「動画」は無駄なミーティングを駆逐する
どうも、エンジニアのgamiです。
先日、LINE Technical Writing Meetupというイベントにゲスト登壇してきました。
このイベントはLINE社主催の、テクニカルライティングをテーマにした技術者向けミートアップです。僕はLINEの社員ではないですが、LINE社にいる知り合いから「ぜひ動画制作周りの話をしてほしい」というお誘いを貰いました。
僕は仕事でドキュメント執筆などもしており、最近は特に動画によるコンテンツ制作を公私ともによくやっています。個人活動では、YouTubeやUdemyに大量の動画を上げてきました。数えてみたら、これまで作った動画の本数は200本を超えていました。
このイベント登壇の準備をする中で、改めて「動画を普段の業務に活用すること」について考えました。せっかくなので、その結果をnoteにも残しておきます。
動画スタートアップの台頭
これまでにも、動画をマーケティングなどに活用する動きはありました。しかし、特にリモートワークが増えた直近1〜2年でマーケティング以外の領域で動画を活用する動きが加速していると感じます。
こうした動きの背景には、次のような理由があります。
YouTubeなど動画を無料でホスティングできるプラットフォームが増え、動画配信のハードルが下がった
YouTubeやNetflixなど、生活の中で動画を見ることが当たり前になった
さらにビデオ会議が増えたことで、仕事中に動画を見ることが当たり前になった
ライトな動画活用系ツールの発展により、動画の撮影・編集・管理のハードルが下がった
特に最後の「ライトな動画活用系ツールの発展」を支えるスタートアップが、ここ数年で増えています。
2016年にサンフランシスコで創業したLoomは、toBのビデオコミュニケーション・プラットフォームを提供しています。Loomのユーザーは専用のChrome拡張機能を使って「画面収録に自分の顔のワイプが埋め込まれた動画」を簡単に撮影できます。撮影した動画はLoomのサーバーにアップロードされ、動画視聴リンクを同僚や顧客にすぐ共有することができます。
日本のスタートアップからも、QudenやVideoTouchといった近いドメインのサービスが2021年にリリースされています。
動画編集の領域だと、韓国のスタートアップが提供するVrewが便利です。Vrewは、まるでテキストを編集するように動画や字幕を編集できるアプリケーションです。Adobe Premiere Proのような高機能で重いソフトウェアを使わなくても、とにかく簡単に早く編集ができます。
これらのプロダクトによって、「シンプルな動画であればすぐ作ってすぐ共有できる」という世界が訪れました。
動画は無駄なミーティングを駆逐する
前述したLoomやQudenは、ざっくり言えば「動画を使った非同期コミュニケーションを業務に取り入れましょう」ということを提案しているプロダクトだといえます。
実際、僕自身も「同じような説明を何度もしているなあ」と思ったとき、ミーティングを動画に置き換えることで圧倒的に楽になったことがあります。僕の経験から、いくつか事例を紹介します。
僕は社内ポジション的に、「最近入社したメンバーにプロダクトや技術に関するレクチャーをする」ということがよくあります。たとえばSQLに関する講義をしたり、プロダクトの裏側の詳細なデータフローや仕様について解説したり。こうしたレクチャーを、当初は同期的なミーティングで実施していました。最初のうちは何度も同じ説明をするうちに説明の仕方が改善できるというメリットもありました。しかし話すことがある程度固まってくると、「新しいメンバーが増える度に同じ話を時間を取って話すの辛いな」という気持ちになってきました。そこで、説明の様子を動画で撮影し、レクチャーを受けるメンバーには「各自この動画を見て質問あればSlackでください」という形にしました。今では、僕の過去動画が勝手に色々な人に説明をしてくれるので、だいぶ楽になりました。
また、弊社内では「重要なミーティングは録画しよう」という文化がかなり浸透しています。参加者の多い共有系のミーティングでは、全員が参加できるよう日程調整することがほぼ不可能です。動画を残しておけば、自分が参加できなかったミーティングは後からアーカイブ視聴をすればよくなります。動画で見ると1.5倍速とかで見られるのも、地味に嬉しいポイントです。
他にも、新しくリリースされた機能のデモ動画を作ってプレスリリースに埋め込んだり、プロダクトのユーザーが使う学習コンテンツサイトに動画付きの学習コースを掲載したり、社外向けの動画もたくさん作ってきました。僕は顧客打ち合わせに同席してプロダクトの説明をすることもありますが、説明する内容がすでに動画化されていれば事前にそのURLを送ることもできます。予め動画を見てもらうことで、そもそも打ち合わせが不要になったり、打ち合わせの時間の多くをディスカッションに割けるようになったりします。
もちろん、動画によって全ての同期的なミーティングを無くせるわけではありません。参加者の間でインタラクティブに進むことが前提の会議は、事前に撮影した動画では代替できません。しかし共有や説明がメインのミーティングは、非同期の動画で置き換えられないか考えてみてもいいでしょう。
がんばらない動画制作の手順
僕が本格的に動画制作を始めたのは2020年10月でした。当時はYouTubeを浴びるように見ていた時期で、「YouTubeに動画を上げてみたい!」という思いでデジタルリテラシー教育系の動画を作り始めました。当時の僕は動画制作を全くやったことが無く、YouTuberが作る動画の編集を参考に見様見真似でやってみるしかありませんでした。
何もわからない当時の僕は、なんと高価なiMacを買い、グリーンバック用の緑の布とWebカメラを買い、Adobe Premiere Proの勉強をはじめました。今思えば、それらの判断は間違っていました。自分の作りたい動画に対して、あまりにも撮影や編集のコストが高くなりすぎてしまったからです。
ここからは、僕が累計200本以上の動画制作をした結果たどり着いた「がんばらない動画制作」について、その手順を説明します。「動画で説明する」という手札をもって業務に取り入れてみたい人には、きっと参考になるはずです。(なお、ここでは「PC画面を見せながら自分の肉声でその説明をする動画」をつくるケースを想定します。)
まず、撮影機材はほとんど必要ありません。撮影のハードルを下げるために、できればカメラ付きノートPC1台だけで完結するのがベストです。僕が最近の動画撮影で使うのは、Macbook、外付けディスプレイ、イヤホンだけです。
機材を増やすとしても、力を入れるべきものとそうではないものがあります。まずカメラは、よっぽど画質が悪くなければ何でも大丈夫です。説明動画の場合、基本的に自分の顔はワイプで小さく映るのみです。画質が良いに越したことはないですが、最近はPCについているカメラの画質も上がっているので大抵はそれで十分です。
他方、雑音の多い音声は聞き続けるのが苦痛になるので、マイクはできれば用意した方がいいです。もちろんプロ仕様の高額なマイクを買う必要はありません。マイク付きヘッドセットなど口の近くに持ってこられるマイクがおすすめです。周囲の雑音を拾わないためには、自分の声が周囲の雑音に対して十分に大きくなるような状況を作る必要があります。そのためには、マイクは口の近くに置くこと、なるべく静かな環境で撮影することが最も重要です。
撮影については、LoomやQudenやなどが提供する動画撮影用のChrome拡張機能を使うのが最も早いです。これらツールを使うと、画面収録と自分の顔映像を同時に撮影し、勝手にそれらをワイプ編集して1画面にまとめてくれます。
ヒト感を出して視聴者に印象付けるためにも、自分の顔は出した方が良いです。
同様のワイプ編集を普通にやろうとすると、次のような手順が必要です。
画面収録の映像と顔の映像を別々のカメラで撮影する
2つの映像を動画編集ソフトに読み込み、ワイプで重ねる
2つの映像のタイミングを合わせる
両方の映像に音声がついている場合は、片方の音声を削除する
こうした編集作業が、Loomなどの撮影ツールを使うと省略できます。素晴らしいですね。
ちなみにLoomもQudenもフリーミアムのサービスで、一定の機能までは無料で使うことができます。両者の無料プランを比較すると、2022年10月現在、1本の動画の長さがLoomは5分まで、Qudenは10分までに制限されています。様々な理由から動画は短い方が望ましいですが、5分は流石に短すぎるので、僕はQudenを使っています。
Qudenの場合、撮影した動画をURLで共有することも、ダウンロードすることもできます。僕は動画ファイルをダウンロードしてちょっとした編集をすることが多いです。
編集は、Vrewのデスクトップアプリを使っています。Vrewは本当に便利なプロダクトで、楽に動画編集したいならぜひ使って欲しいです。
Vrewに動画ファイルを読み込ませると、指定した言語で動画の音声をテキストに自動変換してくれます。発言の一部を削りたい場合は、その部分に対応するテキストを選んで削除するだけで動画自体をカット編集できます。間が空いている部分は […] と表示されるので、それを削除すれば動画の間を小刻みに切り詰めるようなカット(ジェットカット)もすぐできます。
動画に字幕を付けたい場合も、自動生成されたテキストを字幕表示用に修正するだけです。そのまま字幕付きの動画ファイルを出力することも、字幕ファイルを別で出力することもできます。簡単ですね。
こうしたツールの活用で、Adobe Premiere Proを使っていた頃よりも1/10くらいの労力で似たような動画を作ることができています。もちろん表現力は遠く及ばないですが、「業務で使う説明動画」に限れば十分です。
ぜひ皆さんも「動画で説明する」という選択肢を試してみてはいかがでしょうか?
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