日本学園(明大世田谷)の2023入試倍率がスゴかった
今年度、芝国際と並んでもう一つの注目校となっていた日本学園の入試結果についてまとめておきます。
今年注目を集めた日本学園
伝統ある男子校の日本学園ですが、昨年までは正直それほど有名でないというか、大手塾の偏差値表にも載ってこなかった学校です。唯一載っていた首都圏模試の偏差値表では、40〜42というのが2022年の偏差値でした。
そんな日本学園ですが、今年は昨年比で600〜700%という驚異的な出願者数を集めました。その理由がこれです。
明治大学の系列校となり、2026年から明治大学付属世田谷中学校・高等学校になるということです。
そして、明治大学への内部推薦が2029年度から、つまり今年入学する中1生が高校を卒業する年からということで、今年の中学受験生から実質的な付属校化、ということになります。
ちなみに日本学園には高校受験で入学することもできますが、内部推薦を獲得できるのは3年後の高校入試、つまり同じく今年中学へ入学する学年が高校生になる年から、ということになります。
中学受験の定員
上のリンク先には、"系列校化と同時に男女共学校とする"との記載がありますが、共学となるのは2026年からということで、現時点ではまだ男子校のままです。
今年度の中学受験での募集は男子のみで、募集定員は次の通りでした。
第1回|2月1日|70名
第2回|2月4日|30名
第3回|2月5日|20名
3日間合計で120名というのが現時点の定員となっています。ちなみに昨年までは90名だったようです。
ちなみにGaccomによると、2020年度の生徒数は1年生17人、2年生25人、3年生25人ということで定員割れしていた模様です。
高校受験の定員
共学化される2026年から、高校入試も変更になることが予想されますが、現時点での高校入試は次の通りになっています。
推薦入試 |1月22日|131名
併願優遇 一般第1回|2月10日|90名
併願優遇 一般第2回|2月14日|42名
高校からの枠の方がだいぶ大きく、合計で263名となっています。
ちなみに2021年4月の生徒数は次の通りのようです。
1年 181名(19名/98名/64名)
2年 123名(16名/65名/42名)
3年 152名(26名/84名/42名)
(特別進学コース/総合進学コース/スポーツコース)
出典:日本の学校
中入生と合わせた定員が353名とすると、こちらも定員割れをしていたと考えられます。
ちなみに主題からはずれますが、2022年の進学実績を見ると北大や岐阜大医学部に1名ずつ、早稲田大8名、明治大も11名など、難関大へも合格している生徒はいるようです。
明治大学への推薦基準
気になる内部推薦については次の記載があります。
200名が明治大学へ推薦で進学できるようにするということで、仮に今の高校の人数のままなら全員が進学できるように見えてしまいますが、さすがにそんな都合良くはありません。
卒業生の7割で200人ということなので、高校の一学年定員は300名弱を想定していると思われます。中学定員が120名なので、高校からは150〜200名の間くらいの定員を設定することが想像できます。
現行の定員よりはだいぶ減りますが、実際の入学生は増えることになるでしょう。そして中学受験より高校受験の方が人数枠が多いということになりそうです。
あと気をつけるべきは"同高等学校卒業生のおよそ7割(約200人)以上が、本学へ推薦入学試験によって進学できる教育体制の構築が目指される"という表記ですかね。
あくまでも卒業生の7割というのは目標値であって確約ではなく、生徒の学力レベルが明治大学へ進学するレベルに到達していないと判断されれば人数が下回る可能性はあり得るということだと思います
入学時の人気度合いや学力レベルにもよると思いますが、数年かけて7割の進学者を達成する、くらいに思ってもいいかもしれません。
日本学園 2023年入試結果
前置きが長くなりましたが、2023年の入試結果です。
一応昨年度の数字もカッコ書きで入れいてますが、ほぼ別の学校と位置付けられるものを比較しても意味はないので、今年の入試の実質倍率と合格者数に注目してみたいと思います。
超高倍率
第2回・第3回は10倍を超え、比較的狙い目と思われる第1回目でも4.7倍ということで、大変な高倍率だったと言えるでしょう。
他の明大付属系の試験が2月2日から(明大八王子のみ1日あり)が主流という併願のしやすさも後押ししたのかもしれません。
全体の倍率もそうですが、2月1日試験で5人に1人しか受かっていないというのは、精神的な面でもだいぶ厳しい入試になったのではと想像します。
合格者が少ない
高倍率の理由として、受験者が多いのももちろんありますが、それよりも合格者が少なかったというのが今回の大きな特徴になっているかと思います。
3日間の合計人数も出していますが、定員120人に対して141人、定員比+21人しか合格者が出ないというのは、中学受験としてはあまり見ない数字です。
辞退がほとんどないと見込まれたのか、期待した学力レベルでなかったのか、まあ表に出てくることはないとは思いますが聞いてみたい感じがしますね。繰り上げが出るのかどうかも気になります。
他の明大付属校との比較
この倍率が妥当なのかを見るため、他の明大付属校と比べてみたいと思います。
ちなみに明治大学付属中野八王子中・高については、2024年に明治大学付属八王子中・高に名称変更が決定しているとのことで、ここでは明大中野八王子ではなく明大八王子と表記します。
他の学校と比べても、やはり今回の日本学園の合格者数の少なさ、それに伴う高倍率が目立ちます。
明大八王子Bも倍率が高いですが、ここは午後入試で総合問題1つのみという特殊型入試であることを踏まえると、通常の入試でそれを上回っている日本学園の高倍率さがわかるかと思います。
この入試、果たしてどの辺りの偏差値帯の子が受けていたのかが気になります。
立地的にも近い男子校である明大中野と併願した人が多いのかなと想像するのですが、この合格者数だと明大中野の抑えになったのかどうか、ちょっと危惧してしまいます。今後偏差値がどの辺りにポジショニングされるかも気になりますね。
ちなみに明治大学への内部推薦進学はこんな感じです。
明大中野:8割
明大明治:9割
明大八王子:9割
明大中野がやや低いのは何でしょうかね。男子だと勉強しなくなって学力が足りず、推薦基準に到達しなくなる子が一定数出てくるってことなんでしょうか。。。
個人的に思うこと
さてここまで見てきて、ちょっと思ったことを書いてみます。
明治大学の付属校となり内部推薦ができるというのは非常に大きいことで、大学の序列でもMARCHトップと言われる明治大学ということもあってこの注目度の高さは納得するところではあります。
最寄りが明大前駅という立地の良さもあって、おそらく中長期目線では明大中野や明大明治と近しい人気か、むしろ逆転するくらいの学校になってもおかしくないと思います。
ただちょっと冷静に見るべきと思うのは、あくまで内部推薦は「卒業生の7割・200人を目指す」という書き方でしかない点で、入学さえすればエスカレーターで自動的に明治大学まで上がれるわけではないということですね。
最初の方で書いた通り、中学の120名に対し、高校では150〜200名が追加で入学してくることが想定されます。その学年の高校募集時には名前も"明治大学付属世田谷高校"となり、名実共に明治大の付属校と認識され、それなりの高学力層が入学してくることになるのではと思います。
一概に高校入学生の方が優秀とは言い切れませんが、中だるみした中入生より高校受験に向けて頑張ってきた生徒の方が高一時点での学力は高い、という可能性は大いにあると思います。と考えたとき、下手をすれば明治大学への推薦枠200名分は、高校から入学してきた人たちで埋められてしまうという事態もあり得るのではと思います。
ということで、この偏差値で明治大学に行けるなんてお得だ、といった理由で選ぶのはちょっと危ないのではと思っています。
別にネガティブなことを主張したいわけではないですが、大学に上がるにはそれ相応の学力は必要だろうということで、少なくとも、付属校へ入学できたからもう安心、勉強はそこそこでもいい、という考えを持ってしまうのは危ういということは言えるかと思います。
このたび晴れて入学を決めた方は、少なくとも高校受験で入ってくる生徒とタメを張れるくらいの学力は持てるよう、しっかり勉強を続けるべきと思います。
今回の入試結果偏差値がどの程度で出てくるのかとても気になりますし、私も楽しみに待っているところですが、一歩引いた目線で受験生親である自分達にアドバイスするなら、入試の学校偏差値に惑わされるな、と言いたいところですね(一旦は受験終了し、次までまだ余裕がある今の立場から偉そうに言っています)。
この学校に関して言えば、高3までに明治大学に入れるだけの学力があることが必要条件と考え、受験時にも他の付属校と同程度の偏差値は目指したいし、入学後もそれは同様だろうと考えます。
大学付属校は入ってしまいさえすればひと安心、みたいなイメージが一般的にはあると思いますが、系列大学に100%上がれるわけでもなく(早慶の一部など100%に近いところもありますが)学力上位の高校受験生が入ってくることも考えると、楽ができるからとか、お得な学校を探す、みたいな考え方で選ぶのは危ういような気がしますね。
まあいずれにしても、この狭き門をくぐって見事合格を勝ち取った子たちは、弛むことなく頑張っていってもらえればと思います。