な興味だけではモチベーションがなかなか続きません

日曜大工も、「お店の家具は色やサイズが気に入らない」とか「この場所にちょうどフィットする本棚が欲しいけど売ってない」など、まずは目先の課題から始まります。「欲しいけど無いから自分でつくろう」というモチベーションが無いと、日曜大工も続きません。

同じように、日曜エンジニアも「この面倒な作業を何とかしたい」という目先の課題から始めるべきです。そこで初めて、専門的で関係ないと思っていた知識領域が、自分事になります。

僕は職業エンジニアの端くれですが、日曜エンジニア的な課題解決もよくやります。たとえば、Amazonの無駄に長い商品詳細ページURLを短くするためのツールを作りました。

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Amazonの商品詳細ページURLを短縮するブックマークレット

更新をチェックしたいWebサイトがあれば、SlackのRSSフィード追加機能を使ってサイト更新通知を受け取れるようにしています。

家電のリモコンを探す時間が惜しいので、Google HomeとNature Remoを買って声でテレビやエアコンをON/OFFできる仕組みも作ったりもしました。

これらは、まさに日曜大工レベルのスキルでできる課題解決です。一方で、全くやったことが無い人からすれば、難しいポイントもあり、それだけ得られる学びもあるはずです。

いきなり完ぺきを目指さない

「日曜大工」のことを、英語圏ではDIY(Do It Yourself)と呼びます。ここでは、「自分でできることからやってみよう」というチャレンジ精神が推奨されます。

DIYのアンチパターンは、最初から完ぺきな状態を目指し過ぎることです。言い換えれば、「プロがやるならどう作る?」というのを最初から意識しすぎると失敗します。それには、次の2つの理由があります。

1つは、ハードルを上げすぎると失敗が怖くなるからです。素人が課題解決の中で実践的なスキルを身につけるには、トライ&エラーを繰り返すことが最も近道です。一方、準備に時間やコストをかけすぎると、自分に対する期待が高まりすぎて、失敗しにくくなります。「こんなに良い道具を揃えたんだから素晴らしいものができるはずだ」と期待を高めても、実際はいきなり期待通りにはいかず、モチベーションが下がってしまいます。最終的には、「プロに丸投げした方が良いのでは?」という気持ちになってDIYを諦めてしまいがちです。

もう1つの理由は、プロのやり方は素人にとってしばしば効率が悪いからです。たとえば、日曜大工でプロが使っているインパクトドライバーを使うと、力がかかりすぎて家具を壊してしまうこともあります。また専門家の作業手順には、様々なリスクを想定して複雑になっている部分もあります。素人には、素人なりの戦い方があります。まずは安い道具を使ってなるべく簡単な方法を試してみる。それで問題が出てきたら、そのやり方を徐々に改善していけばよいのです。

日曜エンジニアを目指す人も、いきなりプログラミングの本を買ってきて挫折しがちです。しかし、プログラムを1行も書かずにできることというのは思いの外たくさんあります。プログラミングが必要なときも、Webの記事をコピペするだけでとりあえず動いたりします。まずはすぐ手の届く範囲から始めてみて、動くものを作るための最短経路を進みましょう

ちなみに、NHK記者さんの例は、結構すごいことをやっているように見えます。最近ではNoCodeを謳うツールも増えているので、そういったツールに頼るところから始めるのをおすすめします。

「日曜エンジニア」活動で広がるキャリア

冒頭で取り上げたnoteの中でも、気軽に始めたプログラミングが自身の仕事に影響を与えた様子が読み取れます。

「日曜エンジニア」的な活動を続けていくと、デジタルとかITとか言われているブラックボックスの中身が少し透けて見えるようになります。それによって、専門家に騙されにくくなったり、IT投資に関する意思決定の精度が上がったりします

こうした手を動かした学習は確実に取材に役立ち、大きなシステムトラブルが発生した時に、原因が推測できたりするようになりました。
(中略)
行政や企業の中には、記者がITの知識が乏しいと高をくくって、明らかな嘘をついてくる担当者も少なからずいました。知識があったことで嘘を見抜いて、誤った情報を出さずに済んだこともあります

また、エンジニアリングの力で仕事上の小さな課題解決を続けていると、周りの人からも頼られるようになります。現場目線で課題を解決できる手段を持つ人は貴重なので、面白いプロジェクトに巻き込まれたり、社内の別の部署の人との関わりが増えたりします

2019年には「ロボット記者」の機能も加えました。キャッチした情報から定形の原稿を自動作成し、RPAでNHKの原稿システムに送ります。
ことし8月の豪雨災害では、全国各地の河川情報や土砂災害警戒情報などの原稿を毎日100本以上、自動作成しました。
災害だけでなく、ことしの7月の東京都議会議員選挙では、出口調査の結果について41本分の原稿を、ロボット記者が書き上げました

プログラミングができる報道記者は、おそらく日本全体で見てもかなりレアな存在です。複数スキルをかけ合わせることで、自分だけのユニークな価値を発揮できるようになります。特にエンジニアリングのスキルは、日曜大工に比べても、あらゆる仕事のやり方を改善するのにすぐに役立ちます。自分のメインのジョブとは別に、サブスキルとしてソフトウェア開発やデータ分析の能力をポケットに入れておいたことで、思わぬキャリアにつながった事例も増えています

「専門家に任せよう」がDXを遅らせる

広く日本経済について考えても、「日曜エンジニア」的な人が増えることのメリットは大きいはずです。

DIY(Do It Yourself)の反対は、「専門家に丸投げ」です。特に日本では、既存企業がITとかデジタルなどといった領域を「よくわからん」とSIerなどのIT企業に丸投げし続けた結果、業務効率化や生産性向上の遅れにつながっています。この点については、冒頭のnoteでも言及されています。

もちろん大規模なシステムを一般企業が内製化するのは不可能でしょう。でもちょっとしたものでも自分たちでは作らない、作れないというところが少なくありません。そうした企業は品質についても業者に丸投げし、開発費と期間も業者の言いなりになっていないでしょうか。それぞれが胸に手を当てて考えてほしいのです。
(中略)
発注側にITへの理解や関心がないことによる、現実的ではないざっくりとした発注や、「これもよろしく」で、途中での要件追加や変更など。
そのようにして出来上がったシステムに、まともに使えるものがどれだけあるでしょう

専門家に任せていては目の前の課題は一向に解決されない、ということはこのnoteマガジンでも繰り返し書いてきました。

デジタル技術を高尚でよくわからないものとして畏怖するのをやめて、現場の課題解決の手段として企業の手に取り戻すこと。そのために、企業内に「日曜エンジニア」を育て増やすこと。たとえばワークマンでは、Excelというみんなの手元にあるツールを誰もが使いこなせる会社を実現し、大きく業績を伸ばしています。

こうした現場一人ひとりの草の根的な活動こそが、DXが求める企業文化の変革につながっていくはずです。

「日曜エンジニア」の始め方

ということで、「日曜エンジニア」が世の中にもっと増えたらいいなあという記事でした。

とはいえ「やりたいけどどこからやればいいの?」という声が聞こえてきそうなので、「日曜エンジニア」の始め方についても軽く考えてみます。

1. 解決したい日常のちょっとした負を洗い出す
2. その中から、できそうなものを選ぶ
3. 似たようなことをやっている人がいないか検索する
4. やってみる
5. 詰まったら、詳しそうな人に相談してみる

ざっくりと言えば、上記のような流れが良さそうです。

難しいのは、2の「できそうなものを選ぶ」という部分です。何が簡単で何が難しいのかを判断するには、そもそもある程度の経験が必要です。最初のうちは、手段の見通しが最初から立つ課題(たとえば非エンジニア向けのブログ記事などで紹介されているもの)から取り組むのがいいかもしれません。

あるいは、5の「詳しそうな人」に早めに相談できる状況を作っておくのも良さそうです。「これって僕でも簡単にできますかね?」とか「僕がやるならどんなツール使ってやるといいと思います?」といった相談が気軽にできる人を見つけておくと、無駄に回り道をしなくて済むので便利です。

相談役として僕(@jumpei_ikegami)を利用するというのも一つの手です。記事をお金を払って(あるいはマガジンを無料購読して)読んでくれているような方は、僕からすれば神様なので、ぜひ気軽に何でもTwitter DMとかで相談してください!

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