でけぇ枝。
20240916
紅茶を淹れてソファーについた途端、目線の先の部屋の空いたスペースに、でけぇ枝を置きたくなった。
たしか近所のお花屋さんは、そういうでけぇ枝も置いていた気がして、わたしは早速着替えると、淹れたばかりの紅茶を置いてけぼりに家を出た。
近所のお花屋さんはこじんまりとしていて、扉を開こうとした瞬間に「ない。」と分かったが、気配を悟られたので一応扉を開け、さらっと店内を見て周り、9月半ばに残る湿度をデニムに感じながら家に帰ると、紅茶は空しくも温くなっていた。
未読の並ぶ本棚の2段目から1冊の本を手に取るが、それは程なくして一番下の段に積まれ、ソファーに沈み直すと、わたしはでけぇ枝を諦めきれなかった。
空しくも温い紅茶を置いてけぼりに、近所のお花屋さんよりも品揃えのいい洒落た園芸店まで車を走らせるよう父に頼んだ。
到着すると、ちゃんと「探す」って感じの洒落た園芸店にちょっとドキドキする。
ドキドキしながら探したが、そこは「育てる」系のインテリアグリーンがほとんどで、枝系においては、思ってたんと違うけどでかくはある枝がひとつだけ取り扱われているだけであった。
それでもわたしはとにかくでけぇ枝が欲しかったので、その、思ってたんと違うけどでかくはある枝を購入することにした。
お会計をしながら、「お水は、どれくらいで変えた方がいいですか?」と訊ねる。
「毎日変えてあげ...」
「朝起き...」
「日課...」
ほ。毎日すか。
「毎日」というワードが飛び出た瞬間から、あまり話が入って来なかった。この、わたしの肩くらいまであるでけぇ枝を、でけぇフラワーベースから抱え出して水を入れ替えるなんて、そんな介護のようなことを...?
まあ、わたしは一日の帳尻を24時間で合わせずに生きてるので、何となくでやらせてもらいますよっと。
でけぇ枝を抱えて父の待つ駐車場へと向かうと、父は車の中でぐーすか寝ていた。こんなでけぇ枝を抱えて駆け寄るファニーでかわいい娘の姿を見逃すなんて、ありえない。
この姿を「かわいい〜!」と言って写真に収めようとしてくれる人のお嫁さんになりたいものです。
家に戻り、でけぇフラワーベースに水を汲む。
蛇口を開けてから30秒は待ったこのフラワーベースは、部屋で蹴飛ばしたら、きっと、床置きしているマッシュルの漫画が全巻やられる。
目線の先の部屋の空いたスペースに置きたくなったでけぇ枝を、目線の先の部屋の空いてるスペースに置いてみたら、結構邪魔だったし、紅茶は冷たくなっていた。
でけぇフラワーベースに汲んだ水は、夜を迎え、朝を迎え、夜を迎え、朝を迎え、夜を迎え、朝を迎え、夜を迎え、朝を迎え、夜を迎え、朝を迎え、夜を迎え、朝を迎えた。
While Writing
『Lamp/部屋の窓辺』
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