無料低額宿泊所リアル日記初日

私は無料低額宿泊所と呼ばれる施設に約300日間いました。

実はほぼ毎日そこでの生活の日記をつけていました。個人名や場所を特定できるものなどは手を加えさせてもらいますが、無料低額宿泊所というよく分からない施設を紹介します。 
私はその前月から借金で首が回らなくなり、夜逃げをしていました。ネットカフェを転々としていましたが、資金が底をつき、即日入寮可能の新聞販売店に飛び込みました。

平成31年4月1日 月曜日 晴れ時々雨

長く険しい3月は、ブラック以上に過酷な仕事だった新聞販売店から逃げ出した事で幕を閉じた。
28日に給付金2万円が入金されていたから、それを元手に朝刊不着番と夕刊配達出勤時間の4時間程の間に急に不安になり、逃げ出す事を決意した。
新聞販売店については、またの機会に書き留めたい。
タクシーをアパートの前まで呼び、そこから2駅離れた駅まで走ってもらい下車。
Z市に戻ってきた。
ネットカフェは当初満室と言われ、困惑したが現地から電話をしたら空いていたから助かった。
そして、週末3日間部屋を借り、食事。Fそばのミニカツ丼ともりそばのセットを最後のシャバ飯のつもりで一気に平らげる。戻ってからはまず、以前から相談してきていた地元自治体の精神福祉事務所へ匿名で相談。担当者は男性。2週間前の相談記録は何故か無いというので、また1から説明。50分程話して出た結論は、まずは法テラスに電話。受診、生活保護の再申請となった。次に法テラスに電話。あなたの場合は緊急だから、4月1日の午前10時以降に地元にある弁護士事務所に直接連絡してくれとの事。
そこから爆睡。何せあそこに入ってからまともに寝ていなかったから。
夕方くらいにM氏から電話あり。
寝ぼけていてよく覚えていないのだが、逃げ回るのも精神病じゃ仕方ないね的な事で終わった。
翌日もほぼ終日爆睡。本当によく寝た。
部屋は日曜日の午前11時までだから、もう1泊延長。
日曜日は色々と調べた。
生活保護の失踪廃止は厳しい処分で再申請は困難だという話が多く、意気消沈。
弁護士ドットコムで相談をしたら、緊急だから大丈夫だろうという答えをもらえた。
違う自治体の申請も頭によぎったが、やはり手帳があり、相談もしている地元自治体の精神保健事務所へ月曜日の朝イチで直接相談することにした。
生活保護の再申請はかなり気が重いが…
福祉事務所の会館時間は8時半。それに合わせてZ駅を出るとラッシュにぶつかるので、1時間早く出発。地元の駅までの乗車賃は高い‼︎昔はもっと安かったのに。だけど早く出たおかげで電車は座ることが出来た。駅ビルのカフェで朝メシを兼ねて時間を潰す。
1時間後、バス停に向かうと長蛇の列。恐らく役所の職員連中だろう。
途中からの桜並木が満開でとても綺麗。4月の青空にマッチしていた。
8時半少し過ぎた所で精神福祉事務所があるに到着。
神経質そうな女性職員が大荷物を抱えた自分を見て逃げようとしたが、仕方なかったのか戻ってきて番号を呼んだ。
相談だという旨を伝えると「相談は9時からなんですよ」と眉間にしわを寄せた。出直しましょうか?と伝えると、「今回だけですよ」と別の職員を呼んでくれた。
事情を説明すると、自立支援の手帳だけ再発行してくれた。あとは生活保護課に行ってくれと。
9時。深呼吸をして生活保護課のフロアに入る。
月初のせいか医療券を求める人の列。途中で用件を聞かれたので事情を説明。エレベーター前の椅子で待つようにと。
どれくらい待ったのか。
中年の男性から呼ばれた。激しく罵られると思い、まずは深々と謝罪。ところが彼は怒るどころか、淡々と状況の聞き取りをしてくれた。極めて公務員的な、優しい人だった。
話も心配していた「相談」ではなく、「再申請」を前提とした話で進めてくれた。
問題は住居だ。
彼は3つの選択肢を提示してくれた。
ひとつはNPO法人がやっている施設に入所
もうひとつは申請が受理されるまでの2週間を友人知人宅で過ごすわ
最後は自分で敷金礼金を出して部屋を借りる。
2つ目と3つ目は確実に不可能なので、最初の施設へ入所を希望した。
すると彼は3つの施設の電話番号を書いてくれた。
私が通う精神科の近くに施設があるのはひとつだった。
彼曰く、そこは通常1階ロビーで待ち合わせて面接そしてそのまま入所との事。
こんな自分に優しく接してくれた彼に深々と頭を下げて部屋を出た。
1階に降り、そこへ電話すると担当者から折り返すから待てとの事。
折り返し電話が来た。
別件を抱えているから30分くらい待っていてくれと。いくらでも待つよ。
ロビーのテレビでは今日発表の新元号について騒いでいた。
俺の平成は波乱の30年だったなと感慨に浸っていると、2人組の男性が入ってきた。
ひとりは小柄で白髪オールバック、ギョロっとした目は鋭く一瞬で俺を品定めしたよう。もう1人は白髪が目立つ細目の男性。何やら新人で同行しているとの事だった。
ロビーのテーブルで早速聞き取りが始まる。自分の過去を聞いた途端に更に表情が険しくなった。
そして3枚ほどの紙を取り出し、企業概要や必要な毎月の利用料金の説明を事務的にこちらの理解度を確認などせずに続けた。
要は一種の貧困ビジネスだろう。
あんたは1人住まいはさせられない。もしも何かあれば入院させる。とにかく厳しいことを言われた。しかも利用料金は3食水道光熱費込みで8万1千円。しかもあてがわれるのは、3畳だと言う。それでいいのかと確認を取られたが、選択肢などない。イエスと言わざるを得なかった。昼メシ食うか?と聞かれたからお願いした。その後、3枚の誓約書や契約書に署名捺印をして契約成立。内容は相当なものだった。仕方ない。3人で再び5階へ。医療券を求める人の列は更に増えていた。白髪オールバックの男性は参ったなという事をこぼした。すると丁度先程の男性が階段で上がってきた。すかさず呼び止める。
彼は無口の新人さんと一緒に相談室へいくようにと。
再び入った相談室では完全に申請の流れ。何枚か書類に記入をして、通帳類を出せるだけ提出。彼はコピーなどで出たり入ったり。
無口の男が口を開く。「何やったの?」正直に話す。彼は面白い話を聞いたなといった表情を浮かべた。
再び戻ってきた担当者はゆうちょの通帳は近くの郵便局で記帳できるから行ってきてくれと。
エレベーターでは複数の職員と一緒になる。
そこで新元号が令和に決まったと知った。
外は予想より早く雨が降り出してきていた。
通帳を記帳して戻ると若い職員が立っていた。調査担当の職員だと言う。若い真面目そうだが、ヒゲを蓄えており年齢不詳。だが、彼は丁寧に挨拶をしてくれて、訪問日時の提案をしてくれた。訪問は明日の午後2時と決まった。
手続きが終わると、車で繁華街の近くにあるという寮へ。
築50年と聞いていたが、それなりにうん、それなりのアパートが2棟。
昼メシの為に食堂へ案内された。
そこには北斗の拳や魁男塾などの漫画に出てきそうなデカくて厳つい男性が座っていた。
頭にタオルを巻いた一見見た目は悪くないがかなりクセが強い30代半ばくらいの男性が洗い物をしていた。坊主頭、ジャージ姿の小柄な男性が弁当味噌汁ご飯を出してくれた。
メシ…留置所の弁当と同じだ。懐かしい。
メシを済ませると、事務所に呼ばれた。先程の白髪オールバックはどうやら寮長らしい。
改めて注意事項やルールの説明を受ける。
そして、部屋へ。部屋は2階のカド。
2部屋あり、その1室を充てがわれた。
相部屋になる住人はやはり年齢不詳の白髪が目立つ歯抜け(最近歯抜けの人ばかりみる)の男性。
先程の厳つい男性がテレビを運んできてくれて、布団などの説明をしてくれた。時々笑顔を見せてくれたので一安心。
食事1日3回。朝は7時から7時15分、昼は12時から12時15分、夜は6時から6時15分。15分しかない。
相部屋の男性は色々教えてくれた。
場所が場所だけに住人たちのクセはかなり強い。
とりあえず、K町のクリニックまでは歩かなければならないから、早めに出発。雨は止んでいた。
15時過ぎに到着。
慣れている受付のおばさんたちの視線が痛い。
順番を抜かされつつも呼ばれる。
深呼吸をして入室。H先生の顔もかなり険しい。まずは深々と謝罪。
先生は怒りを抑えつつも、
あなたはいい加減な人だね」と。
この1ヶ月の事情を説明。
薬は変わらなかった。また再就職へ向けて頑張っていこうと話は終わる。
1階に整形外科が新しく出来ていた。
薬を貰った後に立ち寄ってみたが、大混雑。これでもいつもより少ないと。夕食の時間を考えたら待っていられないので受診は断念。
帰り道に100均がないから、コンビニで2リットルの水だけ買って戻る。
戻ると相部屋のSさんが風呂に入るなら今のうちにと。
風呂は共同。湯船とシャワーあり。
湯船はなみなみにお湯がはってあり、入ると溢れ出す。とりあえずシャンプーは無しで体だけ洗って風呂を出る。
戻って荷解きなどしていると、晩飯の時間が近くなる。食堂に早めに行くと怒られるというから1分前から丁度に行くようにと。
食堂に入ると、ギョロ目タオルがいた。座る場所などを教えてくれたが、別の人が1番奥なら空いていると教えてくれたので、新入りらしく末席へ。
皆、言葉を交わすことなく、淡々と弁当を温め、ご飯をどんぶりに盛り、味噌汁と麦茶を準備して食べ始めた。
1人、目つきが悪い若い男がいた。こっちを睨む感じで見てきたが、さりげなく無視。
ギョロ目タオルが紹介してくれたが、皆の反応は薄い。すぐに寮長がきて再び紹介。今度は少し反応あり。
噛む暇もなくメシを終えた。
部屋に戻るとSさんが100均に行くなら今日までのバスの定期券があるから使っていいよと。近くのバス停から乗って駅に向かって、帰りは交番前から乗るといいよと。
バスに乗ってから気付いたのだが、定期券は逆方向のものだった。文句も言えないので、定期券の使用を断られた時用に現金も用意。
100均では何を買っていいのかよく分からなかったので、とりあえず頭に浮かんだものを買う。小腹が減った時用のおかしをひとつ買った。
帰りも定期券が使えるかどうか不安だったから現金も用意。何故だか使えた。
部屋に戻って定期券を返すと、
使えたの?俺、逆方向を伝えちゃったね。まあ、使えたのなら良かった
うーん。こいつも信用できないな。
だが、色々世話になるので買ったお菓子をあげた。
部屋に戻って、狭い部屋いっぱいに布団を敷いて横になる。
チャットをしていたら、睡魔が襲ってきたから22時就寝。


今日も長い1日だった。ここは恐らく刑務所を出所した人で身寄りがない人がステイする施設なんだろうな。
ホームレスになるよりも数百倍マシだからいいか。
早くシャバに戻りたい。  

これが私の無料低額宿泊所との出会いだった。
300日すべては書けなかったけど、蟻地獄のような酷い施設の有様を訴えたいから無料公開に踏み切りました。


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