【易】意味が分かると驚く話_盗難事件

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ある日の放課後、海原学園1年B組の教室に重苦しい空気が流れる。
事の発端は20分前、再来月から始まる修学旅行の打ち合わせが終わり帰りの支度をしている途中で事件は起きた。

美月「ねえ、修学旅行で使うお金が無くなってるんだけど...」

美月さんの声にその場にいた全員が美月の方を見る。海原学園では毎年6月末に修学旅行が開催され、各クラス1人ずつ実行委員が選定される。今日はその第一回目の打ち合わせで男女合わせて6名が集まっていた。内容は顔合わせと今後の役割分担、予算の確認くらいの簡単なものになるはずだった。実際打ち合わせは滞りなく進み無事終了し、これから下校するところだった。高校生活初めての一大イベントということで、委員会メンバーにとっては無事打ち合わせが終わったことに安堵している人もいただろう。しかし、いざ解散しようとすると事態は一変した。今日の議題になっていた修学旅行の予算の一部である100万円が無くなったらしく、この場にいる全員の顔に緊張が走ったのが分かった。

翼「確かお金って、美月さんが先生からこの打ち合わせのために借りてこの後返す予定だったんだよね?」
美月「そう、帰る途中で返そうと思って鞄に入れてたんだけど今見たら無くなってたの」
一花「私、美月さんが茶色の封筒を鞄に入れてたの見たよ!」

C組の実行委員の東野 翼(ひがしの つばさ)と西川 一花(にしかわ いっか)がまずは声を上げる。

和成「一花さん、それっていつ?僕達は見た記憶はないのだけど...」
一花「打ち合わせ終わった後、帰りの支度している時だったよ。私、美月さんと一緒に帰りの支度をしてたんだけど、そのとき美月ちゃん、自分の引き出しから鞄に封筒をいれてたのを見たんだ!打ち合わせの時に皆んなで確認した茶色の封筒!男子達はその時資料室に今日使った資料を返しに行ってたから見ていなかったんだと思う...。」
和成「あー、そういえば打ち合わせの時に予算の確認をした後、最後に美月さんが預かって自分の引き出しに入れてたね。そんなとこに入れてて危ないなと思ってはいたんだけど、僕たちが資料室にいる時に鞄に移してたんだ」

和成がそう言うと、男子達は皆んな目を合わせてうなづいていた。これが男子達だけが分かる呼吸みたいなものなのか。女子の私には分からないが、なんとなくその時間に男子達が資料室にいてお互いを確認しているというのが分かった。
南野 和成(みなみの かずなり)と北川 美月(きたがわ みづき)は同じB組の委員である。なんとなく今日の打ち合わせ用に席を並べ替えてはいるが、B組の二人は他の人と違い自分の席で打ち合わせに参加できた。美月さんは打ち合わせの際に今回の予算感を伝えるために先生から修学旅行費を借りていたのだが、全員に確認をとった後自分の席の引き出しにしまっていたのは全員が確認している。その後、修学旅行費は席から美月さんの鞄に移動していており、それは女子チームは全員確認している。

智春「その後鞄はどうしたのだ?」
美月「その後、私と一花さんが校内放送で職員室に呼ばれたでしょ?だから二人で職員室に行ったんだ...。そのとき一緒に鞄も持っていけばよかったんだけど教室に置いっちゃったんだ」
智春「そういえば、放送が流れていたな。あれは一体どういう要件だったんだ?」
美月「大した要件じゃなかったよ。今日締め切りの提出物があったんだけど、提出が遅れちゃっててね。打ち合わせで二人いるからって呼び出されたんだ...。」
智春「おー!もしかしてあの進路調査表のことか!まだ入学して一ヶ月しか経ってないのに内の学校は面倒見がいいよな!」
一花「智春くんはポジティブだね〜。将来のことっていわれてもまだ何も考えられてないよ〜。それで私と美月さんは呼び出されていたんだ。先生にはまだ何も決まっていないのは仕方ないけど将来のことを考えるきっかけにもなるから何か書いて出せって言われたよ...」
智春「早い時期に目標を持つことはいいことだと思うぞ!先生もいいことを言うじゃないか!」
翼「なんか話が脱線してない?美月さん、その後のことを教えてもらえる?」
美月「うん、先生の話が終わった後は一花と一緒に教室に戻ったんだよ。その時途中で陽奈にあったんだよね。」
陽奈「そうそう、私は自分の教室に戻って帰り支度を整えていたよ。その後、ちょっとお手洗いに行ってたんだけどそこで美月さん達と合流したんだよね」

青野 智春(あおの ともはる)と結城 陽奈(ゆうき ひな)はA組の実行委員である。二人とも明るくかつあまり人見知りをしない性格のため、今日の打ち合わせでも二人が中心になって場を回していた。もっともこの学校では性格とか関係なく、こういう他クラス合同の打ち合わせはA組の生徒が取り仕切ることになる。というのも海原学園は各学年約100名いるわけだが、A組だけは成績上位20名だけが入れるクラスであり、1年生は入学試験の結果、2年生以降は学年が上がるタイミングでその年の上位20人がA組となるのである。その中でも青野 智春と結城 陽奈は有名人であった。結城 陽奈の方は中等部では生徒会会長を務めており、成績も優秀で学年10位以内の常連である。かといってそれを周囲に自慢したりはせず、
むしろ困っている人には手を貸さずにはいられないほどのお人好しであり、試験勉強で困っている人がいれば勉強会を開き、面倒な委員会があれば立候補し、皆んながやりたがらないボランティア活動にも積極的に参加、と性格も抜群によく、学園内に止まらず学外にも顔が広い。
そしてもう一人の青野 智春の方はある意味ではもっと有名で、高校1年生でのA組入学はほとんど中学からの内部進学が占めるにもかかわらず、外部進学からA組への編入という離れ技をやってのけた。噂では外部進学からA組への編入は20年前に1人いただけなのだが、今年はそれが2人もおり、入学式当日から学内ではもっぱら噂となっている。そんな天才にも関わらず入学式では珍事を犯したりしていい意味でも悪い意味でも有名になっている。

陽奈「それで、成り行きでB組に一緒に戻ったんだよね?その時に資料室から戻ってきた男子達とB組のドアの前で合流したんじゃなかった?」
智春「おーそうだな、そして全員で教室に戻ったんだったな。」
翼「そうそう、美月さん達とB組の前で合流してから教室に入ったんだけど確かその時は美月さんの鞄は机の上に置いてなかった?」
美月「うん、先生に言われた進路調査表を提出しようと思って鞄をあけたらお金が無くなったことに気が付いたんだ...」
陽奈「じゃあ、私達がいなくなった間に誰かが入って...、その盗っちゃったのかな?」

その発言に対して美月さんは顔を真っ青にしていた。それはそうだ。100万円を無くしたとなればその責任は学生では負えないし、バレれば先生達の信用を失う。ま高校生と言う立場で責任を取らされることはないにしても、連帯責任という形で信用は失うし、それを管理していた美月は学園中から白い目で見られるだろう。高校1年の初っ端でこのダメージは大きいだろう。

智春「まあ、そうとも限らないんじゃないか?そもそもここにいる人以外では先生方を除けば大金があることを知らないわけだし、ここで打ち合わせをやっていたのは他の人もなんとなく知っていただろう。そんないつ誰かが帰ってくるかも分からない状況であるか分からないお金を盗むのは心理的には難しいのではないか?それに、ここの学園の人は皆んないい人そうだしな。きっとそんなことをする人はいないだろう!」
美月「じゃあ、お金はどこにあるのよ!」
智春「きっと、どこかに勘違いがあるのだろう。皆んなの持ち物を探せばでてきたりするのではないか?」
美月「分かったわ。じゃあ、まずは私の鞄の中を見てよ!」

美月はそう言うと鞄の中身を机の上に全部出した。そこにはやはり封筒に入ったお金などはなかったが、それより他の人はこの一連の行動に驚きを隠せていなかった。というのも智春くんが持ち物検査をしようと暗に言い、それに被害者の美月さんが乗ってしまえば、他の人達はそれを止める術はない。別に犯人でなくても鞄の中身を見せたくない理由はいくらでも作れるが、明らかに疑われてしまう。こんな状況で断るとその後の活動に支障が出かねないだろう。

智春「本当にお金らしきものはないみたいだな。では俺も見せよう。ほら!」

そして智春も自分の持ち物を一式広げた。そして当然封筒もその場所が分かる手がかりもない。そもそも男子達はこの一連の騒ぎがあったときには資料室にいたのでこの事件にはほとんど関係ないので当然の結果である。ただ智春くんが自分の荷物を見せたことで、この流れはもう断ち切ることはできないだろう。そうなると順番的に次の人は...。

陽奈「じゃあ次はやっぱり私かな?」

そうして全員の前で鞄を開けると陽奈の鞄から茶色の封筒が出てきた。その封筒は大量のお金が入って膨れ上がっている。

美月「ちょっと!これ、修学旅行費じゃない!どうしてあなたが持っているの!」
陽奈「ちょっと待って!私こんなの知らない!今開けたら入ってて...。」
美月「そんな言い訳が通ると思う!?だってあなただけじゃない!ここに大金があるって知っててアリバイがないのは!」
陽奈「あ、ありばい??」
美月「そうよ、あなたは自分のクラスで帰りの支度をしてたって言うけど、私達がいなくなった隙に教室に入り込んで修学旅行費を盗むことができたんじゃないの?そうして何食わぬ顔で私達と合流したんでしょ!?」
陽奈「そ、そんなことしてないよ...。それに犯人だったらこんな分かりやすく鞄の中に入れておかないって...」
美月「だから、外部犯の仕業にしようとしたのね!持ち物検査をされないようにと自分に容疑が向かないようにするために!」
陽奈「...ッ!」

・・・これで大成功だ!持ち物検査の流れは運が良かったとしか言えないがこれで結城 陽奈の評判を落とすことができる。本来は100万円が無くなり委員の信用が落ちるだけでよかった。同じ信用でも中学時代から積み上げてきた信用と私の信用ではダメージがまるで違うだろう。本当はそれだけでよく100万円は自分のものにしようとしていたが、いざ大金を手にするとやっぱり怖くなったのである。そこに丁度陽奈がA組から出ていくとが見えたので鞄の中にプレゼントを入れておいたのである。これで、陽奈がネコババすればいくらでも評判を落とすことができるし、その気が無くてもこの大金の取り扱いには困るはずだ。それを見るのも一興と思ったが、まさかこんな持ち物検査までやってもらえるとは!おかげで陽奈の信用はガタ落ちだし、他の委員の信用は守られる。それに私が用意した作戦はバレてしまえば簡単に犯人を特定されるだろう。でもここに明らかに犯人らしき人がいれば検証すらされない。これこそ完全犯罪だ!

美月「白状しなさい!あなたが犯人なのでしょう!?」
陽奈「いや、だから落ち着いて、私じゃない...」
美月「あなたの今までの評判もこうやって誰かを踏み台にして築き上げたものなんじゃないの!」

そうそう、美月さんが言いたいことを言ってくれて助かる。一つ信用を失えば今までの実績もなくなるんだよ。これが、私があなたに対して行う復讐よ。別にあなたは悪くは無いよ。あなたはただいい子だっただけ。私の元彼がそんなあなたを好きになってしまって、私は振られてしまった。そしてその彼をあなたは振ったのよ。それがどれだけ屈辱的なことだったかあなたには分からないでしょうけど。そんな下らない嫉妬心であなたは落とされるんだから。
美月と陽奈の二人の言い争いを見ながら私は優越感に浸る。自分でも性格が悪いとは思うが人間なんてそんなものだ。

智春「まあまあ、二人とも落ち着いて。きっと結城さんにも何か事情があったんだよ。ね?結城さん?」
陽奈「事情も何も私こんなお金本当に知らないの!」
智春「でも実際荷物から出てきているし...。」
陽奈「それこそ...私がいない間に誰かが入れたんじゃないの?」

陽奈は泣きながら他の可能性を訴えるが、そんなのは簡単に否定できる。
そんなことにも気がつかず、ただ無実を訴える陽奈を見ているのは実に気分がいい。陽奈にとって誰かから感謝されることは有っても悪意を向けられることなど今までの人生で一度もなかったのだろう。それだけで腹が立つ。

美月「わざわざ盗んだお金を人の鞄にいれるなんてこと誰がするのよ!」
和成「ほらほら、美月さんも一回落ち着いて」

そうだ、誰かが陽奈の鞄に入れたは動機を考えた時点で打ち止まる。わざわざ盗んで他の人の鞄にいれるなど無駄なリスクを二度も踏む人なんていない。だから封筒が出てきた時点で陽奈さんが犯人しか考えられない。
もう謝っちゃえば?今ならここだけの話で済むかもよ?
そんなことを思いながら顔がにやけそうになるのを必死に我慢していると

??「なんか騒がしいけどどうかしたの?」

面倒臭そうな顔をした生徒が教室に入ってきた。

智春「おー!淳君じゃないか!丁度いいところにきた!」
淳「智春か、これは来るべきじゃなかったかな...」

淳と聞いて、この男の子が誰か気が付く。この人がもう一人の外部進学からA組に編入してきた人だ。最近はなんか怪しげな部活の勧誘を行っているみたいだが、どうしてここに?

淳「資料室で部活動に励んでいたら、智春達が資料室にきてな、もしかしたら勧誘のチャンスかと思って来てみたんだが。まあいいや。良かったら文化研究会に入部よろしくお願いいたします。活動は特に無いです。運動部との掛け持ちでもOKです」

そうして淳くんは勧誘用のチラシを配り始めた。なんて言うかマイペースな人である。

淳「あれ、二人はどうしたの?なんか泣いているみたいだけど?」
美月「この女が修学旅行費を盗んだのよ!」
陽奈「だから誤解だって!」
淳「??」
智春「なあ、淳君、どうにかしてくれないか?」
淳「状況が掴めないんだけど」
智春「実はな...」

そういうと、智春くんは事件のあらすじを淳くんに話した。

淳「ふーん、なるほど。」
智春「なるほど、ではなくてだな。なんとかして美月と陽奈の二人の仲を取り持ってくれないか?」
淳「別にいいけど」
智春「そこを何とか...、って大丈夫なのか?」
淳「うん、それくらいなら簡単だよ?」

その言葉に耳を疑った。この状況で話を聞いただけで解決する方法があるのか?

淳「だが、タダ働きってのもな...。」
智春「俺ができる範囲でなら何でも言うことを聞いてやろう」
淳「いや、智春には興味ないよ。だったら、そこで泣いている結城さんに一つお願い」
陽奈「...っ!何よぉ〜....」

陽奈は泣きながら淳に答える。

淳「結城さんって他に文化部に入ったりしてる?」
陽奈「グスッ...。特にはいってないけど?」
淳「よかった。だったら内の文化研究会に入部してくれない?今人が足りなくて廃部の危機で困っているんだ...。」
陽奈「何をする部活なの?」
淳「簡単にいうとこの地域の成り立ちとか文化とかを調べて多くの人に知ってもらう部活だよ。まあ別に人数が集まって部として存続できれば幽霊部員でもいいから」
陽奈「...。私一応弓道部に入ってるんだけど...。」
淳「大丈夫さ、運動部と文化部の兼部は認められている。もし入部してくれたら見返りにこの事件を解決してあげる」
陽奈「うーん、正直頭数のためだけに部員になるのは気が引けるんだけど...」
淳「まあ、そこはギブ&テイクってことで、結城さんもこんな非常時になり振り構えないでしょ?」
陽奈「うーん、分かったわよ。本当に何とかしてくれるの??」
淳「任せて」
陽奈「じゃあ、お願いします」

陽奈は目に涙を浮かべながら、淳君を見つめてお願いをしていた。そんな目で見つめられたら大半の男はコロっといってしまうだろう。そういうところが苛立たせる。一体この淳って人は何を考えているのだろうか?一体この状況を覆す一手って?そんなことを考えていると

淳「まあ、と言っても別に特別な話ではないんだよね。僕の部室は資料室なんだけど、忘れ物があって一度A組の教室に戻って来たんだ。そのときに教室から走って逃げていく女子生徒を見かけたんだ。それはもう大慌てで。だからきっとその人が犯人なんじゃないの?大方いたずらで封筒を盗んだはいいが、中身を見たら大金が入ってて慌てて戻そうとした。ただそのときには委員の皆さんがB組に戻って来てしまい困り果てた犯人は委員のメンバーである結城さんの鞄に入れておいたってところじゃない?結城さん人徳あるみたいだし、上手くいけば元どおりってね。」
陽奈「え、それって誰?」
淳「さあ、まだ顔と名前は一致してないから誰かは分からないけど明日になれば分かると思うよ。顔は覚えているから」

それを聞いた陽奈は少し緊張が和らいだのが分かった。ふざけるな。そんな訳はないと反論したいが、だがそれはできない。なぜなら、淳くんの言っている時間帯は陽奈がお手洗いで外に出ていた時間だろう。私はその時間B組にいたのだからそんな女子生徒がいないことも淳くんが来ていないことも知っているが、それを言ってしまえば自分が犯人であることを自白するようなものだ。こちらの作戦を逆手に取られてしまった。
私はなんとか反論できないかと考えていたが、別のところから助け舟がでた。

智春「だが、淳君の証言だけではその生徒が犯人とは限らないんじゃないか?」
淳「まあ、証拠はないよね。でも放課後にわざわざ他のクラスに知らない人が入ってて、しかもそこが窃盗事件の現場になっていると分かれば話くらいは聞けるでしょ?なら、そこでその人が犯人かどうか調べればいい。鎌をかけるための材料はいくらでもあるんだからな」
翼「じゃあ、その、尋問みたいなことをするってこと?」
淳「そんなに非道いことをするつもりはないよ。100万円が元々あった場所とか、陽奈の席がどこだったとか、そういう関係者しか知り得ない情報をそれとなく聞き出せれば十分だからね。後はそれを結城さんに報告して、2人で話し合いでも何でもしてくれれば解決すると思うよ」
和成「それで、本当に上手くいくのか?」
淳「後は任せな。明日までに決着はつくと思うから」

正直この会話を聞いて私は安心した。犯人の私は完全に事件の関係者だし、そもそもそんな人はいないんだ。淳君が該当者を見つけられなく、事態を穏便に済ませようとすればしっかりと追求できる。本当はA組に入った女子生徒なんていなくて、陽奈をかばうための嘘だったんじゃないか、と。そうすれば陽奈を含めA組全体の評判を落とす事だって可能だろう。さっきは少し焦ったが、結果だけ見れば何もしていないのに私にとっては事態がいい方向に進んでいってることに内心ワクワクしている。勿論表情には出さないが。

智春「淳君がそう言うのであれば大丈夫なのだろう。じゃあこの話については今日は一旦持ち帰りだな!明日、また淳君の報告を聞くとしよう。じゃあ、他になければ本日は一旦解散!」

智春くんのその言葉でみんな心にわだかまりを抱えながらも各々帰る準備を再開した。和成君は、我先にと教室をでて行った。一花さんは泣き止まない美月さんを慰めながら一緒に帰っていった。A組の人たちは今後の相談のためか、3人で集まっている。
私は全員の様子の確認を終えて、教室を出ようとしたところ

淳「東野 翼さん、ちょっと待って。」
翼「はい、何ですか?」
淳「そういえばどうしてC組だけ”女子”2人で実行員をしているの?」

この後私は淳くんの追求により全てを白状する羽目になった。

【回答】
本作品では翼を男性のような書き方をしているが、実際は翼という名前の女生徒である。そのため、アリバイがあるのは資料室にいた男子(智春と和成)、そして美月と一花であとの女子二人(陽奈と翼)にはアリバイがない。この後、翼は淳に詰められて、犯人であることとその動機を全て自白
することになった。

【作者から】
今回は初の叙述トリックに挑戦してみました。叙述トリックはミステリーではアンフェアだと言われたりもするみたいですが、作者は結構好きなトリックです。というのも、もう一度読み直したくなる作品になりやすいですし、読み直したときに作家さんの工夫を感じることができる、一冊で二度楽しめるからです。
本作でも翼をどうやったら男のように読者を誤解させることができるか、またどう言う風に種明かしをするかなどを楽しみながら作れたと思いますが、読者の皆様は騙されましたでしょうか?よければ感想をお聞かせください。
また、意味が分かるとシリーズはどんでん返し系や叙述トリックと相性がいいと思いますので、これからもチョコチョコ使おうと思いますが、そう言うのもあるよ、と広い心で読んでいただければと思います。

では長文になりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。まだまだ修学旅行編は続けて行こうかと思いますのでよろしくお願いいたします。






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