その48 居心地のいい教室『聞く』文化(1648文字)
1 はじめに
こんな例え話を聞いてください。
学級担任
「みなさん、今から5分後、3時30分に帰りの会を始めます。」
「ですから、日直さんは、時間通り始められるように、帰りの用意をしてくださいね。」
-5分後-
帰りの用意が途中までしかできていない子が、ちらほら…。
帰る用意半ばで、うろうろ立ち歩いている子も、ちらほら。
帰る用意よりも、おしゃべりをする子も、ちらほら。
日直さん
「今から帰りの会をはじめます。」
担任の先生
「日直さん、素敵でしたね。時間通りに、帰りの会を始めることができましたね。」
2 ん?
日直さんが、5分後に帰りの会を始めたことは、素敵なことです。
また、5分後に帰りの会を始められるように、自分の帰る用意を迅速に、かつ、確実に済ませた日直さんは、素敵だなと思います。
更に、低学年であればあるほど、より素敵な「日直さん」なんだと考えることができそうです。
3 学級という『チーム』を育む役割?
日直の役割は、その日の日直さんである『一人だけ』に与えられたものではない、と考えました。
おかしなことを言っているようですが、もう少し詳しく言いますと、日直として、朝の会の進行等、役割を具体的に進めるのは、その日の日直さん一人(学級により複数かもしれません。)かもしれません。
しかし、学級という『チーム』を育む為の役割と捉えた時には、『学級全体』として、日直の役割を意識する必要があるはずです。
当たり前過ぎるかもしれませんが、この意識の有無で、子ども達の成長、学級としての成長、居心地の良さ、はたまた、学級担任のやり甲斐(負担感)等が大きく変わってくることでしょう。
ひいては、教職の魅力にも関わってくるのではないでしょうか。
4 『聞く』文化
『聞く』文化、教室にありますか?
今回のnoteでは『聞く』とは、「他者の声を聞くこと」と定義します。
『聞く』のは誰かと言うと、話をしている人以外の全員です。
今回の例え話では、先生の話を聞くのは、学級にいるすべての子どもです。
また、日直さんの話を聞くのは、日直を除いた、学級にいるすべての子どもと先生ということになります。
◯ 先生の言葉
「みなさん」「日直さん」とありますので、先生の言葉は、教室にいる全員に向けられているはずです。
◯日直さんの言葉
「今から帰りの会を始めます」という言葉は、教室にいるすべての子どもと先生に向けられているはずです。
日直さんは、先生という他者の話を聞いて、予定通り帰りの会を始めました。
仮に、この学級において「聞く」文化が育まれていたとします。
であれば、先生が学級全体に、帰りの会までの話をした時や、日直さんが帰りの会を始めた時には、学級全員が自分ごととして、その声に耳を傾けることができていたことでしょう。
教室では、誰かが話を始めた時には、必ず耳を傾けようとする、他者をリスペクトする意識(決して上下関係ではありません)を築く必要があります。
かと言って、機械のように、すべての子どもが、帰る用意を完璧に済ませて、ぴしっと席に着いていることが、最上位の目標では、ありません。
本当に大切なのは、先生の言葉を、自分ごととして聞いて、お互いをケア(声かけ、気遣い)しながら、5分後に、帰りの会を始められる環境を作り上げることです。
仮に、帰りの用意が終わっていない子がいてもいいのです、立ち歩いておしゃべりをしたくなる子がいてもいいのです。
大切なことは、すべての子ども達が、相互に作用し合うことでは、ないでしょうか。
学びとは、自分以外の他者の声を聞く、受け止めることからはじまるものではないでしょうか。
新しいことに気づいたり、疑問を抱いたり、考えを比較したりすることで、交流の機会が生まれ、学びのきっかけを得ることができるのではないでしょうか。
5 おわりに
『聞く』文化を育むことで、教室で集う学びの意味を再認識するとともに、すべての子どもにとって居心地の良い環境を作りあげたいものです。