その13 半落ち…教師の罪(1377文字)
1 はじめに
捜査一課の刑事のように、取調室にて、目の前にいる被疑者と対峙して、言葉のやり取り、表情、動作、ひいては目の動きから、真実を導き出し、完全なる自供、自認を得られのは、神業でしょう。
2 「悪気なく、(善意で)したけど…」
しかしながら、刑事であっても、ごくわずか、まして、教師となれば、子どもの『供述』だけで、すべての真実を引き出すのは、ほぼ不可能ではないでしょうか。
いじめ容疑について考えます。
子どもは、教師の聞き取りに対して、小出し小出しに答えます。
たいていの場合、自己保身がそこに入ってきます。
例えば、「悪気なく(善意で)したことが、よく考えたら、あの子を傷つけることになっていた。だから、ごめんなさい。」ということである。
しかし、この「悪気なく(善意で)したこと」という枕詞が曲者なのです。
それは、自分の行動のうちの約20パーセントを表す気持ちであり、実はというと残りの80%は、あの子のことが「嫌い」という自分勝手な動機によるものであったりします。
3 半落ち
この20パーセントの動機に基づく供述、これによって、謝罪の場がもたれたとします。
しかし、それは一時的な解決であって、また同じようなことが起こります。
なぜなら、根本的な解決に至ってないからです。
先生には、自分のことをよく思ってもらえる20%の理由をさらけ出したに過ぎないのです。
その程度の気持ち『半落ち』で、先生は認めてくれて、相手には「ごめんなさい」と形だけ謝れば済んだという経験は、未熟な子どもにとってどれだけの危険性をはらむ指導になっていることでしょうか。
こういう日々を積み重ねて行くことで、とんでもない友達関係が『育まれ』、とんでもない学級、学年団ができあがってしまいます。
4 ウラどり
こうならないためにも、しっかり『裏を取る』必要があるのではないでしょうか。
裏取りの最たるものは、被害者側の供述をしっかり取るということです。
それを基本として、被害者の供述の根拠も、友達や、必要に応じて保護者から聞き取ったり、メモ書きやメッセージ等物的な証拠で押さえておいたりすることも重要ではないでしょうか。
時系列を整理していくことも重要だと思います。
5 教師の罪
一度こっきりであれば、20%の理由で、被害者に「ごめんなさい」をしても、解決すると思います。
その経緯、結果を、被害者側の保護者に説明しても、それで解決することもあると思います。
一度こっきりであれば。
しかし、20%の理由での解決では、必ず、同様のことが複数回起こってしまいます。
そのうちに被害者側の子どもやその保護者は、20%以外の理由があることを感じて、どうしようもない気持ちで日々を過ごすことになります。
一方、20%の理由で言い逃れをしてきた子どもは、正しさを忘れ、少しずつ良くない行動がエスカレートしていきます。
そうして正しさがわからなくなった子どもは、悲しいかな良好な友達関係、大人でいう良好な人間関係を築くことができない結論に至ります。
そうすると、関係するすべての子どもが不幸になります…。なんて悲しいことでしょう。
でも、その原因は、子どもたちを預かる学校にあります。
いや、学級担任、学年主任にあるのです。
子どもを見とることのできない教師の罪です。