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【進学校の横比較】男子Y60編(暁星・攻玉社・サレジオ・芝・城北・巣鴨・逗子開・世田谷・桐朋・都市大・本郷+学附・広尾)

同偏差値帯の進学校を集めて横比較してみようという企画、今回は男子三番手、四谷大塚偏差値で60辺りに多数ひしめく男子校を取り上げます。

ここは数が多く、何らかのかたちで2つに分けることも考えたのですが、偏差値と大学合格実績の相関が微妙だったりして分けることが難しく、全て一覧化して比較した方がわかりやすいと思ったのでまとめてしまいました。

また、共学校である東京学芸大学附属(学附)・広尾学園も、偏差値・大学合格実績から近しい比較対象として見ていきます。東京学芸大学には3つの附属中学(世田谷・竹早・小金井)と1つの附属高校があるので、入試情報は3中学、大学合格実績は附属高校のデータを使用します。

ということで数が多く見るのも大変ですが、色々比較してみたいと思います。

【更新情報】
・2024.10.29 
現役+浪人データと共学校の追加
・2024.9.2 noteへの移行と構成の変更
・2024.6.6   進学実績・偏差値を2024年版へ更新
・2023.9.29 進学実績を3年平均に変更(2021〜2023年)
・2022.12.16 初版投稿(2022年実績ベース)

大学合格実績や教育内容などを深掘りし、グラフ化するなどして横比較していきます。複数の学校を横に並べて比較することで、それぞれの特徴に気付けたり、入試動向を探る材料になればと思っています。


1. 偏差値推移の比較

まずは偏差値の推移です。

ここではサピックス80%偏差値と四谷大塚50偏差値を見ます。年度ごとだと重なりが出て見づらいので、それぞれ前後3年の平均を出してそれをグラフ化しています。

【データ出典】
サピックス:翌年度の第1回志望校判定サピックスオープン80%偏差値
四谷大塚:各入試年度の四谷大塚結果50偏差値一覧

偏差値表の有効性を見るために集計した塾別合格実績は次の通りです。

各塾の2024年合格実績より
*学芸大小金井の四谷大塚実績は非公開のため省略しています

この辺りの難易度になるとサピックスが最多ではない学校も増えてきますが、極端に少ない学校もないので、ここもサピックスと四谷大塚の偏差値表で良いでしょう。神奈川の学校は日能研も見ておきたい感じはありますが。(なお早稲アカ分は四谷大塚+他塾に重複して含まれると見ているのでここでは無視します。考え方はこちらの記事にて。)

今回は線が多すぎて見づらいので、2月1日入試・2日入試・3日以降とに分けて出します。

2月1日(午前)入試

【主な入試変更タイミング】
*本郷①は2014年開始(80名)、2020年80→100名
*桐朋①は2016年190→110名、2019年110→120名
*都市大付属①は2023年2/1AMへ日程変更(50名)
*巣鴨①は2018年120→100名、2019年100→80名
*世田谷学園①は2019年70→60名、2021年理数(5名)/本科(55名)に分割

長期トレンドでは横ばいに見える学校が多いですが、直近の動きで気になるのは次の3つですね。

  • 本郷・広尾学園がどちらの偏差値表でも上昇を続けている

  • 城北・攻玉社がサピックス偏差値で上昇中

  • 芝・世田谷がサピックス偏差値で下落中

特に、がサピックスと四谷大塚で逆方向の動きなのは気になりますね。

広尾学園は、偏差値だけで見れば1ランク上と考えた方が良い感じです。

2月2日入試/2月1日午後入試

【主な入試変更タイミング】
*本郷②は2014年140→120名、2020年120→140名(2013年までの偏差値は①(2日)のもの)
*桐朋②は2016年開始(定員70名)、2019年70→60名
*攻玉社②は2019年70→80名
*巣鴨②は2018年120→100名(③開始により)*巣鴨(算)は2019年開始(20名)
*世田谷学園②は2019年100→80名、2021年理数(15名)/本科(65名)に分割
*世田谷学園(算)は2019年開始(30名)、2021年理数(15名)/本科(15名)に分割
*都市大付属②は2013年からⅠ類/Ⅱ類募集、2023年120→100名(偏差値はⅠ類、2022年までは①(1日PM)のもの)
*暁星①は2020年75→65名(3日→2日に日程変更)

2月1日午後入試は基本的に高偏差値なので注意したいです。都市大②は特にサピックスで急上昇中です。四谷大塚の動きには若干タイムラグがありそうなので、こちらも要注意ですかね。

2月2日は、ここでも本郷の上昇が目立ちますね。巣鴨もV字回復というかたちで直近は上がっているようです。

あとはそれほど目立った感じはありませんが、サピックス偏差値表では学校ごとの差が広がりつつあるように見えるのが気になります。

2月3日以降

【主な入試変更タイミング】
*攻玉社(特)は2019年に国語一科(10名)を廃止
*巣鴨③は2018年開始(定員40名)
*暁星②は2020年開始(定員10名)

比較的緩やかな動きで大きな変化がないというのが全体感ですが、その中で目立っているのが巣鴨世田谷学園ですかね。2019年の算数1科目入試をきっかけに、この日程も急激に偏差値上昇(回復?)してきたようです。

あと、学芸大附属の中学は3校ありますが、3校とも徐々に下落してきているようです。ここは全員が附属高校へ進学できるわけではない点が敬遠要因になってきているのかなと予想しています。

偏差値の上昇・下落はその入試回だけでなく全体的な動きで、日程によって上下が変わるというよりは、入試変更などによって、学校全体が買いになったりそうでなかったりという感じに動いているようです。

2. 大学合格実績の比較

続いて多くの人が関心あるであろう、大学合格実績の比較です。

【データ出典】
・合格者数データは各学校Webサイト、卒業生数は日能研入試情報より

【集計・表記のルール】
医学部などの重複カウントを避けるため以下のルールで集計しています
・一工:一橋大+東工大
・医学部:国公立大医学部医学科(数字に東大理Ⅲと京大医学部は含まない)
・旧帝大:北海道大+東北大+名古屋大+大阪大+九州大
    (数字に東大・京大・医学部は含まない)
・他国公立:(数字に医学部は含まない)
・私立医:私立大医学部医学科
・早慶:早稲田大+慶應大(数字に慶應医学部は含まない)
・上理:上智大+東京理科大
・MARCH:明治大+青山学院大+立教大+中央大+法政大
並び順は東京一工医までの多い順(黄色ライン)

国公立大学実績(2022〜2024年)

国公立大学は、卒業生数を合格者数で割った数字を合格者割合として集計します。ここでは現役+浪人を含む全合格者と、現役合格者の2系統でグラフを作成します。

各グラフに共通した注釈は以下の通りです。
*巣鴨の医学部データは進学情報誌さぴあより

現役・浪人合算の合格者割合

東京一工医(黄色ライン)の順で並べていますが、本郷と暁星を除き、大体偏差値通りに並んでいるかなというイメージです。本郷は偏差値の割にやや低め、暁星は逆に高めに出ている感じです。

学芸大附属は、ちょうど二番手と三番手の間という感じで、この中では最も良い実績に見えます。広尾学園はこの学校群で比較するとちょうど良い感じです。

色の違いで見ると、暁星・巣鴨・学芸大附属の医学部(黄色)が大きいのが目立つ感じですかね。この2校は私大医学部も多く、明確に医学部志向が強いと言えるんでしょう。あとはサレジオの一工(水色)が大きい芝・逗子開成の旧帝大(緑)が大きいというあたりが特徴的でしょうか。

現役合格者割合

現役のみだと、都市大附属本郷が上昇してきます。ただそこまで大きな変動はなさそうで、このクラス帯だと現役志向は高くなるイメージです。逆に桐朋・巣鴨・学芸大附属あたりは少なめというのが特徴かなと思います。

【2024年の注目点】
本郷の2024年実績は、東大・京大は前年比減だったものの、医学部と一工、あと旧帝大で人数を大きく増やしていました。高校入試をやめて中入生のみになった最初の学年で、卒業生数も314→241人へと2割ほど少なくなった中での数字なので、上々の結果と言えるのではないかと思います。ここでは3年平均なので低く出ていますが、来年以降上昇してくる予感がします。

私立大学実績(2022〜2024年)

私立大学は重複合格が多いですが、卒業生数を100%としたときの割合を積み上げてグラフ化します。

各グラフに共通した注釈は以下の通りです。
*巣鴨の医学部データは進学情報誌さぴあより

現役・浪人合算の合格者割合

まず目立つのは暁星巣鴨の医学部(黄色)ですね。国公立でも触れましたが、明らかに医学部志向が強いと言えるのではないでしょうか。

あとはぱっと見でそこまで大きな違いは感じませんが、卒業生100%のラインに注目すると、暁星のみが早慶までで100%を超えるイメージです。100%に近いところだと攻玉社・本郷・広尾学園ですかね。

現役合格者割合

現役のみだと桐朋・巣鴨・学芸大附属がだいぶ人数を減らす感じで、現役志向は高くないと見えます。それ以外はそれほど大きな変動はなさそうですかね。

あと東京理科大と上智大の比較ではほとんどの男子校で理科大が多く、共学の2校は半々ということで、傾向が違って面白いなと思いますね。

全体的に合格者は多いので、早慶や理科大なども現実的な進学先として選択されているところが多いと考えられます。

文理割合

文系・理系の割合を、国公立難関大(東京一工医)への合格実績を使って算出します。具体的な集計内容についてはこちらの記事(進学校の文系理系割合比較)を参照してください。

オレンジ線・紫線はそれぞれの定員ベースの割合

定員に比べて文系が多いように見えますが、これは医学部の定員を全国の国公立大なので多めになっていることが要因なので、その部分は少し割り引いて見る必要があります。それを加味し、文系4割というのを分岐点として考えると、サレジオが文系寄りという傾向は言えるでしょう。

あとは医学部が多いのが巣鴨・暁星・広尾学園・学芸大附属あたり、医学部を含め理系が多いのが巣鴨・暁星・世田谷学園という感じでしょうか。

進学実績(2022〜2024年平均)

進学者数については数字を出している学校がないので省略します(サレジオは2024年に復活していましたが、単年なので来年以降に集計します)。

代わりに、早慶・上理・MARCHのどこが多いのか、それぞれの割合を出してみます。せっかくなんで、最上位校から全てを一覧にします。

*武蔵は進学実績
*早稲田は内部推薦分は抜き、外部受験組の人数だけで割合を出しています

武蔵と早稲田の2校のデータは特殊なので一旦置いておきますが、ただこの2校のところの行が分水嶺になって、一番多い割合が早慶なのかMARCHなのかが変わっている感じです。

私大は抑え受験も多く、例えば早慶志望なら抑えでMARCHを受けて複数合格を取っているようなパターンが多いと考えられます。よって傾向としては以下の2通りが考えられるでしょう。

  1. 難関国公立志望で早慶が抑え→早慶が多い

  2. 早慶志望でMARCHが抑え→MARCHが多い

もちろん国公立志望でMARCHを抑えるパターン等もあると思うので一概には言えませんが、ざっくり単純化するとこんな感じだと思います。

どの辺りを目指す子が多いのかを考えるひとつの指針として見ても良いかと思います。ちなみにこういう背景で考えると、MARCH合格者が多いから進学先もMARCHが多い、というわけではないだろうと考えられます。少なくともここで挙げている学校だと、現実的な進学先は早慶の方が多いのではと想像します。

海外大学実績(2020〜2024年)

最後に海外大学への合格者数です。名門大学(THE世界大学ランキング100位以内などの基準、具体的にはこちら)と、全海外大学の合格者数をグラフ化しています。

*芝(2020〜21年)都市大付属(2023年)世田谷学園(2020年)は進学情報誌さぴあより(大学名の情報はなく名門大集計には含まれない)

広尾学園はグラフに入りきらずレベチなんで、下のリンクから別途見てください。

そのほかだと、ポツポツと出ているか出ていないかというレベル感です。学芸大附属と逗子開成がやや多めな感じです。あと個人的な注目は、巣鴨が2年前くらいから海外進学を意識し始めた感があるんで、今後追いかけてみたいというあたりですかね。

こちらもどうぞ
海外大学合格ランキング 2024年版
海外大学合格ランキング 2023年版
海外大学合格ランキング 2022年版

3. 教育内容の比較

まず、国立大学の附属校である学芸大附属は先取りカリキュラムではありません。また中学は世田谷・竹早・小金井があり、その3校から試験を経て上位4割程度が附属高校進学する(それ以外は高校受験で外部へ出る)ということなので、中高一貫教育ではないというのが他校との大きな違いとなります。

それ以外の学校は中高一貫教育となっていて、大学受験に照準を合わせたいわゆる先取りをやっています。

教科学習のカリキュラムについては、それ以上深掘りして横比較できる情報がないので、授業以外のプログラムについて比較します。

教育環境

親的に関心がありそうな次の観点で比較します。

  1. グローバル教育

  2. 探求型学習(+キャリア教育)

  3. その他特徴的な教育/ICT環境

  4. 特進クラスの有無

  5. 希望者講習/大学受験サポート

グローバルや探究プログラムなどのほか、大学受験に向けた体制面も気になるポイントだと思うので、勉強面での希望者向け講習も追加しています。これだけで通塾の要不要は語れないと思いますが、学校側の姿勢(どの程度サポートしようと考えているか)はある程度測れると思います。

・各学校のWebサイト等から取得できる情報を中心にまとめたもので、全てをカバーできていない可能性があります
・成績下位向けの補習はどこもありそうで比較対象にならないので省略します
・各項目の詳細はそれぞれの学校Webサイトを参照してください

比較していくと、学校が力を入れているところが何となく見えてくると思います。これらは学校のカラーを現している部分も多いので、それぞれ深掘りしていくと選択の軸が出てくるかもしれません。

ここはプログラムが多彩で比較のしがいがあると思います。またひとつ違いが大きいと思うのは選抜クラスのありなしですかね。ざっくり言うと、伝統的な名門校は導入していないところが多く、進学実績を上げながら上昇してきたところにはあるといった分け方になるでしょうか。ただ、攻玉社や巣鴨のように中3〜高1だけとか、廃止した芝などもあり色々です。どっちが良いかは考え方や子供との相性にもよると思うので、大学受験サポートの姿勢も含めてあれこれ検討してみてはいかがでしょうか。

通塾率(鉄緑会・SEG)

学校の勉強以外で塾へ通う人がどのくらいいるのかというのは親的に気にするポイントですが、残念ながら通塾率を公開している学校はありません。鉄緑会とSEGが学校ごとの在籍者数を公開(鉄緑会は指定校のみ)しているので集計していますが、今回は鉄緑会の指定校がないので、SEGのみの数字を使って全生徒数に占める割合をひとつの参考情報にしてみます。

鉄緑会在籍者数/SEG在籍者数は各塾Webサイトより
全生徒数は進学情報誌さぴあより
(学芸大附属は高校のみの数字、全生徒数は学校Webサイトより)

神奈川の学校が一校も入っていないのは、SEGが新宿にあるためでしょう。また、中1〜高3まで全学年の数字という点にも注意が必要です。それらを踏まえ、あくまでひとつの切り口として見てください。

大学受験のために通塾が必要か、というのはQ&Aで必ず挙がる質問で、通塾している人も多いのが実態だと思います。ただ、そもそも塾ありきなのか、学校メインで補足的に塾を使う人が多いのか(さらに本当に塾なしか)という辺りは、ここの数字と、教育環境のところで見た学校のサポート姿勢あたりから、ある程度は想定できるんじゃないかなと思います。

暁星・芝は立地なものもありそうですが、ひとつの塾で10%を超えているのはなかなかじゃないかと思います。本郷・巣鴨・都市大付属あたりは、路線的に通いやすい割にそれほど多くない印象です。単にSEGが少ないだけなのか、全体的に少ないのかは学校に聞いてみたいところです。

4. まとめ

以上、Y60前後となる男子三番手グループでした。別に偏差値や合格実績でどっちが上とか下とか、学校の序列をつけようとかではなく、学校の向いている方向性や動向などが見えてくればと思ってまとめました。

多くの人が気にする大学合格実績はもちろん軸のひとつだと思いますが、そこも国公立・私立や理系・文系、海外大学など見る指標はいくつかあると思います。また海外研修や留学、体験型プログラムを重視する人もいるだろうし、通塾率や大学受験サポート、学校ブランドや偏差値が高いこと(友人の学力の高さや卒業後の人間関係)などもひとつの価値判断の基準になるでしょう。

ここで挙がっている学校はどこも色んな方向性・特徴があって色んな選択ができるというか、選びがいがあると思います。見逃していた新たな一面を発見するきっかけになったり、判断軸を考える材料が増えるなど、志望校選びの一助になることができれば幸いです。

最後に個人的な考えを少しだけ。都立高校と大学現役合格実績と比較してみると、(日比谷を除く)進学指導重点校と、ここで挙げたクラス帯の学校が大体似たようなイメージになっているようです。
進学指導重点校は高校入試ではかなりの上位層となるので、それを考えても大学受験における中高一貫教育のメリットは大きいのではと感じます。

【進学校の横比較シリーズ】


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