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日曜日、夕方5時、そよ風に吹かれて。

毎週日曜日にひそかに楽しみにしていることがある。それは夕方5時ごろに一本の煙草を吸うことだ。夕食の下ごしらえだけしてテラスに行き赤いマルボロの箱から煙草を一本取りだしてマッチで火をつける。常習者からすると奇妙に聞こえるかもしれないが、私が煙草を吸うのは一週間の中でもこの一本だけなので、日曜日の夕方に何とも言えない10分をマルボロと共に過ごしている。特にこの時期の晴れた日の夕方はそよ風が妙に心地よく感じる。

一つ吸って一つはいて、もう一つ吸って今度は煙で輪っかを作ってみたりしてみる。輪っかは風に吹かれて形が崩れる。そういえば父も昔は喫煙者だったんだっけ?そんな幼少期の淡い記憶とともに煙は宙へと消えてゆく。ふと足元に目線を配ると、ハルジオンの花に一匹の蝶が止まっている。風に吹かれた草花が春の香りを運んでくれる。その草をかきわけて一匹の野良猫がかけてゆく。目線を少し上げれば木の枝に二羽の鳥が止まっている。

生き物たちは私と違って週に一度しかここに来てないわけではないので、私が週に一度しか彼らの存在に気付いてあげられていないのだろう。そう思うとなんだか空しく感じてくる。私は煙草を吸っている10分間しか日常の美しさに気づくことができないのだろうか。アレックスよ、何をそんなに急ぐことがあるんだい?忙しい時間を送るのは結構だが、約束の列車はそんなにすぐには発車しないのだよ。ならば少し立ち止まって周りを見渡せばお前の知らない景色がまだまだたくさんあるはずだよ。

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