【大学附属】明治大学の付属校を徹底調査
大学附属校調査の第3弾は明治大学です。早慶の回に続き(だいぶ空きましたが)明治大学の入試制度と付属校4校について調査しました。
学校の内容よりも(多少は触れますが)、敢えて入学定員や進学先といった数字を追いかけていくことにフォーカスしています。これによって、明治大学への入学ルートの全体像を把握することを目的にします。
親世代よりも受験事情は複雑になってきているので、大学受験まで含めた受験全体の大きな流れを見るのにも活用していただければと思います。
大学定員と内部進学の全体像
大学入学定員の全体像
まずは明治大学の入学定員についてざっとまとめます。
明治大学は内部進学割合が12%ということで、慶應(23%)や早稲田(18%)に比べると低めです。9割近くが外部から入学してくることになります。
一般入試(学力型入試)の割合も高めで、6割弱であった早慶より1割多い7割弱ということで、大学受験では比較的受けやすい側の大学ということになるかと思います。ただ親世代と違い、全学部統一入試や大学入試共通テスト利用入試など入試形態が細分化され複雑になり、ひとつの入試での定員が小さくなっている点は注意が必要そうです。グラフにすると次の通りです。
文系・理系ごとに分けると次の感じです。
文系学部より理系学部の方が学力型入試の割合が1割ほど多めです。これは文系学部では内部進学と総合型選抜の割合が多いことが主な要因です。文系学部では学部別入試は半分を切っています。
内部進学ルートの全体像
明治大学の系列校は以下の4校です。
明治大学付属明治高等学校・中学校(明大明治・明明)
明治大学付属中野中学・高等学校(明大中野・明中)
明治大学付属八王子中学高等学校(明大八王子・明八)
日本学園→明治大学付属世田谷中学校・高等学校(明大世田谷?)
このうち、学校法人明治大学が運営するのが明大明治で、明大中野と明大八王子は学校法人中野学園となっています。明大八王子はその関係から、明大中野八王子という、どこにあるんだかよくわからない学校名で呼ばれていましたが、2024年に中野を外し明大八王子という分かりやすい名称に変わることが発表されています(ここでは明大八王子とします)。
そして2021年には男子校の日本学園を系列校化することが発表され、2026年からは共学化した上で明治大学附属世田谷中学校・高等学校へと名称変更するとされました。また、2029年の卒業生から7割(約200人)が内部推薦により明治大学へ進学することも掲げられ、名実ともに付属校という位置付けになる予定です。
人数を含めた進学のイメージは次の通りです。
ポイントになりそうなところを挙げます。
高校入試415人、中学入試550人で中学からの方が間口はやや広い
明大中野の分だけ男子が多い
明大世田谷ができると高校入試枠も、全体の女子枠も増える
明大中野の規模が大きいので、早慶附属と同じく男子有利であることに変わりはないのですが、共学の明大世田谷ができることで今後はある程度緩和されそうです。
各系列校からの進学先割合
細かなデータはそれぞれの学校ごとに見ていくとして、まずどの学部への進学が多いのかを割合で見ておきたいと思います。
明大明治は学部ことの推薦枠がなく自由なため、(それほど大きくはありませんが)年によって人数の上下があります。逆に明大中野・明大八王子はほとんど年による上下がなく、比較的厳しめに枠が設定されているのかなと想像します。グラフで見ると次の通りです。
明大明治は商学部・政治経済学部が多めのようです。明治大学の看板学部は他校ほど明確ではないものの、商学部・政治経済学部・法学部あたりが人気のようなので、進学先の選択もまあそういう序列になっているのかなと思います。
明大中野と明大八王子は法学部・経営学部が多めですが、それよりも、グラフを比較するとほぼ同じ割合になっているのが特徴的に感じます。この2校は明治大学の直系ではなく中野学園という学校法人であることから、同じような推薦枠が設定されてその枠通りの進学になっているのかなと考えることができます。
ではここから、具体的に各学校を深掘りして見ていきます。
明治大学付属明治高等学校・中学校
学校法人明治大学が設置する直系の付属校です。2008年に神田猿楽町(御茶ノ水)から調布へとキャンパスを移転したのを機に共学化され、2020年からは男女比も1:1になりました。最寄駅からのアクセスはお世辞にも良いとは言えませんが、それと引き換えに広大なキャンパスを手に入れ、Webサイトのトップに「進化する伝統校。」と掲げているように、変革にも積極的な印象を受けます。
校風・教育の特徴など
附属校としては比較的管理型で、しっかり勉強させる学校のようです。特に英語教育は力を入れていて、多くの海外留学プログラムを準備しているほか、中学から高校へは英検準二級の一次合格、大学推薦には英検二級とTOEIC450点以上という基準があるようです。
明治大学へは推薦基準を満たせば推薦され、約9割が進学しています。また希望する学部への進学が原則可能とのことで、これは他の学校にはあまりない仕組みかと思います。さらに国公立大学や、明治大学にない学部(医学部など)の私立大学へ、推薦権を保持したまま受験も可能のようです。
明治大学との高大連携プログラムにより、高等教育の先取りや進路選択のきっかけとすることができます。司法試験や公認会計士試験を先取りで学習する人もいるようで、目標が明確な人にはメリットがありそうです。
入学試験
【高等学校】
一般入試:学力検査(国語・英語・数学)[2月12日]
推薦入試:適性検査(国語・英語・数学)・面接(2回)[1月22日]
【中学校】
第1回:筆記試験(国語・算数・社会・理科)[2月2日]
第2回:筆記試験(国語・算数・社会・理科)[2月3日]
高校は男女50名ずつに対し中学は75名ずつということで、やや中学からの方が募集定員が多めです。
高校入試では推薦入試と一般入試の2回チャンスがありますが、推薦入試でも適性検査という名前ながら国語・英語・数学の試験が科されます。一般入試では、推薦入試の受験者には5点の優遇があるようです。
中学入試でも2回のチャンスがあり、第1回入試の受験者は第2回入試にて3点の優遇措置があります。また帰国生にも基準に応じて5点または10点の優遇があります。(明治大学付属明治高等学校・中学校 よくあるご質問より)
男女で見ると、高校・中学ともに男子は他校へ抜ける人が多いのか合格者数は多めで、そのぶん女子の方が倍率が高く厳しい入試になっているようです。
学費
進学先
明治大学への推薦資格を保持したまま国公立大学(明治大学にない学部であれば私立大学も可)の受験が可能です。推薦基準を満たせば全員が明治大学への推薦を取得でき、さらに希望する学部への進学が原則可能ということで、実際に9割近い生徒が進学しています。学部の希望が通るということで人気の傾向も見ることができますが、商学部・政治経済学部で毎年半分程度の進学者を出している感じです。
再掲となりますが、2024年の進学先グラフは次の通りです。
明治大学付属中野中学・高等学校
明治大学の付属校ですが、運営は学校法人中野学園であり直系の明大明治とは法人が異なります。戦後(1949年)に明治大学の付属校となり、現在では明治大学系列では唯一の男子校です。2003年までは男女共学の夜間定時制高校があり、多くの芸能人の出身校として名を連ねています。
校風・教育の特徴など
基礎学力を重視し、授業に集中するための体力と精神面を伸ばす指導を行なっているとのことで、大学附属校としては管理型に分類されます。高校では朝の講習など、部活動と両立するため仕組みが作られています。
文武両道をうたいクラブ活動が盛んで、高校ではスポーツ推薦もあってか強い運動部が多いようです。
明治大学への推薦権を保持したまま国公立大学の受験が可能で、毎年一定数の進学者がいます。高2から文理分けもされますが、進学校的な先取り学習は行なっていません。
入学試験
2025年度より中学入試の定員を240→270名へと拡大、2028年度より高校入試の定員を165→150名へと縮小することが発表されました。
【高等学校】
一般入試:学力検査(国語・英語・数学)[2月12日]
推薦Ⅰ型入試(総合):書類審査・適性検査(国語・英語・数学)・個人面接[1月22日]
推薦Ⅱ型入試(スポーツ特別):書類審査・作文・個人面接[1月22日]
【中学校】
第1回:筆記試験(国語・算数・社会・理科)[2月2日]
第2回:筆記試験(国語・算数・社会・理科)[2月4日]
高校入試では推薦入試と一般入試の2回チャンスがあり、推薦Ⅰ型入試の受験者には一般入試で5点の優遇があるようです。
中学入試でも2回のチャンスがあり、第1回入試の受験者は第2回入試にて3点の優遇措置があります。また第2回入試で繰り上げ合格がある場合は2回とも受験した人を優先する場合があるとのことです。(募集要項より)
学費
進学先
明治大学への推薦資格を保持したまま国公立大学の受験が可能です。明治大学への推薦は、高校3年間の成績と、推薦学力テスト(高2で1回、高3で2回)から算出されます。希望学部への推薦はここで算出された成績順に決まっていくようです。明治大学への推薦進学率は約8割、残りは国公立大の受験や指定校推薦での進学があるとのことです。
進学先学部の割合は次の通りです。年度ごとの人数増減がほとんどないことから、学部ごとの推薦枠がある程度定められているのかなと感じます。
明治大学付属八王子中学高等学校
明大中野と同じ学校法人中野学園が運営していて、2024年より明大中野八王子から明大八王子となることでわかりやすくなりました。1984年設立と比較的新しく、当初は男女別学だったのが1994年から男女共学となっています。
校風・教育の特徴など
八王子駅・拝島駅からスクールバスという決して便利とは言えない立地ですが、学校紹介でも"森"という言葉がよく出てくる通り、自然の中で学ぶということを意識していると感じます。
教育理念は明大中野と共通で、付属校としては管理型、講習によるサポートも積極的に行なっています。
明治大学への推薦権を保持したまま国公立大学の受験が可能で、毎年一定数の進学者がいます。高2から文理分けもされますが、進学校的な先取り学習は行なっていません。
入学試験
【高等学校】
一般入試:学力検査(国語・英語・数学)[2月11日]
推薦入試:書類審査・適性検査(国語・英語・数学)・面接[1月23日]
(単願推薦方式:埼玉県以外、B推薦方式:埼玉県内国公立生)
【中学校】
A方式入試 第1回:筆記試験(国語・算数・社会・理科)[2月1日]
A方式入試 第2回:筆記試験(国語・算数・社会・理科)[2月3日]
B方式入試:筆記試験(国語・算数・社会・理科)・総合問題[2月5日]
高校・中学とも、女子より男子の方が受験者数が多く倍率も高くなっています。共学の付属校は女子の方が比較的倍率が高くなることが多いですが、逆になっているところは特徴的だと思います。
なお複数回受験での優遇はWebサイトには情報がありませんでした。ただ他の明大系列校では行われているので、学校説明会等で確認してみるのが良いと思います。
学費
進学先
明治大学への推薦資格を保持したまま国公立大学の受験が可能です。明治大学への推薦は、高校3年間の成績と、推薦学力テスト(高2で2回、高3で2回)から算出されるようです。明治大学への推薦進学率は約9割と、明大中野よりも高くなっています。
進学先学部の割合は次の通りです。年度ごとの人数増減がほとんどなく、割合も明大中野とほぼ同じことから、学部ごとの推薦枠がある程度定められているのかなと感じます。
日本学園中学校・高等学校
ここ2・3年での大きなニュースが日本学園の明治大学付属校化ですね。2026年に明治大学付属世田谷中学校・高等学校となり、この年の入学生が卒業する年(2029年)から明治大学への推薦入学が開始します。明大明治と同じく明治大学の直系の付属校となり、立地もその名前通りの明大前駅ということで非常に注目度が高いです。
校風・教育の特徴など
運営母体が大きく変わって付属校となり、男子校が共学校に変わるということなので、ほぼ新しい学校に変わると思った方がいいでしょう。
明大世田谷としての教育プログラムなどは開校を待ってからとなると思いますが、現段階で教育の柱は「国際理解教育」「キャリア教育」「理数教育」と発表されています。→Webサイト
入学試験
現状の日本学園の入試について挙げておきます。
【高等学校】
併願優遇一般第1回:学力検査(国語・英語・数学)・面接[2月10日]
併願優遇一般第2回:学力検査(国語・英語・数学)・面接[2月14日]
推薦入試:作文・面接(個人)[1月22日]
【中学校】
第1回:筆記試験(国語・算数・社会・理科)[2月1日]
第2回:筆記試験(国語・算数・社会・理科)[2月4日]
第3回:筆記試験(国語・算数・社会・理科)[2月5日]
発表内容から逆算すると、2023年度入試での日本学園入学生から明治大学推薦枠の利用が可能になるということで、倍率も偏差値も爆上げとなりました。今後もしばらくは人気化が収まらないと予想されています。
学費
学校変更時に改訂が予想されますが、一応現行のものを挙げておきます。
進学先
現時点では明治大学への推薦進学がないので割愛します。
まとめ
以上、明治大学の入試と、付属校についてみてきました。
特徴的な進学制度
見てきた通り、明治大学への推薦資格を保持したまま国公立大学の受験ができるというのが共通した制度となっていて、これが早慶附属校と大きく違う点かと思います。(早慶附属校の場合、他大学を受験する場合は推薦を放棄しなければいけない)
学年の8割以上が明治大学へ進学する空気感の中で受験勉強することになるので実際は簡単でないとは思いますが、入学時と考えが変わった場合に取れる選択肢が広がるという意味で、ありがたい制度ではないでしょうか。
また、一般的には学部ごとに推薦人数枠があって成績順に希望学部を選ぶ(希望学部に進めない可能性がある)というのが普通ですが、明大明治は原則希望した学部への推薦権が得られるというのは他にはない大きなメリットだと思います。
ただ、進学率が100%に近い早慶附属校と比べてやや低く8〜9割というところなので、推薦の基準ラインは厳しめなのかもしれません。(しっかり勉強しなければいけないという意味で、親目線では良いかも?)
親世代とのギャップ
最後にもう一度、明治大学の入試ポイントを挙げ親世代との違いを考えてみます。
全定員に対する一般入試の割合は70%程度(共通テスト利用を含む)
文系学部の一般入試枠は50%程度
入学者に占める内部進学者の割合は10%強
明大世田谷の設置により、2029年度からは内部進学割合は15%程度まで上昇することが見込まれます。
私立大学全体の流れとして、付属校の拡大、選抜方法の多様化(総合型選抜、共通テスト利用入試など)が進んでいて、従来型の一般入試は縮小傾向にあります。明治大学は一般入試割合が高めのようですが、それでも文系学部では定員の半分しか枠がないので、その辺りは頭に入れておく必要がありそうです。
ちなみに親世代よりも明治大学の人気は上がっているとか、女子で希望する人が多いとか、大学入試も難しくなっているといった点は知っておいて損はないと思います。そして最終学歴として明治大学を希望するなら、中学や高校からというのもひとつの選択肢にはなるでしょう。
推薦資格を保持したまま国公立大受験ができるということで、明治大学を保険にしてさらに上を目指せると考えて選ぶ人もいそうです。ただ9割近くが内部進学するという環境の中で、進学校のような先取り学習もなく、推薦のため学校の成績も気にしながら受験勉強をするというのは、現実問題として結構厳しいのではと感じます。少なくとも進学校よりは不利なことは明らかなので、やはり明治大学へ進学するということを基本とし、どうしても外部受験したくなった場合の保険がある、くらいの構えで考えるべきなのかなと個人的には思います。
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